外交・安保カレンダー(9月24-30日)

先週は3泊5日という駆け足の強行軍でワシントン、シアトル、サンフランシスコを回ってきた。帰国後は25日に年に一度のCIGS講演会が入っている。昨晩はほぼ徹夜でスライドを作成していたのだが、飼い猫が体調を崩す等筆者の仕事環境も悪化したため、まだ完成していない。本番まで数時間しかないが、どうなることやら。

訪米中にトランプ政権暴露本を購入し、ざっと目を通してみたが、現在の米外交政策混乱の根深さには今更ながら驚かされる。筆者の関心は中東と中国なので、今回はワシントンポスト紙ウッドワード記者の最新刊「FEAR」に基づき、トランプ政権の中東・中国政策の現状を概観する。

米の対中、対中東政策は意外に一貫している。中国は本年7月に北京でアラブ諸国代表との会合を主催し総額200億ドルの融資や1億ドルの資金援助を発表したり、国連安保理でパレスチナ問題解決に関する提案を行うなど、最近中東における関与と存在感を強めているが、その対中東政策には一定の限界があるようだ。

一方、トランプ政権発足直後から中東政策を一貫して仕切ったのはトランプの娘婿ジャレッドだった。オバマ政権時代の「対イスラエル関係見直しと対イラン関係重視」は180度変更され、今や基調は「対イラン強硬政策への先祖返りとイスラエル・サウジアラビア枢軸への傾斜」となった。対中強硬論については今更言うまでもないだろう。

正統派ユダヤ教のクシュナー家はイスラエルのネタニヤフ首相と家族ぐるみの友人であり、ジャレッドは早い段階から当時サウジの副皇太子だったムハンマド・ビン・サルマン(MbS)とも直接連絡を取っていた。ジャレッドは当初から「最大の懸念はイランの影響力拡大であり、米国が中東で関与を続けるためにはサウジとイスラエルを支援する必要がある」と主張していた。当時のティラソン国務長官やマティス国防長官らが疑問を呈する中、大統領の娘婿は政権内で新大統領の初外遊先をサウジとすべく暗躍した。マクマスター国家安全保障担当大統領補佐官は「誰の仕業だ」と激怒したそうだ。

暴露本によれば、クシュナー夫妻を最も目の敵にしたのはバノン首席戦略官だった。クシュナーはバノン等に不利な情報をメディアに流す常習犯だったし、イヴァンカはホワイトハウスでの彼女の振る舞いに苦言を呈したバノンに、「私はスタッフなどではなく『大統領令嬢(First Daughter)』よ」と言い放ったそうだ。

暴露本によれば、中東政策に関し最も重要な役割を果たしてきたのはマティス国防長官だ。中東での経験の長い同長官は中国よりもイランに強い懸念を有している。同長官は、シリアのアサド大統領暗殺を求めた大統領指示などの無理難題を見事に黙殺しつつ、大統領には強く反対も意見もせず、忍耐強く仕事をしている。

逆に言えば、万一、マティス長官が辞任に追い込まれれば、これまで大統領の下でジャレッドが主導してきたオバマ中東政策の「意趣返し」的大転換に歯止めが効かなくなる恐れがあるかもしれない。今週は講演会があるのでこのくらいにしておこう。

10-28日 国連人権理事会 第39回会合(ジュネーブ)
17-24日 2018年度中国大学生訪日団第1団が訪日(日中植林・植樹国際連帯事業)
17-10月5日 ICAO 第215回Committee Phase(モントリオール)
18日-10月1日 第73回国連総会(ニューヨーク)
19-25日 ポロリカシュヴィリ世界観光機関事務局長が訪日
20-27日 対日理解促進交流・韓国青年訪日団(第3団)が訪日
20-27日 IAA国際商用車ショー(メディア公開は19日)(ドイツ・ハノーバー)
21-30日 河野外務大臣のカナダ及び米国を訪問
22-25日 フランシス法王がリトアニア、ラトビア、エストニアを訪問
23-25日 EU農業担当相非公式会合(オーストリア・シュロスホーフ)
23-26日 英国労働党大会(リバプール)
24日 IAEA 理事会(ウィーン)
24日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
24日 米韓首脳会談(ニューヨーク)
24日 日米貿易協議第2回会合(ニューヨーク)
24日 米国の対中関税第3弾が発動、中国は同時報復へ
24日 中秋節(中国休日)
25日 G4外相会合に河野外務大臣が出席(ニューヨーク)
25日 安部首相が国連総会一般討論演説(ニューヨーク)
25日 日中民間ビジネスの第三国展開推進に関する委員会が開催(北京)
25日か26日 ロシア8月雇用統計発表
25-26日 米国FOMC
25-28日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)諮問グループ 第51回会合(ウィーン)
25-10月1日 国連総会一般討論演説(ニューヨーク)
26日 国連で「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」ハイレベル会合(ニューヨーク)
26日 国連で結核絶滅のためのハイレベル会合(ニューヨーク)
26日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
26日 メキシコ8月雇用統計発表
26日 日米首脳会談
26日 日・太平洋同盟外相会合(ニューヨーク)
26日 アリアン5(通信衛星Horizons 3eなど)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
26-30日 ハラルフェスト・マレーシア(Halal Fiesta)
27日 ECB一般理事会(フランクフルト)
27日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
27日 米国第2四半期GDP(確定値)発表
27日 メキシコ8月貿易統計発表
27日 包括的核実験禁止条約(CTBT)フレンズ外相会合(ニューヨーク)
27-28日 EU競争担当相理事会(ブリュッセル)
28日 米8月個人消費支出(PCE)物価指数(商務省)
28日 ブラジル8月全国家計サンプル調査発
28日 ジョージタウン大学・外交政策大学院で河野外務大臣が講演
29日 快舟一号A Y8(微厘空間一号系統S1試験衛星)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
29日-10月7日 Vientiane International Motor EXPO
30日 マケドニアで国名変更の是非を問う国民選挙
30日 エスワティニ(旧名スワジランド)下院選挙
30日-10月3日 英国保守党大会(バーミンガム)

【来週の予定】
1日 ユーログループ
1-3日 グテーレス国連事務総長がインドを訪問
1-4日 欧州議会本会議
1-7日 国慶節(中国)
2日 ブラジル8月鉱工業生産指数発表
2日か3日 ロシア第2四半期需要項目別GDP発表
2-4日 WTOパブリックフォーラム(ジュネーブ)
4日 G20保健相会合(マルデルプラタ)
4-7日 第18回ベトナム国際プラスチック、ゴム加工機械展 「VIETNAMPLAS 2018」
5日 米国8月貿易統計、9月雇用統計発表
5日 ブラジル9月IPCA発表
5-6日 チェコ上院3分の1議席改選(第1次)
5日か8日 ロシア9月CPI発表
6日 ラトビア議会総選挙
6日 ガボン国会議員選挙
7日 ブラジル大統領選挙
7日 ペルー州知事及び市長選挙
7日 ボスニア・ヘルツェゴビナ議会総選挙

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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