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2010.07.23

中国の低炭素技術開発とわが国技術の今後

  • 段 烽軍
  • 主任研究員
    段 烽軍
  • [研究分野]
    資源・エネルギー、環境

 去る5月7日〜9日、北京で「緑色経済(グリーンエコノミー)と気候変化」に関する国際会議 (International Cooperative Conference on Green Economy and Climate Change) が開催された。開催前の6日に温家宝首相は、その会議に参加する約20名の気候変化・環境大臣級の各国代表と面会し、絆を固めた。会議の主催者は2009 年に設立されたシンクタンク、中国国際経済交流中心(CCIEE: China Center for International Economic Exchange) である。この会議は、グリーンエコノミーを目指す中国国内の気候変化への対処のみならず、今後の国際社会に向けた中国の姿勢を十分にアピールするもので あった。見方を変えれば、国際交渉が行き詰まりを見せている地球温暖化問題のリーダーシップを誰が取るかをアピールするものであった。

 会議場のブースには華能集団(中国最大の発電会社)による低炭素社会に向けた発電技術の模型が展示されており、それは高温ガス化炉のシステム、CCS(CO2回収・貯留)付IGCC(石炭ガス化複合発電)システム、アミン吸収液による石炭燃焼排ガスからのCO2回収装置、資源循環型微粉炭火力発電所であり、いずれも世にいう先端技術である。

 IGCCについては、250MW級の華能天津IGCC発電所が2009年に着工された。これは次のフェーズではスケールアップとCO2回 収貯留に進むもので、アジア開発銀行の支援によるものである。また、関連する動きとしては、昨年、上海で「IGCCポリジェネレーション(発電、水素、化 学品及び燃料)」会議が開催され、そこで15以上のプロジェクトの紹介が行われている。高温ガス炉は10MW級の実証炉(HTR-10)が2000年に建 設完了し、2003年に電力網へ連結され72時間連続運転を行った。2013年完成を目指してさらにスケールアップした実証発電プラントが準備中である。 有機アルカリ溶液であるモノエタノールアミン吸収液によるCO2回収装置は3000 トンCO2/年規模の実証試験が華能北京発電所(コジェネ)で実施され、将来CO2回収規模10万トン/年の商用機を設置する計画がある。微粉炭火力については、100万kW超々臨界圧ボイラは国産化されている。中国の超々臨界圧ボイラは2007年では10基を、超臨界圧ボイラは100基設置されており、導入のスピードは速い。

 2005年には、100MWの太陽光発電所がチベットに建設された。これは電力網に連 携した最初のものであり、さらなる拡大が予定されている。今後、中国での太陽光発電の設置容量は2020年には20,000MWになると期待されている。 風力発電においては、2009年の設置容量は25,000MWであり、世界最大である。2020年には120,000〜150,000MWの大規模の容量 が期待されており、自国技術として1〜3MWクラスの風力発電機はすでに商用化されている。

 こうした中国のエネルギー生産技術の開発動向をどう見るか? 技術開発は複雑なプロセ スである。この会議場のブースに展示されたいくつかの技術が中国のエネルギー生産技術の現状であるというつもりはない。しかし、年約10%の経済成長率が 技術開発・導入・普及におよぼす効果は計りしれないことが安易に予測できる。中国は技術的スターティングポイントとして、世界水準の高いところから出発で きる。そして5ヶ年計画の様な国策として軌道が引かれ、強いリーダーシップの下で人・モノ・金が集中的に投下される。会議の講演の中で、中国の火力発電プ ラントの効率はすでに米国を抜いたとの発言もあった。単純に考えれば、米国のボイラ技術は中国市場での地位を失ったといえないこともない。日本に目を向け てみると、わが国は優れた技術を持っていることを自負し、また、これを世界も認めている。しかし、中国がアジア諸国とも、さらに、南半球の各国とも積極的 外交を展開している現状を間の当たりにすると、わが国の技術も出番がなくなるのではないかという不安を払拭できない。また、中国における日本企業のビジネ ス展開は一筋縄ではいかないとの話は多い。このバリアを超えて中国とのエネルギー生産技術のビジネスパートナシップが構築されることを望む。

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