外交・安保カレンダー(6月4-10日)

6月4・5日東京で開かれた国際会議で話す機会があった。詳細は今週の産経新聞コラムをお読み頂きたいが、主催は米シンクタンクCSISの太平洋フォーラム、多摩大学のルール形成戦略センターと在京米国大使館。参加した理由は同ファーラムとセンターの関係者が友人であり、テーマが「インド太平洋」であったことだ。

各国からアジアの専門家が数十人集まったが、日本人よりも米豪NZやASEAN諸国など外国人参加者の方が多く、モデレーターも米国人だったから、まるでハワイかサンフランシスコで会議しているような雰囲気だった。日本で開かれるこの種のシンポジウムとしては、実に多様性に富んでおり結構楽しめた。

「インド太平洋」なる概念は2017年11月、初のアジア歴訪中にトランプ氏が再三言及し、翌月には米国の国家安全保障戦略にも記載されるなど、同概念は今や米国の公式政策にもなっている。だが、その意味は、目的は、実現可能性は、などと皆で議論していくうちに、これらが意外に詰まっていないことが明らかになった。

誰が言い出したにせよ、近年アジア太平洋なる概念が浮上した意味は、現状で米国が単独で、もしくは既存の同盟システムのみで、地球規模で拡大する中国の自己主張を抑止できなくなりつつあるということだ。だが、こうしたインド太平洋なる概念は日本の安全保障にとって必ずしも十分なものではない。

日本の生存は東京からインド洋だけでなく、湾岸地域までのシーレーンの維持に大きく依存している。ところが、アジア専門家の多くは中東に関心がなく、中東専門家はアジアに関する知識が乏しい。アジア専門家だけでインド太平洋地域などという地域際的問題を戦略的に考えることには限界があることを今回も痛感した次第だ。

一方、北朝鮮問題は最近ようやく方向性が見えてきた。要するにトランプ氏も正恩氏も、理由は完全に異なるが、シンガポールで首脳会談をやりたくて仕方がないのだ。そうであれば会談の結果も自ずから見えてくる。要するに、中途半端な会談継続に合意するのだろう。その意味で米朝に関する限りサプライズは減ったといえるだろう。

その意味で今週最も驚いたのはシリア大統領北朝鮮訪問に関する北朝鮮国営メディア報道だ。バッシャール・アサド大統領が北朝鮮を訪問し金正恩党委員長と会談する意向を明らかにしたそうだ。実現すれば、金委員長が自国内で初めて開催する首脳会談になるというが、金正恩は何らかの高揚感に酔っているのではないか。

それにしても不思議だ。シリア大統領といえば米国が打倒を宣言した新「悪の枢軸」の頭目であり、自国民に対して化学兵器を使用した悪漢(昔は必ずしもそうではなかったのだが)でもある。北朝鮮とシリアは長年の友好国で、最近軍事協力関係を強化しているとはいえ、米朝首脳会談の前にこれを発表するとは良い度胸だ。

こうした金正恩の高揚感が吉と出るか、凶と出るかはわからない。事実は小説より奇なりという格言を地で行くような最近の国際情勢の新展開は実に興味深い。今こそ己の歴史の大局観を試す絶好の機会である。今週はこのくらいにしておこう。

3-5日 EU農水相理事会 非公式会合(ソフィア)
3-5日 フィリピン・ドゥテルテ大統領が韓国を訪問
3-8日 ウガンダ・クテサ外務大臣が来日
4日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
4日 BRICS外相会議およびIBSA外相会議(南アフリカ)
4日 ファルコン9(通信衛星SES12)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
4-5日 EU司法・内務相理事会(ルクセンブルク)
4-8日 UNDP/UNFPA/UNOPS 執行理事会 年次会合(ニューヨーク)
4-8日 国連食糧農業機関(FAO)理事会 第159回会合(ローマ)
4-8日 国際原子力機関(IAEA)理事会(ウィーン)
4-8日 台湾軍、民間人・企業初参加の実弾訓練
4-9日 秋篠宮ご夫婦が米・ハワイを訪問
4-12日 国連貿易開発会議(UNCTAD)貿易開発理事会 第65回会合 (ジュネーブ)
4-8月24日 「国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト」第5回訓練開始(ナイロビ)
5日 米国連邦議会予備選挙(アラバマ、カリフォルニア、アイオワ、ミシシッピ、モンタナ、ニュージャージー、ニューメキシコ、サウスダコタ)
5日 ブラジル4月鉱工業生産指数発表
5日 露・プーチン大統領がオーストリア訪問
5日 日米文化教育交流会議第28回日米合同会議の開催(ワシントンD.C.)
5日 長征3A(気象衛星 風雲二号)打ち上げ(四川省西昌衛星発射センター)
5日か6日 ロシア5月CPI発表
5-6日 WTO知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)理事会(スイス・ジュネーブ)
5-6日 イノベーションビジネス商談会「Innovfest unbound 2018」(シンガポール)
5-7日 佐藤外務副大臣が米国・ハワイを訪問
6日 米国4月貿易統計(2017年の年間補正も)発表
6日 ソユーズFG(国際宇宙ステーション第56次および第57次長期滞在ミッション用ソユーズ)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
6-7日 「第59回海外日系人大会」及び「ハワイ移住元年者150周年記念式典」(ハワイ)
6-9日 フランス・マクロン大統領がカナダを訪問
7日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
7日 安倍首相が米・ワシントンを訪問し、日米首脳会談
7日 プーチン大統領による「ダイレクト・ライン」(国民との直接対話)実施
7日 EU第1四半期実質GDP成長率発表
7日 メキシコ5月CPI発表
7-8日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ルクセンブルク)
7-9日 ベトナム国際フィルム・テレビテクノロジー展「Telefilm-Vietnam International Exhibition」(ホーチミン)
8日 ブラジル5月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
8日 中国5月貿易統計発表
8日 日中の海空連絡メカニズムの運用開始
8-9日 G7首脳会議(カナダ・シャルルボワ)
9日 中国5月CPI発表
9-10日 上海協力機構首脳会議(中国・青島)
10日 スイス、金融システム改革案などをめぐって国民投票

【来週の予定】
11日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ルクセンブルク)
11日 メキシコ4月鉱工業生産指数発表
11日 H-IIAロケット39号機(情報収集衛星レーダ6号機)打ち上げ(種子島宇宙センター)
11-14日 欧州議会本会議(ストラスブール)
12日 米朝首脳会談(シンガポール)
12日 米国5月消費者物価指数(CPI)発表
12日 米国連邦議会予備選挙(メーン、ネバダ、ノースダコタ、サウスカロライナ、バージニア)
12-13日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
13日 韓国第7回全国同時地方選挙
13日 ブラジル4月月間小売り調査発表
13-16日 ニュージーランド酪農業祭「Fieldays」
14日 中国5月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 米国5月小売売上高統計発表
14日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(ラトビア・リガ)
14日 ベガサスXL(ICON)打ち上げ(マーシャル諸島クェゼリン)
15日 G20エネルギー移行担当相会合(アルゼンチン・バリローチェ)
15日 EU5月CPI発表
15日 ロシア中央銀行理事会
17日 コロンビア大統領選(決選投票)
17日 ソユーズ2.1b(ロシア測位衛星Glonass 756)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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