外交・安保カレンダー(4月23-29日)

先週北朝鮮は核実験と長距離ミサイル発射実験の中止を発表した。日本には、安倍政権は「蚊帳の外」で後手後手に回っている、全てが「アメリカ頼み」で主体性がないなどと批判する向きもあるが、幸い日本メディアの論調は今も北朝鮮に対する懐疑論が根強い。まだまだ日本の知識人は、一部例外を除けば、概ね健全だと感じた。

但し、北朝鮮の「微笑外交」により推測記事の自己増殖が始まった現状は決して楽観できない。今後も韓国大統領の前のめり姿勢が続けば、北朝鮮に対し必要以上に譲歩する動きが表面化するかもしれない。この点、最近のトランプ氏の発言の方が意外にバランスが取れている。これも、何時変わるかは分からないのだが・・・。

最悪の場合、北朝鮮が十分な譲歩をしないままに、
●南北首脳会談で朝鮮戦争の終結方法が真剣に議論され、
●米朝首脳会談で「非核化」プロセスに妥協が成立し、
●経済制裁の段階的解除の可能性が具体化し、
●平和条約締結やそれに伴う在韓米軍撤退議論が始まり、
●北朝鮮経済の改革開放や日朝関係正常化などの議論が十分な検証を伴わないまま動き出すかもしれない点は要注意である。

一方、北朝鮮が容易に核兵器開発を断念するとは思えない。一定期間経過後は希望が失望に変わり、信頼が不信に急変する時が来る可能性も十分あるだろう。当面はどちらに転んでも良いように、頭の体操を続けておく必要がある。その意味でも、今週27日に予定される南北首脳会談が注目される。

〇欧州・ロシア
23-25日にメキシコ大統領が独蘭西を訪問する。24日には南米のメルコスールとEUが貿易協議を行う。25日には日本の外相がEUを訪問し、政治経済両面で協議を行う。アルメニアでは週末に検察が違法デモの容疑で野党勢力指導者を拘束したが、首都エレバンではその後も大規模デモが続いているらしい。
問題は民主主義制度の下での長期政権維持の弊害だ。アルメニアは2015年の憲法改正で実質的政治権力が大統領から首相に移されたが、今回はその前大統領が退任後も首相として権力を維持していた。何のことはない、プーチン氏のロシアと同じ構図である。人々が怒るのも当然だろう。案の定、同首相は23日辞任を発表した。

〇東アジア・大洋州
22日からスウェーデン国王夫妻が訪日している。実は本日、在京同国大使館で両陛下を含む150人のスウェーデン閣僚、ビジネスマンに対し日本の安全保障政策に関する説明を行う機会を得た。驚いたことに、これら行事の公用語は英語だった。しかも、極めて流暢な。筆者が参加していたからではない。スウェーデンは凄い国だ。
23日に米韓合同軍事演習「Key Resolve」が始まる。24日には上海協力機構の会合が北京で開かれる。26-27日にはASEAN首脳会議がシンガポールで開かれる。そして、27日には遂に南北朝鮮首脳会議が開かれる。今週も東アジアから目が離せない。

〇中東・アフリカ
旧友のNYTコラムニスト、トム・フリードマンが次回シリアをめぐり戦争が起きるとすれば、それはイスラエルとイラン間で戦われることになるだろうと書いていた。同感である。日本ではシリアにおけるイラン、特に革命防衛隊の活動の重大さ、深刻さが過小評価されているように思えてならない。
現在イランはシリア国内に40カ所近い拠点を有しており、イスラエルに対する直接攻撃能力を高めつつある。先日の米英仏による限定攻撃に示されるように、米国は対露戦争の引き金ともなりかねない対イラン攻撃は念頭に置いていない。だからこそ、イスラエルによるシリア国内のイラン拠点に対する攻撃が懸念されるのだ。

〇南北アメリカ
先週もトランプ政権は内政上のごたごたに忙殺されているようだ。特に、トランプ氏の個人弁護士が家宅捜索を受けたことは重大であり、彼が刑事事件の容疑者となる可能性もある。もし、この弁護士が司法取引を行って、トランプ氏またはトランプ陣営の内情を暴露したら、それこそワシントンに激震が走るだろう。
先週は前FBI長官による暴露本が炸裂した。「A Higher Loyalty」という題名も意味深ではあるが、内容的に新味はないようだ。コウミー前長官は現在出版ツアーで全米を回っている。この人の文章を読んでいると、米国の本当のエスタブリッシュメントはケネディ家やブッシュ家ではなく、米国の法曹界ではないのかとすら思う。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

18-27日 国際電気通信連合(ITU)理事会 2018会合(ジュネーブ)
19-26日 第40回モスクワ国際映画祭
21-25日 河野外務大臣のカナダ、スイス及びベルギー訪問
22-23日 金杉アジア大洋州局長のソウル出張
22-23日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会 非公式会合(ソフィア)
22-24日 G7外務・安全保障担当相会合(トロント)
22-25日 カール16世グスタフ・スウェーデン王国国王陛下及び同王妃陛下の訪日
22-27日 米・ソーントン国務次官補代行が日韓歴訪
23日 第14回日中文化交流政府間協議の開催(外務省)
23日 CIS常任理事会会議(ミンスク)
23-25日 フランス・マクロン大統領がアメリカを訪問
23-26日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
23-26日 国連経済社会理事会(ECOSOC)開発資金会議フォローアップ年次会合(ニューヨーク)
23-27日 国際人権理事会 第19回発展の権利に関する公開作業部会(ジュネーブ)
23-27日 国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)第35回作業部会Ⅲ(投資家対国家の紛争解決の改革)(ニューヨーク)
23-27日 万国郵便連合(UPU)管理理事会(ベルン)
23-5月2日 国際人権理事会 第115回強制的・非自発的失踪に関する作業部会(ジュネーブ)
24日 米仏首脳会談(ワシントン)
24日 EU一般問題理事会(ルクセンブルク)
24日 グリーンランド議会選挙
24日か25日 ロシア3月雇用統計発表
24-27日 フード・アンド・ホテル・アジア2018「FHA2018」(シンガポール)
24-28日 モロッコ国際農業展(SIAM)(メクネス)
25日 国連安全保障理事会 第84回国連補償委員会の運営理事会 安保理決議692(ジュネーブ)
25日 メキシコ2月小売・卸売販売指数発表
25日 フェロー諸島 憲法改正を問う住民投票
25-28日 第32回ASEAN首脳会議、ASEAN経済共同体(AEC)協議会
25-5月4日 北京モーターショー(一般公開は27日から)
26日 メキシコ3月雇用統計発表
26日 アジア欧州会合(ASEM)財務大臣会合(ブルガリア・ソフィア)
26日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
26日 ロコット(欧州地球観測衛星)打ち上げ(ロシア・プレセツク宇宙基地)
26日 長征11(小型ビデオ観測衛星等)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
26-29日 自動車・世界ラリー選手権 第5戦アルゼンチン・ラリー
26-5月4日 二階自民党幹事長がロシア、トルコ訪問へ出発
27日 南北首脳会談(板門店・平和の家)
27日 「日本・ロシアフォーラム」開催(モスクワ)
27日 米独首脳会談(ワシントン)
27日 米国第1四半期GDP(速報値)発表
27日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ソフィア)
27日 ロシア中央銀行理事会
27日 ブラジル3月全国家計サンプル調査発表
27日 メキシコ3月貿易統計発表
27-28日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会 非公式会合(ソフィア)
28日 ガボン国民議会選挙
28日 民間ロケット「MOMO」2号機打ち上げ(北海道大樹町)
28-5月8日 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)貿易交渉委員会関連会合(シンガポール)
29日 モンテネグロ大統領選挙
29-5月1日 中国メーデー(労働節)

【来週の予定】
30日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
30日 米・ナイジェリア首脳会談(ワシントン)
30日 米・3月個人消費支出(PCE)物価指数(商務省)
1日 米・EU及び韓国など6カ国の鉄鋼とアルミニウム輸入制限除外最終日
1-2日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
1-3日 国連経済社会理事会 実質会期・統合セグメント
1-4日 ソウル国際食品産業展(SEOUL FOOD 2018)(韓国・京畿道)
1-14日 第40回国連広報委員会(ニューヨーク)
2日 EU3月失業率発表(EU統計局)
2日 長征4B(大気観測衛星)打ち上げ(山西省・太原衛星発射センター)
2-3日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
3日 米国3月貿易統計発表
3日 ブラジル3月鉱工業生産指数発表
3日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
3-6日 ADB年次総会(マニラ)
4日 米国4月雇用統計発表
4日か7日 ロシア4月CPI発表
4日 ファルコン9(バングラデシュの通信衛星)打ち上げ(ケネディ宇宙センター)
5日 アトラスV(火星探査機)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
6日 レバノン国民議会議員選挙
6日 フランス領ポリネシア議会選挙
6日 長征3B(亜太6C)打ち上げ(四川省・西昌衛星発射センター)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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