外交・安保カレンダー(6月11-17日)

今週の焦点は何といってもシンガポールで行われる米朝首脳会談の行方だろう。これほど紆余曲折のあった首脳会談も珍しいと思うが、とにかく開催は明日に迫っている。一時はこの原稿を首脳会談終了後に書くことも考えたが、それでは本コラムの趣旨に反する。考え直して、やはり通常通り、月曜日中に書き上げることにした。

明日起きることを大胆にも予測するとは筆者も良い度胸だが・・・。仕方がない、やってみよう。結論から言えば、6月12日の米朝首脳会談は第一ラウンドで、結果は10対6で金正恩委員長の粘り勝ちとなる可能性が高い。北朝鮮の非核化については玉虫色のまま、戦争状態終結などに関する象徴的な合意だけに終わるかもしれない。

かなり保守的な見方だが、首脳会談が始まる前までに流れた情報が正しいとすれば、ある程度の予測は可能だ。今後の米朝交渉が最終的に成功するか否かは「お手並み拝見」である。衝動的に考え行動するトランプ氏だから何が起きてもおかしくないとの意見もあるが、トランプ氏はそれほど知的レベルが低いとは思わない。

彼の悪癖は知的レベルとは全く別の次元の問題である。例えば、ご本人は交渉の達人を自負しているようだが、トランプ氏は「交渉」というより「興行」、すなわち「見世物」の達人ではないのか。これまで上手く行っているように見えるのは、ビギナーズ・ラック(初心者の幸運)に過ぎないのではないか。

外交交渉の観点から見ると、トランプ氏のやり方には疑問が少なくない。例えば、トランプ氏はこんな交渉上の初歩的ミスを犯しているように見える。
①最後の切り札を最初に切る(相手が望むものを与える前に譲歩させるのが常道だ)
②直感に頼り、衝動的に決断する(普通首脳会談前には数カ月の準備期間を置く)
③交渉内容を喋り過ぎる(外交には適度の沈黙と秘密が必要だ)
④経済利益が戦略利益を代替すると考える(豊かさのための核兵器放棄はない)
⑤自分は特別な能力を持つと過信する(独り善がりは禁物だ)
⑥最初から通訳が同席するだけの一対一会談を行う(誰が記録を取るのか)

このようなスタイルで交渉する外国政府の高官がこれまで全くいなかったとは言わない。また、筆者が関与した交渉が全て成功した訳でもないので、断定的なことは言いたくない。しかし、筆者の経験から言えることは、少なくとも外交交渉の世界で、この種の交渉スタイルによって成功した交渉者は殆どいないということだ。

更に、トランプ政権の外交安保チームは本当に機能しているのだろうか。ポンペイオ国務長官、ボルトン国家安全保障担当補佐官、マティス国防長官の間には温度差があると報じられるが、果たして本当にそうか。首脳会談に最も前向きだったのは、実はトランプ氏自身ではないのか。筆者の分析が間違っていることを祈るばかりだ。

〇中東・アフリカ
14日前後にラマダン月が終わる。これから中東はお祭りである。実質的な動きはないだろう。トルコの総選挙は24日だが、既に在外トルコ人有権者の投票は始まっているようだ。

〇欧州・ロシア
12-13日に英国議会下院がEU離脱法案を審議・採決する。14日にはサッカーのワールドカップ・ロシア大会が始まる。そこでロシア大統領とサウジ皇太子の会談が行われるらしい。サッカーの政治利用とは思わないが、プーチンもなかなかやるわい。

〇東アジア・大洋州
米朝首脳会談以外の目ぼしい動きとしては、恒例の日米印三カ国海軍による合同演習が今週開催される。11日には中国人理科系留学生に対するヴィザ(STEM、科学・技術・エンジニアリング・数学)の要件が変更される。韓国では米朝首脳会談の翌日13日に絶妙のタイミングで地方選挙がある。

〇南北アメリカ
12日には米連邦議会議員選挙の予備選挙がメーン、ネバダ、ノースダコタ、サウスカロライナ、バージニア各州で行われる。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

4-12日 国連貿易開発会議(UNCTAD)貿易開発理事会 第65回会合(ジュネーブ)
4-8月24日 「国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト」第5回訓練開始(ナイロビ)
5-14日 対日理解促進交流プログラム・日韓学術文化交流事業訪日団として韓国の小中高の若手教員らが来日
11日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ルクセンブルク)
11日 メキシコ4月鉱工業生産指数発表
11日 ノルマンディ4カ国(ドイツ・フランス・ウクライナ・ロシア)外相協議(ベルリン)
11日 H-IIAロケット39号機(情報収集衛星レーダ6号機)打ち上げ(種子島宇宙センター)
11-13日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)作業部会A及び非公式・専門家委員会 第53回会合(ウィーン)
11-14日 欧州議会本会議(ストラスブール)
11-14日 UNICEF執行理事会 年次会合(ニューヨーク)
11-29日 国際民間航空機関(ICAO)Council Phase 第214回会合(モントリオール)
12日 米朝首脳会談(シンガポール)
12日 米国5月消費者物価指数(CPI)発表
12日 米国連邦議会予備選挙(メーン、ネバダ、ノースダコタ、サウスカロライナ、バージニア)
11-12日 マハティール・マレーシア首相が来日(12日に国会で講演)
12-13日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
12-14日 国連経済社会理事会(ECOSOC)実質会期(ニューヨーク)
12-14日 米ゲーム見本市「E3」開幕(ロサンゼルス)
13日 韓国第7回全国同時地方選挙
13日 ブラジル4月月間小売り調査発表
13-16日 ニュージーランド酪農業祭「Fieldays」
14日 南北将官級軍事当局者会談(板門店)
14日 中国5月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 米国5月小売売上高統計発表
14日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(ラトビア・リガ)
14日 ペガサスXL(ICON)打ち上げ(マーシャル諸島クェゼリン)
14日 クック諸島議会選挙
15日 G20エネルギー移行担当相会合(アルゼンチン・バリローチェ)
15日 EU5月CPI発表
15日 ロシア中央銀行理事会
17日 コロンビア大統領選(決選投票)
17日 ソユーズ2.1b(ロシア測位衛星Glonass 756)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)

【来週の予定】
18日か19日 ロシア第1四半期経済活動別GDP速報値発表、ロシア1~5月鉱工業生産指数発表
18日 中国端午節
18-19日 EU農水相理事会(ルクセンブルク)
18-21日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
18-22日 国連世界食糧計画(WFP)執行理事会 年次会合(ローマ)
18-7月6日 国連人権理事会 第38回会合(ジュネーブ)
19-20日 ブラジル中央銀行、Copom
19-20日 UNウィメン執行理事会 年次会合(ニューヨーク)
19-21日 国連経済社会理事会(ECOSOC)実質会期(ニューヨーク)
20日 G20鉄鋼の過剰設備に関するグローバルフォーラム(フランス・パリ)
20日 長征3B(航法測位衛星第三世代北斗 2機)打ち上げ(四川省・西昌衛星発射センター)
21日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務省会合)(ルクセンブルク)
21日 黒海経済協力機構外相会合(アルメニア・エレバン)
21か22日 ロシア1-4月貿易統計発表
21-22日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ルクセンブルク)
22日 EU経済・財務省(ECOFIN)理事会(ルクセンブルク)
22日 OPEC定例総会(オーストリア・ウィーン)
24日 トルコ大統領及び議会選挙
24-26日 ニュージーランド・ファインフードショー「Fine Food NZ 2018」(オークランド)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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