外交・安保カレンダー(5月21-27日)

5月16日、北朝鮮は予定されていた南北閣僚級会談を中止すると発表した。更に、北朝鮮外務次官は同日談話を発表し、もし米国が「我々を追い詰め、我々が核兵器を放棄するのを一方的に要求するなら、我々は協議への関心を失い、予定されているDPRKと米国の首脳会談を受け入れるべきか再考せざるを得なくなる」とも述べた。

これまで、米朝首脳会談の実現と成功に文字通り「前のめり」だった韓国政府は勿論、我が国の一部メディアや研究者たちも右往左往し始めている。筆者も、「どうせ、こうなることは判っていた」などと偉そうなことを言うつもりはない。だが、これまで異常なほどの楽観論を報じてきたジャーナリストには良い意味で「お灸」だったかもしれない。

幸い筆者は3月にこう書いた。「気の早い内外メディアはもう会談場所の予測を始めているが、本当に米朝首脳会談が実現するかは「お手並み拝見」。英語の格言に「悪魔は詳細に宿る」というのがある。トランプ氏に関する限り、あれだけ衝動的に決めたものは、同じく衝動的に中止される可能性がある。これだけは忘れてはならない。」

また、4月にも、「北朝鮮が容易に核兵器開発を断念するとは思えない。一定期間経過後は希望が失望に変わり、信頼が不信に急変する時が来る可能性も十分あるだろう。」と書いてきた。これからも米朝首脳会談には紆余曲折があるので、流言飛語に惑わされず、素人の俗説に付和雷同しないことが大事である。

明22日にはワシントンで米韓首脳会談が開催される。NYTによれば、トランプ氏は米朝首脳会談が失敗するリスクについて側近や同盟国と検証し始めたらしい。何を今更という感じだが、トランプ氏にとっては米朝首脳会談の成功でスポットライトを浴びることが最大の目的。最近の北の発言で会談が失敗する可能性を理解したのだろう。

やはり、「あれだけ衝動的に決めたものは、同じく衝動的に中止される可能性がある」ということに尽きる。ポイントは米韓首脳会談だ。この会談で韓国大統領はトランプ氏を再説得できるだろうか、それとも、ここでトランプ氏の韓国、特に文大統領個人に対する信頼は完全に消失してしまうのだろうか。22日は要注意である。

〇中東・アフリカ
5月6日、9年ぶりの総選挙が行われたレバノンでは組閣作業が難航していたが、21日が組閣期限となる。今後は臨時政府を組織し、その下で更なる組閣作業が行われるらしい。サウジが支援するハリーリ現首相続投の可能性が高いが、イランもヒズボッラを通じて影響力を行使している。組閣が円滑に進まない理由はこれだ。

〇欧州・ロシア
21日にもイタリアでようやく新政府が決まりそうだ。まあ、あのイタリアだから不思議はない。最大の問題は新政権がより反EU的姿勢を示す可能性があることだろう。21日にはイラン核合意についてイラン外務次官とEUとの協議がウィーンで行われるそうだ。しかし、米国抜きかつ、このレベルで会合しても進展はないだろう。
25日にはユーロ圏諸国がギリシャ問題を協議する。いつまでこんなことを続けるつもりだろう?今週もロシア外交が活発だ。22日にロシア大統領がインド首相、ブルガリア大統領と、24日からは仏大統領と日本の安倍首相とそれぞれロシアで会談する。日仏首脳は25日にサンクトペテルブルグでの国際経済フォーラムに参加する。

〇東アジア・大洋州
23日から北朝鮮がプンゲリの核実験場を閉鎖する式典取材も含め、米英中露韓の記者団の入国を許すそうだが、報道によればトンデモナイ金額になるらしい。2月の五輪参加の場合もそうだったが、最近の北朝鮮は何でもカネ、カネ、カネだ。そういえば、筆者が米国シンクタンクの訪朝団に参加した時も、高額を請求された覚えがある。
今週にも日本が米国の鉄鋼アルミ関税に関し具体的な対抗措置を発動する旨WTOに通知する可能性がある。それにしても、ジュネーブのWTOで貿易交渉実務を担当した経験のある筆者にとっては、最近のWTOの体たらくが残念でならない。やはりコンセンサスでしか決まらないWTOに中国を加盟させたこと自体が間違いだった。

〇南北アメリカ
特記事項なし。

〇インド亜大陸
上述の通り、インド首相が訪露しプーチン大統領と首脳会談を行う以外には特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

14-6月29日 ジュネーブ軍縮会議(CD)第二部(ジュネーブ)
16-22日 水鳥防災担当国連事務次長補兼事務総長特別代表の訪日
19-26日 河野外務大臣がブラジル、アルゼンチン、米国及びメキシコを訪問
20-26日 佐藤外務副大臣がバルバドス、ドミニカ国及びアンティグア・バーブーダ訪問
20-27日 2018年度中国社会科学院青年研究者代表団第1陣の訪日(日中植林・植樹国際連帯事業)
21日 G20外務相会合(ブエノスアイレス)
21日 ロシア・インド首脳会談(ロシア・ソチ)
21-22日 国連経済社会理事会(ECOSOC)実質会期 ハイレベル・セグメント(ニューヨーク)
21-26日 世界保健機関(WHO)世界保健総会 第71回会合(ジュネーブ)
21日-6月18日 第14期第5回ベトナム国会開会
22日 EU外相理事会(ブリュッセル)
22日 米韓首脳会談(ワシントン)
22日 米国連邦議会予備選挙(アーカンソー州ほか2州)
22日 メキシコ3月小売・卸売販売指数発表
22日 タイのクーデターから4年
22-23日 EU教育・若年・文化・スポーツ相理事会(ブリュッセル)
23日 メキシコ第1四半期GDP発表
23日 ファルコン9(イリジウム・ネクスト5機等)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
23-25日 国連世界観光機関(UNWTO)第108回執行理事会(マドリード)
23-25日 北朝鮮が核実験場廃棄を公開(豊渓里)
24日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
24日 ユーロ・グループ(ブリュッセル)
24日 EUエネルギー・インフラ・フォーラム(コペンハーゲン)
24日 FOMC議事録(FRB)
24日 バルバドス議会選挙
24日 ファルコン9(通信衛星SES12)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
24-25日 オランダ・ルッテ首相がインドを訪問
24-26日 サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(サンクトペテルブルク)
24-27日 サイゴン国際オートテックおよびアクセサリー展2018「Saigon Autotech 2018」(ホーチミン)
25日 EU一般データ保護規則(GDPR)の適用開始
25日 EU経済・財務省(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
25日 中絶合法化を問うアイルランド国民投票
25日 メキシコ4月貿易統計発表
25日 安倍首相がサンクトペテルブルク国際経済フォーラムに出席
25日か28日 ロシア4月雇用統計発表
25-26日 APEC貿易担当相会合(パプアニューギニア・ポートモレスビー)
25-29日 二階自民党幹事長が中国を訪問
26日 日露首脳会談(モスクワ)
27日 コロンビア大統領選
27日 長征4C(嫦娥四号中継通信衛星Queqiao等)打ち上げ(四川省西昌衛星発射センター)
27日-6月2日 APEC観光担当相会合(ポートモレスビー)

【来週の予定】
28日 EU外相理事会(ブリュッセル)
28日 メキシコ4月雇用統計発表
28日 アンゴラ大統領がフランスを訪問
28日 米・戦没将兵追悼記念日(為替、債券、株式、商品市場が休場)
28日か29日 ロシア第1四半期貿易統計発表
28-29日 EU競争担当相理事会(ブリュッセル)
28-29日 世界保健機関(WHO)執行理事会 第143回会合(ジュネーブ)
28-31日 欧州議会本会議(ストラスブール)
28-6月1日 APEC観光担当相会合(ポートモレスビー)
28-6月8日 国際労働機関(ILO)国際労働総会 第107回会合(ジュネーブ)
28-6月8日 核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)に関するハイレベル専門家準備グループ 第二回会合(ジュネーブ)
29日 ブラジル4月全国家計サンプル調査発表
29-30日 ブラジル投資フォーラム(サンパウロ)
29-6月2日 クアン・ベトナム社会主義共和国主席が訪日
30日 米・ペンス副大統領がブラジルを訪問
30日 ブラジル第1四半期GDP発表
30日 米国第1四半期GDP(改定値)発表
30日 ベージュブック(FRB)
30-31日 第25回カスピ海石油ガス国際会議(アゼルバイジャン・バクー)
31日 ユーロスタット、4月失業率発表
31日 米・4月個人消費支出(PCE)物価指数(商務省)
31日 インド第4四半期GDP発表
31日 PSLV(地球観測衛星BlackSky Global1)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
31日 ファルコン9(通信衛星SES12)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
31日-6月2日 G7財務・開発担当相・中央銀行総裁会合(カナダ・ウィスラー)
6月1日 米国5月雇用統計発表
1-3日 アジア安全保障会議(シャングリラ会合)(シンガポール)
3日 スロベニア議会選挙

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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