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2018.05.08

地球温暖化への適応をきっかけとした島嶼国との国際関係の強化について

NPO法人 国際環境経済研究所 HPに掲載

  • 杉山 大志
  • 上席研究員
    杉山 大志
  • [研究分野]
    資源・エネルギー、環境

 一方では温暖化問題があり、他方では領土問題がある等、島嶼国を巡る国際的な動きが喧しい。この中にあって日本は島嶼国とどのように関係していけば良いか。


1. 近年、海洋において、国際政治の現状を実力で変更しようとする活動がある。その一部は、地球温暖化への適応と全く同じ土木技術により実施され、かつ適応を名目として実施されつつある。人工島建設や、環礁での港湾開発は、その例である。

2. 諸海洋国が、平和や航行の自由の確保といった価値を共有し、以て経済発展を図り、自然災害に対して強靭なインフラを備え、政治的安定を確保することは、日本にとっても重要な国益である。特に島嶼国には、人口が少なく、所得水準が低く、政治的に不安定になりがちな国が多数あることに留意すべきである。

3. 日本が協力すべき具体的なアクションとしては、島嶼国における防災向上、インフラ整備、漁業振興、水産加工業振興、観光業振興、安定した漁業権収入確保、留学生の交換、地域経済研究等、多くのテーマがあり、上記1、2の国際政治の現状に照らして、一層の強化が望ましい。

4. 地球温暖化問題の悪影響がどの程度あるかは未だはっきりしない。また当面は、島嶼国の抱える政治・経済・社会の諸課題に比較すれば、その影響は大きくないと思われる。

5. だが、上記3のようなアクションは何れも、温暖化問題への適応としても重要なものばかりである。かつ、島嶼国の持続可能な開発に資するものであり、日本の国益に照らしてもノーリグレットであることから、積極的に投資すべきである。

6. 地球温暖化問題には、日本のリソースを動員するときに、国民の理解を得やすいという利点がある。地球温暖化問題をきっかけとして島嶼国の実態を知り友好を深め、ありうる地球温暖化への脆弱性を軽減しつつ、島嶼国が抱える諸課題の解決に協力することが望ましいと考える。


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出典:外務省

付記

1. 今般閣議決定された気候変動適応法においても国際協力が盛り込まれている。

  http://ieei.or.jp/2018/03/special201608024/

2. 島嶼国の経済・社会の現状および温暖化問題との関係については以下を参照されたい:

a. 拙稿、フィジーの政治・外交と地球温暖化

b. 拙稿、キリバスの地球温暖化への適応について

c. 拙稿、気候変動に対応したアジア・太平洋地域における外交政策のあり方は?

d. 気候変動に伴うアジア・太平洋地域における自然災害の分析と脆弱性への影響を踏まえた外交政策の分析・立案、外務省、2017年9月

  http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000287334.pdf

  http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_004998.html

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