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2013.08.22

中国の海洋への取り組みについて~第十二次五カ年計画以来の政策動向~

海洋政策研究財団「Ocean Newsletter No.313」掲載(2013年8月20日付)

  • 段 烽軍
  • 主任研究員
    段 烽軍
  • [研究分野]
    資源・エネルギー、環境

中国の国家戦略の変遷

中国の海洋への関心は、急速な経済成長と陸域資源制約の顕在化により、徐々に高まってきた。その傾向を表すように、国家戦略を定める共産党大会において、第16回(2002年)に「海洋開発の実施」、第17回(2007年)に「海洋経済の発展」、第18回(2012年)に「海洋強国の建設」などのステップ・バイ・ステップ宣言が打ち出された。また、国家戦略の変遷に基づいて、国の政策方針を制定する「国民経済と社会発展五カ年計画」においても海洋への重視が着実に強まってきた。特に、2011年3月採択された「第十二次五カ年計画(2011~2015年)」において、海洋が戦略分野として位置づけられ、海洋の章が初めて単独に盛り込まれた。これにより、中国の海洋への取り組みは、新しいステージに入った。本稿では、主な海洋政策動向を紹介する。


政策基盤

「第十二次五カ年計画」(以下、十二・五)に、「陸海統一を堅持して、海洋発展戦略を制定・実施し、海洋開発・コントロール・総合管理の能力を高める」との全体方針が確立され、「海洋産業構造の調整」と「海洋総合管理の強化」の二つの政策目標が制定された。これらを具体化するために、既存計画の集中的見直しと新規計画の策定により、新しい海洋政策基盤が急速に整備された。

まず、日本の海洋基本計画に相当する総合計画として、2008年版「国家海洋事業発展計画綱要」を見直した「国家海洋事業発展「十二・五」計画」が2013年4月に制定された。海洋強国の建設に向けて、国内外の情勢を踏まえて、従来の基本原則を調整した。管理・権益・持続性・サービス・イノベーションの五項目こそ変わっていないが、総合管理の範囲が海域から陸海域に広げられ、海洋事業が沿海部経済社会発展の根幹に取り入れられたことが読み取れる。また、単純な権益優先原則から脱して、グローバル視点に切り替え、より柔軟かつ開放的な海洋発展観を目指すことが明記された。

総合計画の他に、2002年に制定された「全国海洋機能区画」を見直した「全国海洋機能区画(2011~2020年)」(2012年3月)、2003年に制定された「全国海洋経済発展計画綱要」を見直して具体化した「全国海洋経済発展「十二・五」計画」(2012年9月)も制定され、海域利用と海洋産業の新しい枠組みが明確にされた。さらに「十二・五海洋科学と技術発展計画綱要」(見直し、2011年9月)、「国際海域資源調査と開発「十二・五」計画」(新規、2012年2月)、「陸海観測衛星発展計画(2011~2020年)」(新規、2012年3月)、「全国海島保護計画」(新規、2012年4月)などの部門に特化した計画および地方レベルの計画も制定され、総合計画と合わせて、今後5~10年間の中国海洋発展戦略となっている。


産業政策

新しい海洋産業政策指針となる「全国海洋経済発展「十二・五」計画」には、従来通りに産業規模目標を設けているが、明らかに単純な規模と速度追求から成長性重視へと政策方針が転換した。産業の空間配置の合理性を向上するために、海域の自然条件だけではなく、沿岸域の社会経済条件も考慮した上で、経済圏と重点産業について計画策定した。また、産業構造の健全性を高めるために、漁業、造船、石油ガス等の伝統産業のアップグレード、海洋エンジニアリング機器製造、製薬とバイオ、再生可能エネルギーなどの新産業の育成、海運、観光、文化などのサービス業の拡大、といったカテゴリー別の推進策を定めた。さらに、産業競争力を向上するために、研究開発と産業化プロセスの促進策を策定した。

このような総合政策に基づいて、産業あるいは海域に特化した政策も次々と制定された。例を挙げると、海域開発の基盤となる設備製造業を育成するために、2012年2月に「海洋エンジニアリング装備製造業中長期発展計画」を策定し、石油ガス探査・開発資機材や再生可能エネルギー利用資機材などの開発と製造を中心に推進させることとなった。また、人類共同財産である深海底資源の将来の産業化に向けて、2012年2月に「国際海域資源調査と開発「十二・五」計画」を制定し、戦略的成長空間の拡大、戦略的資源備蓄の増加、深海科学技術の推進、国際的地位の向上などの戦略目標を設定した。さらに、海洋産業の国際競争力を向上させるために、2012年5月に「全国海洋標準化「十二・五」発展計画」を策定した。


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総合管理

中国では、海域の総合管理を実施するために、2002年に「海域使用管理法」が施行された。しかしながら、管理権限は複数の部門に分散しているため、「五龍治海」や「九龍治海」などと言われるように総合管理がなかなか実現できていない。そのため、以前から海洋基本法の制定や海洋部の設立などの議論が行われてきたが、立法は遅れていて、海洋部の話も2008年に「海洋関連事項において、国家海洋局は総合協調機能を持つ」までに留まっていた。

海洋強国の建設との国家戦略の確立により、海洋の総合管理の必要性が増してきた。そのため、2013年3月に採択された「国務院機構改革・職能転換方案」により、国家海洋局の再編と国家海洋委員会の設置という行政改革が行われた。再編された国家海洋局が「中国海警局」の名義で海上における法律執行組織と機能を統合する改革は、権益確保の役割によって世界的に注目されているが、執行行政の一元化による総合管理の機能強化がより重要となる。また、管理行政より高いレベルで、海洋事業の統合計画と調整を強化するために設置された国家海洋委員会は、戦略的な役割が期待されている。

2012年が中国の海洋元年と言われるほど、中国の海洋への取り組みは、かつて無い勢いで展開されつつある。それを誘導・推進しているのは、明確な国家戦略の策定、急速な政策基盤の整備、必要な管理行政の改革等の一連の政策である。これら中国の動きは日本にとっても、大いに参考になろう。(了)


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