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2018.04.05

【人類世の地球環境】料理のイノベーションで地球環境を守る

株式会社 オーム社 技術総合誌・OHM 2018年3月号に掲載

  • 杉山 大志
  • 上席研究員
    杉山 大志
  • [研究分野]
    資源・エネルギー、環境

 1人当たりで一番肉を食べる量が多いのはアルゼンチンである。筆者も若かりし頃の思い出がある。アルゼンチンでは子牛を開きで食べた。アジでなく子牛の開きである。刀のような包丁で胴体を割って、手足と胴体を開き、太い串を尻から頭にブスッと刺す。地面にそのまま突き立てて、1mぐらい離れたところに炭をこんもり盛り上げて燃やし、じわじわ遠火を通す。レストランでは目の前で豪快に切り分ける。ノーマルサイズがなんと1.2㎏、スモールサイズといっても0.9㎏である。ちなみに、これ以下はなかった。これだけ大きくても草原の香りがして、柔らかい赤身で美味く、あっさりしているので、若かった私はペロリと完食してしまった。日本も最近は赤身肉がブームになってきているが、その本家本元である。連日1.2㎏を食べ続けた結果、すっかり慣れて、最終日には「どうも今日の肉は小さいのではないか」と思ったほどだ。マルベックという、これまた名産のワイン1本丸ごとと一緒にたらふく食べて、2,000円くらいで済んだ。実に豊かな気分だった。今はお腹が苦しくなるから、とてもそんなに食べられないが・・・。

 あれから十数年。先日、スウェーデンで環境に関する国際会議があり出掛けた。毎日昼食が出るので、名物のトナカイでも食べられるかと楽しみにしていたが、なんと5日間連続でベジタリアン食だった。昨日のメインディッシュは、玉ねぎのステーキにハーブを添えたチェリーのソース。今日のメインディッシュは、茹でたニンジンとジャガイモにマスタードソース、といった調子である。それなりにおいしかったが、トナカイでも良かったんだが・・・。ブラジルの友人は、「今日もウサギ食。それみろ、耳が大きくなってきた。」とブツブツ言っていた。

 ベジタリアンは、欧米でますます流行っている。動機は、肉の食べ過ぎは健康に悪いということと、あとは動物愛護である。

 動物愛護というのは、まあ分からなくもない。ネットやビデオでも見ることができるが、動物が飼われて殺される風景というのはそれなりに可哀そうに思う気持ちは分かる。ただし、自分はあまりそう思わず、生き物というのは所詮そんなものだと思っている。野生の動物だって全然幸せではない。いつも食われそうになったり、寄生虫にたかられて具合が悪くなったり、飢え死にしたりする。自然のままを売りにしたサファリパークで、飢え死にした動物をそのままにしておいたら、死体だらけになり、客からの苦情で撤去するようにしたという。自然は厳しく恐ろしいものだ。動物を、虐待するのは論外として、普通に飼って食べるぐらいは構わないと思う。

 さて、今回はここからが本題。近頃大ヒットのコンビニのお惣菜で、鳥のささみや胸肉を調理してパウチしたものがある。かなり食べ出があって、その割に低カロリーなので人気がある。筆者も出張中に1人で晩御飯を食べる時など、かなりお世話になった。これまではカロリーなど気にせず暮らしてきたが、最近ブクブク太ってしまったので、にわか低カロリーマニアになったのだ。

 合成肉技術も進んできた。バイオテクノロジーを駆使し、たんぱく質をひたすら合成しつづける細胞を作り出せる。タンパク質を合成するのはこれまたタンパク質だが、その構造は分かっているし、遺伝子も分かっている。それを増やして栄養を供給してやれば、ひたすら肉を合成し続ける。まだコストが高くて実用的ではないが、すでにハンバーグの試食会も実施された。合成肉は低脂肪にできるから、健康に良く、動物も殺さなくて済む、というのが魅力だそうだ。

 これは実は温暖化対策にもなる。というのは、世界の温室効果ガス排出の3分の1は食料供給によって引き起こされていて、なかでも肉の供給がその多くを占めるからで、「肉税」を提案している環境運動家もいる。その一方では、ハイテクに頼らずとも、大豆等の植物素材でステーキを作るといった創作料理も次々に開発されている。

 ここで、はたと気がついた。日本料理、特に精進料理は、肉を使わずに肉より美味い味を出すため発展してきた。玉ねぎステーキもハイテクも創作料理も実はいらない。筆者は海外から環境関係のお客さんが来ると、精進料理でおもてなしをして好評を博している。日本は精進料理レストランを格付けして世界展開し、料理人を養成して世界へ指導に赴かせ、ホームページで無料レシピを広めるべし。

 動物愛護とベジタリアンと地球環境は、これから拡大するマーケット。チャンス到来である。

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