外交・安保カレンダー(10月22-28日)

先週末は久し振りに中東三昧だった。筆者が所属するキヤノングローバル戦略研究所が年三回実施する政策シミュレーションで湾岸地域を取り上げたからだ。詳しくは今週木曜日の産経新聞コラムに書いたので、ご関心の向きは一読願いたい。テーマはズバリ、「米国とイランは軍事衝突に向かうのか」だ。

今回も40人近い現役公務員、専門家、学者、ビジネスパーソン、ジャーナリストが集まり、イラン、サウジアラビア、イスラエル、日米中露の各政府、報道関係者を一昼夜にわたり実にリアルに演じてくれた。改めて週末を犠牲にしてくれた彼ら参加者の貴重な知的貢献に深甚なる謝意を表したい。

特に、米国大統領とイラン最高指導者を演じてくれた二人には感謝しても、しきれない。米大統領は金髪のカツラでトランプ氏になり切っていた。イラン最高指導者に至っては、どこから手に入れたのか、シーア派イスラム法学者のターバンと衣をまとい、見事にハーメネイ師を演じてくれた。実に有り難い。

シナリオは盛り沢山で、イランの秘密ウラン濃縮疑惑露見、イエメンでのサウジ軍機撃墜、イランのイラク領内弾道ミサイル配備、サウジ東部製油所の反政府勢力による占拠、湾岸某王国でのイスラム革命発生、サウジ王宮府へのドローン攻撃に続き、最後はイランと米国・イスラエルが戦闘を始めた。

おいおい、そんなことあり得ないと訝る向きもあろう。確かに米国・イスラエルとイランは相互抑止が効いており、簡単には開戦しない。だからこそ、今回はイラン革命防衛隊の前線の一部部隊が暴走しイスラエルと米国を軍事的に挑発するという状況を意図的に作った。

今回の政策シミュレーションで得られた教訓は少なくない。米サウジ関係、ホルムズ海峡封鎖、イスラエルの思惑、中東における中露の意図などにつき大いに考えさせられた。最も残念なのは今回も日本が「蚊帳の外」にあったことだ。それが嫌なら、関係法令、更には憲法の改正を求めるべきなのだろう。

〇欧州・ロシア
28日に欧州各国は冬時間に戻るが、同日にはジョージア大統領選挙とドイツ・ヘッセン州議会選挙がある。14日のバイエルン州議会選挙では同州を地盤とするキリスト教社会同盟(CSU)が歴史的大敗を喫したが、ヘッセン州では前回の選挙でメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)が50%近く得票していた。ここでもCDUが票を減らせば、メルケル政権にとっては更なる危険信号となるかもしれない。

〇中東・アフリカ
サウジジャーナリスト失踪事件について先週漸くサウジ政府が同氏の死亡を認めつつ、関係者の処罰などを発表したが、これはどう見ても「トカゲの尻尾切り」ではないか。さすがのトランプ氏も不満を隠していない。サウジ皇太子はこんなことで逆境を克服できると本気で思っているのだろうか。あまりに危機感が足りない気がする。

〇東アジア・大洋州
今週の注目はやはり26日からの安倍首相の訪中だろう。米中関係の悪化に鑑みれば、中国側の秋波は当然だ。しかし、これで日中関係が1980年代のような蜜月に戻ることはない。中国の動きはあくまで戦術的なものだからだ。勿論、日本は日中関係の改善に大いに取り組むべきだが、あまり期待値を高めることは禁物だろう。

〇南北アメリカ
28日にブラジル大統領選挙の決選投票がある。極右ポピュリストの元軍人ボルソナロ候補が優勢だという。対抗馬の左派で元サンパウロ市長の候補は伸び悩んでいるとなれば、ブラジルでもナショナリズムの嵐が吹くということか。中南米は元々カトリックの牙城だが、最近はエバンジェリカル(福音派)が台頭しているという。
恐ろしいことだが、これから米国だけでなく、中南米でもこうした傾向が続くのかもしれない。選挙といえば、米国の中間選挙も2週間後に迫り、一部の州では既に期日前投票が始まっている。民主党関係者は中間選挙をトランプ氏の「信任投票」とみなし、事前投票率の高さから民主党候補の優勢を占ているが、そう上手くいくか。
トランプ氏の選挙戦術は従来の常識を覆す革命的な要素がある。正直なところ、今流れている事前予想はどれも当てにならないのではないか。昔ならホワイトハウス記者といえばエリートだったが、今はトランプ氏のツイッター洪水で休む暇もなく、疲弊し切っているそうだ。可哀そうに!

〇インド亜大陸
28-29日にインドのモディ首相が来日する以外に特記事項なし、今週はこのくらいにしておこう。

8-11月2日 自由権規約人権委員会 第124回会合(ジュネーブ)
16-23日 対日理解促進交流プログラム・ラオス高校生及び大学生が訪日
16-24日 2018年度中国高校生訪日団が訪日(日中植林・植樹国際連帯事業)
18-24日 対日理解促進交流プログラム・韓国の高校生らが訪日
18-27日 第24回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉会合の開催
21-27日 対日理解促進交流プログラム・日本の高校生らが韓国を訪問
22日 国連システム事務局長調整委員会(CEB)(ニューヨーク)
22日 日EUハイレベル産業・貿易・経済対話の開催(東京)
22日か23日 ロシア1-8月貿易統計発表
22-25日 欧州議会本会議(ストラスブール)
23日か24日 ロシア9月雇用統計発表
23-30日 対日理解促進交流プログラム・ミャンマーの大学生及び社会人が訪日
24日 ベージュブック(FRB)
24日 メキシコ9月雇用統計発表
24日 イタリア・コンテ首相がロシアを訪問
24-28日 万国郵便連合(UPU)管理理事会(ベルン)
24-28日 Trade Expo Indonesia 2018
25日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
25日 メキシコ8月小売・卸売販売指数発表
25日 黒海経済協力機構運輸相会議(アゼルバイジャン・バクー)
25-27日 フード・ジャパン2018(シンガポール)
25-11月8日 国際労働機関(ILO)理事会とその委員会 第334回会合 (ジュネーブ)
26日 米国第3四半期GDP(速報値)発表
26日 メキシコ9月貿易統計発表
26日 ロシア中央銀行理事会
26日 アイルランド大統領選及び国民投票
26日 ペガサスXL(電離層探査ICON)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
27日 ガボン国民議会議員選挙決選投票
27日 朱雀一号(未来号衛星)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
28日 ジョージア大統領選挙
28日 ブラジル大統領選挙(決選投票)
28日 ドイツ・ヘッセン州議会選挙
28日 欧州各国が冬時間入り
28-29日 インド・モディ首相の訪日

【来週の予定】
29日 米・9月個人消費支出(PCE)物価指数(商務省)
29日 長征2C(中法海洋衛星)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
29日 H-IIAロケット40号機(いぶき2号など)打ち上げ(種子島宇宙センター)
29-30日 EU運輸・観光担当相非公式会合(オーストリア・グラーツ)
30日 ブラジル9月全国家計サンプル調査発表
30日 EU7-9月GDP発表
30-31日 ブラジル中銀、Copom
31日 EU9月失業率発表
1日 英中銀が金融政策発表
1日 ブラジル9月鉱工業生産指数発表
2日 米国9月貿易統計、10月雇用統計発表
4日 ニューカレドニア・フランスからの独立を問う住民投票

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

« 外交・安保カレンダー(10月15-21日) | トップページ | 外交・安保カレンダー(10月29-11月4日) »

« 外交・安保カレンダー(10月15-21日) | トップページ | 外交・安保カレンダー(10月29-11月4日) »

アーカイブ