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2009.11.26

日本の診療報酬は低すぎることはない

  • 松山 幸弘
  • 研究主幹
    松山 幸弘
  • [研究分野]
    財政・社会保障

近年わが国で地域医療崩壊が加速している元凶として、2001年4月に誕生した小泉政権によって進められた医療費抑制、診療報酬引き下げがヤリ玉にあげられている。しかし、それが必ずしも正しくないことを示すデータが相次いで明らかになった。

表1 日本の民間医療グループ
  施設数 財務データ(百万円)
病院 サテライト 収入 経常利益
(同利益率)
総資産 純資産
(同割合)
中央医科グループ 73 60 260,733 10,302
(4.0%)
263,681 123,994
(47%)
徳洲会グループ 55 57 246,161 6,761
(2.7%)
277,723 53,971
(19%)
(注)
データは2008年3月期
(出所)
日本医療企画発行の医療経営白書2009年度版より筆者作成



表2 病院職員平均年間給与の公立病院・民間病院比較
  公立病院
(1)
民間病院
(2)
(1)÷(2)
病院長 19,747 31,703 0.62
医師 14,965 15,504 0.97
歯科医師 13,122 11,118 1.18
薬剤師 6,729 4,762 1.41
看護職員 5,960 4,582 1.30
看護補助職員 3,814 2,664 1.43
医療技術員(放射線技師、検査技師、栄養士等) 6,296 4,316 1.46
事務職員 6,259 4,001 1.56
(注)
データは2008年度実績。金額単位は千円。
(出所)
第17回医療経済実態調査(2009年6月調査)より筆者作成

表1は、わが国を代表する2大民間病院グループのデータである。中央医科グループは東 京都と埼玉県を中心に事業展開する統合ヘルスケアネットワーク(Integrated Healthcare Network)である。そのIHNとしての歴史は米国、カナダ、オーストラリアなどのIHNよりも古く、異なる機能を持った様々な医療施設が垂直統合し た医療ビジネスモデルの先駆者と言える事業体である。注目すべきことは、多くの公立病院が赤字に苦しむ中で、4.0%の経常利益率を達成していることであ る。これは、地域住民が必要とする医療サービス全てを品揃えし患者囲い込みを行えば黒字経営が可能であることを示している。換言すれば、わが国の診療報酬 体系は全体として低すぎることはないのである。これは、中央医科グループのライバルである徳洲会グループも黒字経営であることからも確認できる。徳洲会グ ループの利益率が2.7%と中央医科グループより低い理由の一つは、徳洲会グループの場合施設立地が全国に分散しておりIHNのメリットを十分に発揮する 体制になっていないからである。

ではなぜわが国で地域医療崩壊が進んでいるのであろうか。それは、表2を見れば明らかである。す なわち、地域医療で中心的役割を果たすべき公立病院の給与体系が不適切であり、医師離れを招いているからである。公立病院職員の給与体系は医療と無関係な 職種の地方公務員にリンクしていることもあり、民間病院との比較で医師給与が低く、医師以外給与が異常に高い。本年9月に誕生した民主党政権は地域医療崩 壊を防ぐため医師給与引き上げ財源を投入する方針だが、その財源確保のためにも現在の給与体系の歪みを是正する必要があると思われる。

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