外交・安保カレンダー(1月15-21日)

先週、例のトランプ政権の暴露本を漸く手に入れた。ワシントンに出張した知人が帰国直前空港の売店で最後のコピーをお土産に買って来てくれたのだ。310頁の大部を先ほど読み終えたが、政権の内情は予想以上に酷いようだ。バノン氏は「後悔している」と述べたそうだが、「後悔先に立たず」とはこのことだ。

日本で同書は「トランプ氏の大統領としての資質を疑問視する」内容と報じられたが、筆者が最も興味深く読んだのはトランプ政権内の力関係を描いた部分だ。これまで断片的に報じられてはいたが、こうして纏まった形で読んでみると、改めてトランプ政権が如何に「機能していないか」が実に良く判る。

要するに同政権は、S・バノン首席戦略官率いる「極右ナショナリスト」集団、大統領の娘婿夫婦が代表するニューヨーク富豪・民主党系「穏健派」集団とR・プリーバス首席補佐官が代表する「議会共和党主流派」集団という3つのグループが「空洞」である大統領を取り囲んでいたということだ。

同書によればバノンは「影の大統領」では決してなかったようだし、意外にも米内政については素人同然だった部分がある。他方、プリーバスも真の首席補佐官ではなかった。何のことはない、バノンがジャヴァンカ(ジャレッド+イヴァンカ)と呼んだ大統領娘婿夫妻が最も首席補佐官らしい仕事をしたのだ。

先週も書いた通り、同書の著者M・ウォルフ氏は毀誉褒貶相半ばするジャーナリストで、書かれた内容のどれが真実かは不明な点も少なくない。この暴露本については今週の産経新聞のコラムで詳しく取り上げたので、時間があればご一読願いたい。

もう一つの注目点は朝鮮半島の南北対話の進展だ。筆者は南北閣僚級会談の実現を驚かないが、成果については懐疑的である。北朝鮮のこの種の微笑作戦はこれが初めてではない。成功することを祈っているが、決して長続きしないだろう。理由は北朝鮮の真の意図が核問題の解決ではないからだ。

五輪と核開発は次元の異なる問題、核開発が戦略問題であるのに対し、五輪はあくまで戦術問題である。経済制裁が効き始めている現在北朝鮮は、是が非でも五輪を開催したい韓国の足許を見ている。核開発を断念することなく、米韓関係に楔を打ち込みつつ、政治的、経済的に利益を最大化したいのだ。

そうであれば、オリンピック、パラリンピックの終了後、全て元へ戻る可能性が高い。北は取れるものを取ったら、核兵器開発の完成に向け必要な実験を再開するだろうし、米国は対話が動かなくなった段階で種々の軍事演習を再開するからだ。仮に南北首脳会談を開いても、成果は戦術的なものとなろう。

〇欧州・ロシア
今週の欧州は外交のオンパレードだ。17日に安倍首相が東欧歴訪を終えて帰国する。同日、オーストリア首相がドイツを訪問しメルケル首相と首脳会談を行い、スペインのカタルーニャ州では新州議会が第一回会合を開く。17-18日にはクロアチア大統領がボスニアを訪問、18日には英仏首脳会談が開かれる・・・といった具合だ。
どれもルティーンの会合だが、新味があるとすれば20日にローザンヌで国際オリンピック委員会が南北朝鮮の代表と会合し、平昌への北朝鮮参加について話し合うことぐらいだろう。それにしても最近の韓国の前のめりは如何なものか?どうせ五輪が終わったら全てが元へ戻るだろうに・・・。

〇東アジア・大洋州
今回の北の目的は、①核兵器開発の継続、②当座の経済的利益の獲得、③米韓、日米韓の連携に楔を打ち込むことで、④戦略的生き残りの道を探ることだ。これに対し、韓国は外交安全保障政策よりも、国内政治上の利益を最大化しようとしているように思える。
具体的には、五輪大会の成功裏の開催、(中止に追い込まれれば、現政権への信頼は低下)、北との対話の再開だろう。対話を始めることで、核問題の解決に繋げたいのだろうが、北朝鮮は恐らくそう考えていない。されば、この対話が核問題の解決に繋がるとは到底思えない。

〇中東・アフリカ
14日からイラク議会が予算と選挙に関する審議を開始する。19日から米副大統領がエジプト、ヨルダン、イスラエルを訪問するが、トランプ政権のエルサレム首都認定で和平プロセスどころではないだろう。ペンス副大統領もご苦労様としか言いようがない。

〇南北アメリカ
15日に米加が共催で北朝鮮問題に関する国際会議を開くが、本当に大丈夫なのだろうか。韓国が前のめりで、北朝鮮がイニシャティブを採っている段階で、こんな国際会議を開いても、国際社会の不協和音が顕在化する恐れはないのか。米国がトランプ政権内の意見の相違を表面化させなければ良いのだが・・・。

〇インド亜大陸
15日にロシアのステルス型フリゲート艦4隻の対インド売却に関する交渉がインドで開かれる。17日にはインドの沿岸警備隊が日本の海上保安庁とインド洋で捜索救難訓練を実施する。今週はこのくらいにしておこう。

9-15日 対日理解促進交流プログラム・米国の若手研究者らを招へい(東京・熊本)
9-16日 対日理解促進交流プログラム・米国及びカナダ大学生などを招へい
9-18日 対日理解促進交流プログラム・韓国水原市大学生らが訪問(静岡県)
10-18日 対日理解促進交流プログラム・ソロモン、パプアニューギニア、フィジーの大学生らが訪日
10-18日 第2回ビエンチャンモーターショー(ミャンマー)
11-18日 河野外務大臣がミャンマー、アラブ首長国連邦及びカナダを訪問
12-17日 安倍首相がバルト3国と東欧(ブルガリア、セルビア、ルーマニア)歴訪
13-28日 北米国際オートショー(デトロイト)
14-15日 国際農業開発基金(IFAD)総務会第41回会合(ローマ)
14-16日 イスラエル・ネタニヤフ首相がインドを訪問
15日 安倍首相がセルビアを訪問、ブチッチ大統領と首脳会談(ベオグラード)
15日 北朝鮮の平昌冬季五輪参加に関連した南北実務会談(板門店)
15日 キング牧師生誕記念日で米市場休場
15-16日 アジア金融フォーラム(香港)
15-16日 日・エチオピア投資協定交渉第1回会合(エチオピア・アディスアベバ)
15-18日 フランシスコ法王がチリを訪問
15-18日 欧州議会本会議(ストラスブルグ)
15-18日 香港ファッション・ウィーク(秋/冬)(香港)
15-20日 中根外務副大臣がスペイン、イタリア及びアイルランドを訪問
15-2月2日 子どもの権利委員会 第77回会合(ジュネーブ)
16日 北朝鮮核問題に関する外相級会合(カナダ・バンクーバー)
16日 米・トランプ大統領とカザフスタン・ナザルバエフ大統領が首脳会談(ワシントン)
16日 芥川・直木賞発表
16-23日 対日理解促進交流・日本文化交流及び若手産業関係者交流をテーマにカンボジアとベトナムの大学生及び社会人が訪日
16-23日 対日理解促進交流プログラム・空手を学ぶ米国人大学生らが訪日
17日 阪神大震災から23年
17日 スペイン・カタルーニャ自治州新議会招集
17日 EU統計局が12月消費者物価指数(CPI)発表
17日 米地区連銀景況報告(ベージュブック)(FRB)
17日 イプシロンロケット3号機(高性能小型レーダ衛星)打ち上げ(内之浦宇宙空間観測所)
17-18日 中央アジア・コーカサス地域公館エネルギー・鉱物資源担当官会議を開催(イスタンブール)
17-18日 外務省と自治体共催・駐日各国外交団の富山県富山市及び石川県金沢市視察ツアー実施
17-18日 第531回EU経済社会評議会(EESC)本会議(ブリュッセル)
17-18日 クロアチア・グラバル=キタロビッチ大統領がボスニア・ヘルツェゴビナを訪問
18日 豪・ターンブル首相が来日、安倍首相と首脳会談(東京)
18-21日 フランシスコ法王がペルーを訪問
18-21日 二階自民党幹事長が特使としてインドネシアを訪問(ジャカルタ)
19日 長征11(吉林一号2機など)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
19-23日 米・ペンス副大統領がエジプト、ヨルダン、イスラエルを歴訪
20日 米・トランプ政権発足から1年
20日 エジプト・シシ大統領と米・ペンス副大統領が会談(カイロ)
20日 日・インドネシア国交樹立60周年式典、二階自民党幹事長らが出席(ジャカルタ)

【来週の予定】
22日 ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)(ブリュッセル)
22日 欧州外相理事会(ブリュッセル)
22日か23日 ロシア・17年鉱工業生産指数発表
22-23日 米・ペンス副大統領がイスラエルを訪問
22-25日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
22-26日 UNDP /UNFPA /UNOPS執行理事会 第一定例会合(ニューヨーク)
22-27日 世界保健機関(WHO)執行理事会 第142回会合(ジュネーブ)
22-3月30日 ジュネーブ軍縮会議(CD) 第1会期(ジュネーブ)
23日 欧州経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
23日 第90回米アカデミー賞ノミネート作品発表
23-26日 第48回世界経済フォーラム年次総会(スイス・ダボス)
23-28日 北米自由貿易協定(NAFTA)第6回再交渉会合(カナダ・モントリオール)
24-26日 軍縮問題諮問委員会 第69回会合(ジュネーブ)
25日 外務省が「平成29年度地方連携フォーラム」を開催(三田共用会議所)
25日 欧州中央銀行(ECB)定例理事会(フランクフルト)
26日 インド共和国記念日
26日 米・17年第4四半期および年間GDP(速報値)発表
26日 アリアン5ECA(通信衛星SESなど)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
26-27日 チェコ大統領選挙(決選投票)
27日 ホンジュラス大統領就任式(テグシガルパ)
28日 フィンランド大統領選挙
28-2月3日 グスタフソン国連食糧農業機関(FAO)事務局次長が訪日

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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