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2009.09.01

地域医療経営のガバナンスの国際比較(第2回)米国

Monthly IHEP 2009 8月号No.178

  • 松山 幸弘
  • 研究主幹
    松山 幸弘
  • [研究分野]
    財政・社会保障
はじめに
米国の地域医療経営のガバナンスの最大の特徴は、Integrated Healthcare Network(統合ヘルスケアネットワーク:略称IHN)と呼ばれる医療事業体が中心的役割を果たしている点にある。IHNとは、急性期病院を核に亜急性期、リハビリ、外来、日帰り手術、検査、在宅ケアといった異なる機能を担う医療事業体が垂直統合し、地域住民に対して必要な医療を継ぎ目なく効率的に提供する地域医療ネットワークのことである。2009年現在IHNは570あり、公立病院を核にしたIHNと民間非営利病院を核にしたIHNに大別される。そこで、今回は公立病院IHN、次回に民間非営利病院IHNを取り上げることにより米国の地域医療経営ガバナンスの最新事情を解説することとしたい。
公立病院(Public Hospital)とは州政府や郡・市などの自治体が設置者となっている病院のことであり、軍関係病院などの連邦立病院は含まれない。米国の公立病院は、無保険者や低所得者のための政策医療財源の確保問題や民間病院との厳しい競争に晒されて1980年頃から存亡の危機に陥った。その結果、多くの公立病院が閉鎖や民間病院チェーンに吸収合併されることを余儀なくされたが、同時に経営効率化や医療セーフティネットの新たな仕組みを構築することによりサバイバルに成功する公立病院も多く現れている。
次の2つの理由から、この米国の公立病院経営改革の中身を知ることは、わが国の地域医療再生を考える上で大いに役立つ。第一に、米国の公立病院の経営形態の選択肢には①自治体行政組織による直営、②公益法人(Public Benefit Corporation)、③公立病院区(Public Hospital District:別名Taxing District)、④公設民営(民間医療事業体に経営委任)の4つがあるが、このうち公益法人はわが国の地方公営企業法全部適用、公立病院区は地方独立行政法人に近く、公立病院の経営形態をめぐる論点は日米で類似点が多い。
第二に、米国では政策医療財源補助のルールを明確化した上で公立病院に経営効率向上を促しセーフティネット機能拡充を図る方法として、公立病院のIHN化が積極的に進められている。全米公立病院協会によれば、「医療技術進歩により患者が病院から病院外施設や在宅にシフトした結果病院は単独施設経営の発想では生き残れない、医師確保や設備投資のためには医業収入が一定規模以上必要、したがって民間非営利病院IHNの成功から学び公立病院もIHNを目指すのは必然」とのことであった。そこで、公立病院IHNの代表例を示せば次のとおりである。

地域医療経営のガバナンスの国際比較(第2回)米国PDF:39.0 KB

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