外交・安保カレンダー(2月5-11日)

今週9日にいよいよ平昌五輪が始まる。選手や役員よりはるかに多い「宣伝応援団」を送りこむ一方、開会前日に軍事パレードを予定しているのだから、北朝鮮はやりたい放題だ。是が非でもオリンピックを成功させたい韓国政府の足元を完全に見ているのだろう。当面の目的は燃料か、物資か、現金か。筆者にはよく分からない。

いずれにせよ、韓国政府は完全に浮足立っている。北朝鮮が細かいことに難癖をつける毎に、韓国はより多くの譲歩を強いられているはずだ。今更五輪参加をキャンセルされては困るからだろう。報道されていない分野で、一体どのような南北取引が行われているのか。現時点では詳細を知る由もない。

かかる韓国の姿勢を最も苦々しく思っているのは米国だ。北朝鮮の核武装化を目前にして、米韓の連携に水を差すような動きを躊躇わない同盟国・韓国を米国はどう評価するのだろう。今の韓国は反共同盟という「基軸主義」よりも、対北宥和策と対中「事大主義」という「均衡策」にしか関心がないのか。

今週末の開会式から一連の首脳会談までの動きは要注意だ。北朝鮮は事実上の「制裁破り」を韓国に強いようとしている。このままでは日米韓の連携は弱体化していくだろう。五輪後、核をめぐる危機は必ず再発する。この段階で北朝鮮に「米国は何もできない」と思わせることの危険は計り知れない。

一方、国内では日曜日の名護市長選挙の結果にも注目が集まった。20年前、日米安保の担当課長だった筆者にとって、今回の結果は実に感慨深い。過去何度か辺野古地区を訪れたが、この8年間街並みはほとんど変わっていない。当然だろう、補助金なしに住民の生活向上を図れる自治体は限られるからだ。

過去20年間、紆余曲折を経て、最終的に首相が決定し、知事が受け入れ、最高裁が適法とした計画がある。これを公正かつ透明度の高い民主的な投票で勝利した新市長が実行するのは極めて民主的だ。それ以上でも以下でもない。安全保障は中央政府の責任、その枠内で住民を守るのが自治体の首長である。

〇欧州・ロシア
5日にトルコ大統領が訪伊、イタリア政府首脳やローマ法王と会談する。同日ロンドンでは英国のEU離脱につき閣僚級の会合が開かれる。まだこの問題を議論しているのかという気もするが、それだけ複雑な問題であることが良く判るだろう。この種の会合は「粘り腰」の欧州諸国が最も得意とするところだ。

〇東アジア・大洋州
6日に日露外務次官協議が行われる。同日には米副大統領が訪日し、その後訪韓して平昌五輪開会式に出席する。7-8日にはオランダ国王夫妻が訪中する。五輪関係では、北朝鮮の楽団が9日から韓国で公演を行い12日に帰国するそうだが、韓国大統領はこれで本当に意味のある南北対話が始まるとでも思っているのだろうか。

〇中東・アフリカ
今週の中東は静かだ。インド首相が10日からアラブ首長国連邦、オマーンとパレスチナを訪問する。インドといえば、最近イスラエルとの関係強化が目立つが、なかなかどうして、インド洋からアラビア海に続くシーレーンの一部であるアラビア半島南部の二カ国を訪問するなんて、色々考えているのだなあと思う。

〇南北アメリカ
先週、トランプ氏は下院情報委員長(共和党)が作成したロシアゲートに関する司法省とFBIの動きを記す極秘報告書を公表した。これで自分の潔白が証明されたというが、良く判らない。同文書は、2016年の大統領選中に民主党が資金を提供して作成したトランプ氏の言動に関する報告書を元にFBIが捜査を始めた可能性を指摘する。
これでも判りにくいのだが、要するにトランプ政権は、共和党の委員長が司法省とFBIの政治的中立性を疑わせる極秘資料を、司法関係者の批判にもかかわらず公開したのだ。恐らく目的は、現在のモラー特別検察官の捜査が中立性を欠いた政治的動機に基づくものというイメージを世間に与えたいのだろう。
随分手の込んだやり方だが、所詮は共和党の委員長が作った政治的色彩の強い文書、これで新たな事実が明らかになった訳でもない。この種の「子供騙し」とは言わないが、「頭隠して尻隠さず」的なパーフォーマンスを続けていても、根本的な問題は解決しない。この種の出来事が毎週起こるなんて、今のワシントンはちょっと異常だ。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

2日か5日 ロシア2017年経済活動・需要項目別GDP(速報値)発表
2-9日 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の第21回交渉会合(インドネシア・ジョグジャカルタ)
3-5日 竹下総理特使がスリランカを訪問
3-7日 スエフ・コモロ連合外務・国際協力・仏語圏・在外コモロ人担当大臣が訪日
4-11日 対日理解促進交流プログラム・カナダ人若手リーダーの訪日(東京・大阪・京都)
5日 トルコ・エルドアン大統領がバチカンを訪問、フランシスコ・ローマ教皇と会談
5-8日 欧州議会本会議(ストラスブルグ)
5-9日 国際麻薬統制委員会(INCB)121回会合(ウィーン)
6日 米国12月貿易統計発表
6日 金杉アジア大洋州局長とユン米国国務省北朝鮮政策担当特別代表との意見交換(東京)
6日 日ロ外務次官級協議(東京都内)
6日 モンテネグロ・マルコビッチ首相がコソヴォを訪問
6-7日 ブラジル中央銀行、金融政策委員会(Copom)
6-7日 ドイツ・シュタインマイヤー大統領が訪日
6-8日 ユニセフ(UNICEF)執行理事会 第一定例会合(ニューヨーク)
7日 欧州委員会冬季経済予測
7日 安倍首相と米国・ペンス副大統領が会談(東京)
7-10日 カナダ・トルドー首相がアメリカ合衆国(ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ)を訪問
7日か8日 ロシア1月CPI発表
8日 フランス・マクロン大統領がセネガルを訪問
8日 英国中央銀行が金融政策発表
8日 メキシコ中央銀行が金融政策発表
8日 外務省・日本商工会議所及び東京商工会議所の共催でセミナー「FTA・EPA時代のビジネス戦略~FTA・EPAのメリット・活用法~」を開催(東京都内)
8日 メキシコ1月CPI発表
8日 中国1月貿易統計発表
8日 ブラジル1月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
8日 朝鮮人民軍創建日(2・8節)
9日 ブラジル12月月間小売り調査発表
9日 メキシコ12月鉱工業生産指数発表
9日 中国1月CPI発表
9日 「V4+日本」BREXITセミナー(城西大学・紀尾井町キャンパス)
9日 EU・アゼルバイジャン協力評議会開催、ロシア中央銀行理事会
9日 米・ペンス副大統領と安倍首相が平昌冬季オリンピックの開会式に出席
9日 日韓首脳会談
9日 CIS・中央アジア知的財産担当官会議の開催(在ロシア日本大使館)
9-12日 インド・モディ首相がパレスチナとUAE、オマーンを訪問
9-25日 第23回平昌冬季オリンピック(韓国・平昌)
10日 ファルコン9(地球観測衛星PAZなど)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
11日 ソユーズ2.1a(ISS無人補給機プログレスMS8)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
11日 モナコ議会選挙
11-12日 リオのカーニバル(ブラジル・リオデジャネイロ)

<2月12-18日>
12日 インド12月鉱工業生産指数発表
12日 長征3B(航法測位衛星第三世代北斗2機)打ち上げ(四川省西昌衛星発射センター)
13日 UNウィメン執行理事会 第一定例会合(ニューヨーク)
14日 米国1月消費者物価指数(CPI)、小売売上高統計発表
14-15日 国際農業開発基金(IFAD)総務会 第41回会合(ローマ)
15日 国連軍縮会議 組織会期(ニューヨーク)
15日か16日 ロシア1月鉱工業生産指数発表
15-16日 ロシア国際投資フォーラム「ソチ2018」
15-16日 韓国旧正月休暇
15-21日 中国春節休暇
15-25日 ベルリン国際映画祭
15日 EU教育・若年・文化・スポーツ相理事会(ブリュッセル)
16日 北朝鮮の故金正日総書記生誕76年
16-18日 ミュンヘン安全保障会議(ドイツ・ミュンヘン)
17日 ファルコン9(地球観測衛星PAZなど)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
19-23日 カナダ・トルドー首相がインドを訪問
21-22日 ロシア外相がセルビアを訪問

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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