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2010.04.15

厚生労働省所管の病院を地域単位で経営統合せよ

  • 松山 幸弘
  • 研究主幹
    松山 幸弘
  • [研究分野]
    財政・社会保障

 わが国の医療提供体制が崩壊しつつある理由として、まず財源不足があげられる傾向にある。しか し、それ以上に問題なのがセーフティネット機能を担うべき国・公立病院の設置者の種類が多岐にわたり、それぞれがバラバラに経営されていることである。例 えば、厚生労働省所管の病院には、国立高度専門医療センターが6、国立病院が145、社会保険病院が52、労災病院が22ある。これらの病院はいずれも単 独施設の発想で運営されており、同じ地域医療圏に立地している場合でも患者情報を共有してシナジー効果を発揮することもなく、むしろ競合している。

 ちなみに2004年に独立行政法人国立病院機構に移行された145の国立病院の場合、 全国を6ブロックに分けて管理され、地域事情に合わせた経営を行うことが目標とされている。図表(1)のとおり、145病院全体の収支も医業収益が 2004年6,826億円⇒2008年7,409億円、最終利益が2004年▲16億円⇒2008年300億円と一見改善しているように見える。しかし、 これを個別病院毎に見ると実態はかなり厳しい。

図表(1) 国立145病院の収支合計(億円)
  2004 2005 2006 2007 2008
経常収益 7,461 7,665 7,677 7,989 8,078
  医業収益 6,826 7,004 7,000 7,312 7,409
運営費交付金 516 509 498 490 486
その他補助金 9 16 17 14 12
その他収入 110 135 161 173 172
経常費用 7,459 7,629 7,553 7,700 7,686
経常利益 2 36 124 289 392
特別損益 ▲ 18 ▲ 32 ▲ 34 ▲ 50 ▲ 92
最終利益 ▲ 16 3 90 239 300
(注)
四捨五入のため合計は必ずしも一致しない
(出所)
独立行政法人国立病院機構公表資料より筆者作成

図表(2)のとおり、2008年度は145病院のうち40病院が赤字であった。また、104病院が診療業務収益(収入総額から教育研修業務収益、臨床研究業務収益、その他経常収益を除いた金額)60億円以下の中小病院である。

図表(2) 国立病院の業績分布

 医療技術の進歩と共に患者が入院から外来、在宅ケアにシフトしている。したがって、医 療事業体が黒字経営の下成長し続けるためには入院以外の部門の医療サービスを拡充し患者囲い込みをする必要がある。患者囲い込みのためには、立地が近い同 一グループ病院と機能分担し提携先医療機関とも患者情報を共有することが不可欠である。しかし、国立病院の多くは、経営の自由度がなかったこともあり単独 施設経営の下で縮小均衡に陥っている。

 同じ事情を抱える社会保険病院と労災病院は、国立病院より更に深刻な状況にある。 2008年度において52の社会保険病院のうち23が赤字であった。労災病院に至っては多額の公費投入にもかかわらず連結ベースで赤字が続いている。しか しながら、医療崩壊を防止するためには、経営難にあるこれらの病院を閉鎖するのではなく、その経営資源も活用する工夫が求められる。具体的には、患者情報 共有により臨床部門の求心力が高まる規模の地域医療圏ごとに経営統合させるのである。このように厚生労働省所管の病院を地域単位で経営統合し民間的経営手 法を追求するモデルを示すことは、自治体病院等を含めた公立病院全体の改革の指針になると考えるしだいである。

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