外交・安保カレンダー(3月19-25日)

今週はお詫びから始めたい。18日にロシアで重要な大統領選挙があったにも関わらず、先週は全くコメントしなかった。プーチン再選があまりに明白でロシア内政に殆ど変化が期待できなかったからだが、理由はともかく、やはり先週は何かコメントすべきだった。米朝首脳会談の話に忙殺されたためだが、それは全く理由にならない。

それにしても、ロシアは実に強い国だ。政治制度や理念に普遍性や魅力があるからではない。数少ない優れた産品である武器も特に最先端技術の集大成ではない。それでもロシアが強いのは、外国が如何に批判しようと、自国が如何に孤立しようと、彼らが必要と思えば、如何なる蛮行も平然と、かつ確実に実行する力があるからだ。

その典型例が最近の英国での元ロシア人スパイ親子暗殺未遂事件である。冷戦時代のスパイ映画を彷彿させるこの事件に英国政府はカンカンだが、ロシア政府は完全に無視している。政治体制が社会主義であろうが、民主主義もどきであろうが、これほど政治の実態が変わらない国は少ない。恐らく中国が民主化しても同様だろう。

ジョージ・バーナード・ショー作の喜劇『人と超人』に次のようなセリフがある。「全ての歴史は(天国と地獄という)両極端間にある世界の振動の記録に過ぎない。歴史の一期間とは振子のひと振りでしかないが、これが常に動いているので、各世代は世界が進歩していると思っている」ロシアの歴史も基本的にはこれと変わらないのだろう。

ほぼ同時期に、中国では習近平氏の終身国家主席が決まり、ロシアゲート特別検察官の解任を密かに企む米国のトランプ氏は、民主制度の真髄である三権分立下のチェック&バランスという概念自体に嫌悪を隠そうとしない。これに対し、日本ではモリトモやカケ問題で長期政権が追い詰められている。真の民主国家は日本である。

〇欧州・ロシア
英国のEU離脱問題で進展があった。19日、EU側交渉官は焦点となっていた離脱後の激変緩和に向けた「移行期間」を1年9カ月とすることで双方が合意したと発表。合意内容は22-23日にEU首脳会議に報告されるという。ようやく決まったようだが、英国離脱後の姿はまだ明らかではない。一歩前進だが道はまだ遠し、ということか。
ロシア外相が訪日し、21日に日露外相会談が東京で開かれる。5月には安倍首相の訪ロが予定されており、今回の外相会談の目的は首脳会談の「環境整備」といわれるが、そう簡単ではないだろう。ロシアのラブロフ外相に限らず、ソ連の時代からロシアの外相は任期が長い割に柔軟性に欠ける。これも彼らの伝統の一部なのか。

〇東アジア・大洋州
20日に中国の全人代が閉幕する。副首相に習近平氏の経済ブレーンといわれる劉鶴・党中央財経指導グループ弁公室主任が就任。王毅外交部長が兼務で国務委員に昇格するなどの人事が決まった。副首相、国務委員の数や構成に大きな変化はない。習近平氏の権力集中ばかりが目立った形だ。
北朝鮮関連で目立った動きはない。水面下で南北の話し合いが続いているのか、それとも大きな進展はないのか。4月1日には平昌五輪等で延期されていた米韓合同軍事演習が実施される。19日にフィンランドで開かれる非公開国際会議に北朝鮮外務省北米副局長が参加するというが、このレベルの職員に実質的交渉権限はない。

〇中東・アフリカ
19日からサウジアラビア皇太子が訪米する。このムハンマッド・ビン・サルマーン(MbS)は実質的なサウジ最高権力者であり、トランプ氏の娘婿とも親しい。MbSは20日にトランプ氏と会談するほか、ボストン、ニューヨーク、ヒューストン、シアトル、サンフランシスコを訪問するという。MbSにとっては米国を良く知る良い機会となるだろう。

〇南北アメリカ
先週からトランプ氏は再び選挙モードに戻ったようだ。Keep America Greatなるスローガンを作り、中間選挙に向け精力的に各地を回っているが、13日に行われたペンシルベニア州連邦下院議員補選では民主党候補が予想外の善戦で、議席を奪う勢い。大統領選で圧勝したこの地でトランプ神話に陰りが見え始めたようだ。

〇インド亜大陸
22日からドイツ大統領がインドを訪問する。今週はこのくらいにしておこう。

12-23日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)作業部会B及び非公式・専門家委員会第50回会期(ウィーン)
12-4月6日 自由権規約人権委員会(ジュネーブ)
13-20日 対日理解促進交流プログラム・ラオス及びタイの高校生と大学生が訪日
14-20日 堀井外務大臣政務官がイタリア、チュニジア及びエジプトを訪問
17日 長征2D(陸地探査衛星四号)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
17-19日 小池東京都知事が訪韓、平昌パラリンピックを視察
18-22日 岡本外務大臣政務官がインド及びタイを訪問
18-23日 第8回世界水フォーラムの開催(ブラジル・ブラジリア)
18-25日 対日理解促進交流プログラム・米国大学生が来日(東京、広島)
19日 中国全人代で副首相・国務委員や閣僚選出
19日 EU外相理事会(ブリュッセル)
19日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
19日か20日 ロシア1-2月鉱工業生産指数発表
19-20日 薗浦内閣総理大臣補佐官がインドネシアを訪問
19-20日 日・タジキスタン投資協定交渉第1回会合の開催(タジキスタン・ドゥシャンベ)
19-20日 G20財務相・中央銀行総裁会合(アルゼンチン・ブエノスアイレス)
19-22日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
19-22日 香港インターナショナル・フィルム&テレビ・マーケット(フィルマート)
19-23日 国連人権理事会 第22回アフリカ系子孫に関する専門家作業部会 (ジュネーブ)
19-28日 対日理解促進交流プログラム・ASEAN10か国、東ティモール及びインドの大学生及び大学院生が来日(東京、長崎)
20日 中国・全国人民代表大会(全人代)閉会
20日 米・トランプ大統領とサウジアラビア・サルマーン皇太子が会談(ワシントン)
20日 米国連邦議会予備選挙(イリノイ州)
20日 EU「オンライン・コンテンツ・サービスの越境ポータビリティー(携帯性)規則」適用開始
20日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
20日 EU基本条約第50条(加盟国の離脱)に関する一般問題理事会(ブリュッセル)
20日 南ア準備銀行四季報発表
20日か21日 ロシア1月貿易統計発表
20-21日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
20-21日 ブラジル中央銀行、金融政策委員会(Copom)
20-22日 第7回ベトナム国際原材料およびゴム・プラスチック工業技術展「Plastics&Rubber Vietnam 2018」(ホーチミン)
21日 2017年10-12月期の米経常収支(商務省)
21日 日露外相会談(東京都内)
21日 オランダ情報監視に係る法改正案(情報・保安組織法)に関する国民投票
22日 ECB一般理事会(フランクフルト)
22日 ソユーズFG(国際宇宙ステーション長期滞在ミッション用)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
22日 アリアン5ECA(通信衛星)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
22-23日 日・キルギス投資協定交渉第2回会合の開催(ビシュケク)
22-23日 欧州理事会(ブリュッセル)
22-23日 EU地域委員会 第128回本会議(ブリュッセル)
22-25日 ドイツ・シュタインマイヤー大統領がインドを訪問
23日 米連邦政府つなぎ予算期限
23日 トランプ米政権が鉄鋼とアルミの輸入制限を発動
23日 ロシア中央銀行理事会
23日 イタリア議会初招集
23日 地方創生支援・外務大臣及び北海道知事共催レセプションを開催(飯倉公館)
23日か26日 ロシア2月雇用統計発表
24日 米高校乱射事件で生徒らが銃規制強化求めるデモ(ワシントン)
24日 GSLV-Ⅱ F11(GSAT 6A)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
24-25日 外務省及び在ロシア連邦日本国大使館が「地域の魅力海外発信支援事業」を開催(モスクワ)
25日 鳥取市長選挙
25日 トルクメニスタン議会選挙
25日 欧州各国が夏時間(サマータイム)入り

<3月26日-4月1日>
26日 トルコ・EU首脳会談(ブルガリア)
26日 メキシコ1月小売・卸売販売指数発表
26-27日 「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」第2回会合の開催(外務本省)
26-27日 ジュヌ・アフリック主催「アフリカCEOフォーラム」開催(コートジボワール)
26-28日 エジプト大統領選挙
26-28日 G7労働・イノベーション担当相会合(カナダ・モントリオール)
26-28日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
27日 メキシコ2月貿易統計、雇用統計発表
28日 米国2017年第4四半期および年間GDP(確定値)発表
28日 核軍縮に関する国連ハイレベル国際会議 組織会期(ニューヨーク)
28-29日 中国・楊国務委員が訪韓
28-4月8日 ニューヨーク国際自動車ショー(一般公開は30日から)
29日 米・2月PCE物価指数(商務省)
29日 ブラジル2月全国家計サンプル調査発表
29日 フランス社会党党首選挙
29日 英国のEU離脱通告から1年
30日 米・グッドフライデー(聖金曜日)で債権・株式・商品市場が休場
4月1日 新車への「eコール」(自動車事故発生時の自動緊急通報システム)搭載義務開始

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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