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2017.08.23

万博に見る地球温暖化問題の「温度差」-カザフスタン・アスタナ万博見学記-

  • 杉山 大志
  • 上席研究員
    杉山 大志
  • [研究分野]
    資源・エネルギー、環境

 2017年7月12日に講演に招かれて、カザフスタンの首都アスタナで開催されているアスタナ万博を見学する機会があった。 万博のテーマがエネルギーということで、欧州や日本はグリーンエネルギーの展示を競っていた中、新興の資源国であるカザフスタンとロシアのパビリオンは、際立った違いを見せていた。

(アスタナ万博に合わせて開催されたFuture Energy Forum "International Scientific and University Conference -Climate Change and Reduction of CO2 Emissions-"(ナザルバエフ大学主催)の講演報告はこちらからご覧いただけます。)


①カザフスタンパビリオン

 カザフスタンの本館パビリオンは8階建ての巨大でモダンな建物だった。他にはスマートグリッド館、原子力館(企業提供)があった。

 まずもって驚いたのは、地球温暖化問題への言及が全くなかった点である。日本とは全く考え方の枠組みが異なることを示して興味深かった。

 その代わりに、宇宙の創生から太陽、地球の誕生がまず説き起こされ、太陽が全てのエネルギーの源であることが強調されてから、化石燃料・太陽光・風力・バイオなどのエネルギーが太陽起源であるという順序でストーリーが作られていた。

 省エネについては「節約」ということについて一切言及が無かった点が新鮮だった。ひたすらハイテク・ソリューションのみが強調されていた。スマートグリッドの展示といっても、ハイテク全般の進歩と利便性の向上がひたすら強調されていた。そのついでに、再エネも省エネも内包される、というイメージで語られていた。

 化石燃料についても悪者扱いするのではなく、まず経済開発に有益だったことが強調されたうえで、「大気汚染があるので」(地球温暖化ではない!)役割を終えて、再エネに置き換わるのだ、というイメージで語られていた。

 原子力発電については言及が乏しく、企業がスポンサーをする原子力館で細々と言及されていたにすぎなかった。だが、核融合の展示がメイン館の1Fにあり、核融合炉の格納容器の中でロシア人男女がモダンダンスを踊るというパフォーマンスがあった。核融合炉の展示は大きく、また充実しており、特にこのダンスパフォーマンスは核融合に対するカザフスタンの意欲を感じさせるものだった。



②ロシアパビリオン

 他のパビリオンがグリーンエネルギーでマンネリ感のあるなか、地球温暖化はおろか環境問題にも全く言及せず、北極開発、石油ガス開発など資源開発と地理的な冒険を前面に出した異色のパビリオンであった。LNGプラットフォームや原子力砕氷船等の迫力満点の映像だった。カザフスタン人は今でも親ロシア的であるが、こういったソビエトスタイルの力強いものを好むようだ。原子力についてもクリーンエネルギーである、と言い切ったビデオが上映されていた点は新鮮だった。

 以上から分かることは、エネルギーと言うと、カザフスタンは経済開発とイノベーションが、ロシアは資源開発が真っ先に頭に浮かぶ事項であり、国策として重視している、ということだ。エネルギーというとまず環境問題を想起するのが最近の日本や欧州だが、全く発想の異なる世界があった。

 アスタナもモスクワも酷寒の地であり、地球温暖化といってもピンと来ないことも背景にあるのだろう。いずれにせよ、地球温暖化問題をめぐる国際間の「温度差」は大きいようだ。

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