外交・安保カレンダー(8月13-19日)

今年も8月15日が近づいてきた。日本では終戦記念日だが、実態は敗戦73周年である。しかも、正式の戦争状態終結、すなわち休戦・停戦は1945年9月2日に署名された「降伏文書」によって最終的に確定したはずだ。どうやら今も日本では公式な法的関係確定より、ポツダム宣言受諾が発表された玉音放送の方が重要らしい。

それでは昨年ここで何を書いたか調べてみたら、昨年8月12日に起きた事件、すなわちシャーロッツビルで白人至上主義団体と反対派が衝突し、1人が死亡した事件を取り上げている。 当時トランプ氏は最後まで白人至上主義の秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)やネオナチを名指しで批判せず、厳しく批判された経緯がある。

だからだろうか。今年はホワイトハウス前で白人至上主義団体が15人でミニ集会を開催した。対する反対派のデモには数千人が集まったという。白人至上主義者の指導者は「白人は偉大だ。白人は米国で少数派になってきており、大きな差別に直面している。白人にも立ち上がる権利がある」と述べたそうな。何と身勝手なことか!

今週もう一つ筆者が関心を持つのは最近のサウジアラビアとカナダの大喧嘩だ。8月2日、カナダ外務省はサウジで女性・人権活動家の逮捕が続いていることに「深い懸念」を表明し、「直ちに釈放するよう求める」とツイートした。これに対し、サウジアラビア外務省は5日、カナダが「公然と内政に干渉した」と批判し大騒ぎになったのだ。

サウジは駐サウジ・カナダ大使の追放と駐カナダ・サウジ大使の召還を発表するとともに、「直ちに釈放せよ」というカナダの物言いは受け入れ難いと激怒、新規の貿易・投資を凍結し、更なる対抗措置を取る権利を留保すると述べている。それにしてもバカバカしい。カナダも、サウジも、更に米国も、いい加減にしろと言いたいぐらいだ。

要するに皆無責任に勝手なことを言っているだけ。彼らもネオナチも「同じ穴のムジナ」ということか。ちなみに「同じ穴のムジナ」なる表現は英語で「birds of a feather」という。この表現が否定的な意味で使われたのは1876年に英国で出版された政治小説が最初らしい。今週のJapan Timesにこのテーマでコラムを書いた。ご参考まで

話を終戦記念日に戻そう。毎年8月15日になると、いつも戦争のことを考える。松尾芭蕉が奥の細道の終点で詠んだとされる句が、「夏草や兵どもが夢の跡」だ。恐らく平泉あたりで、三代の栄華を誇った藤原が蝦夷の攻撃を受けたことを念頭に、戦いの儚さを込めたのだろう。

この句の意味については、ネット上で、「優れた忠義な家来たちが高館にこもり功名を競ったが、それも一時の夢と消え、今では草が生い茂るばかりだ」などと解説されている。確かに、そうだ。争いや戦いはどんなに大義名分があろうと、時間が経てば「一時の夢」と消えるのである。

「日米戦争」然り、また「米ソ冷戦」も然りだ。されば現在進行形の対立も同様なのだろう。この点で特に気になっているのが最近のトルコ・リラの暴落である。トルコではクーデター騒ぎで米国人牧師が拘束されており、トランプ政権は「釈放しなければ経済制裁」などという荒っぽいやり方でトルコに圧力をかけている。

それにしても、エルドアン大統領は頑張っている。天下のトランプを敵に回し、圧力に屈しない指導者を演じているからだ。しかし、トルコ経済は彼が思うほど強靭ではなかった。トルコは曲がりなりにもNATO、OECD加盟国であり、基本的には自由主義体制なのだが、下手に自由な国である分、強権政治をやれば、その反動も大きい。

エルドアン大統領は国民にリラ防衛の協力を求めたが、トルコ国民はその訴えを事実上無視。リラは減価が続いている。今回の事件は、ロシアであれ、イランであれ、更には中国ですら、米国と本気で対決しようものなら、それ相応の犠牲を払う必要があることを示している。所詮、これも「兵どもの夢の跡」なのだが・・・。

世界各地とも事実上お休みなのだろうか。特記事項は少ない。今週はこのくらいにしておこう。

7月30日-9月14日 ジュネーブ軍縮会議 第3部(ジュネーブ)
12-19日 河野外務大臣がエクアドル、ペルー、コロンビア及びメキシコを訪問
13-14日 露・ラブロフ外相がトルコを訪問
14日 中国7月固定資産投資、社会小売品販売総額発表
14日 米国連邦議会予備選挙(コネチカット、ミネソタ、バーモント、ウィスコンシン)
14日 香港民族党代表が講演(香港)
14-17日 中国の楊政治局員がround of China-Russia strategic security consultationに参加(ロシア)
15日 米国7月小売売上高統計発表
15日 パラグアイ大統領就任式に谷特派大使を派遣
15日 韓国・光復節(北朝鮮・解放記念日)
15日か16日 ロシア1-7月鉱工業生産指数発表
16日 マレーシア裁判所が北朝鮮の金正男氏殺害の実行犯に公判続行の是非判断
16-22日 北方四島での共同経済活動に関する調査団の現地調査
17日 EU7月CPI発表
17日 ファルコン9(Telstar18 VANTAGE)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
19日 シンガポール首相、独立記念演説(ナショナルデー・ラリー)

【来週の予定】
20-24日 APEC鉱業相会合(パプアニューギニア・ポートモレスビー)
20-24日 武器貿易条約第4回締約国会議(CSP4)
20-26日 韓国と北朝鮮の離散家族再会行事(北朝鮮南東部・金剛山)
21日 米国連邦議会予備選挙(アラスカ、ワイオミング)
22日 メキシコ6月小売・卸売販売指数発表
22日 ヴェガ(ADM Aelous)の打ち上げ(仏領ギアナ基地)
23日か24日 ロシア上半期貿易統計発表
23-24日 G20デジタル経済相会合(アルゼンチン・サルタ)
23-25日 米ジャクソンホール会合(ワイオミング州ジャクソンホール)
24日か27日 ロシア7月雇用統計発表
24日 メキシコ第2四半期GDP発表
24日 ソウル高裁が賄賂事件で朴槿恵韓国前大統領に判決
26日 香川県知事選
26日-9月2日 第50回ASEAN経済相会合、第6回RCEP閣僚会合

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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