外交・安保カレンダー(12月18-24日)

先週はワシントンに出張して来た。本年6月に続き、キヤノングローバル戦略研究所が米国シンクタンク「スティムソン・センター」と共催でシンポジウムを開催したのだ。日本側研究者が複数の米論客と議論するこのシリーズは今回が4回目だが、毎回筆者のこだわりは日米で「日米関係以外の問題」を議論すること。今回のテーマは「トランプ外交一年を振り返る」だった。

筆者は「日米関係者の、日米関係者による、日米関係者のため」の会合などにあまり関心はない。この種の会合は「日米関係で喰っている人々」にお任せすれば良いとすら思っている。日米関係は大事だが、グローバルに見れば、欧州・中東・アジアという3戦域に対する米外交の優先順位を知る方が大事だ。

シンポジウムの概要は別途書いたのでここでは省略し、今回はワシントンの一般的印象を書こう。今回は珍しく、トランプ政権の関係者にも挨拶してきた。彼らは異質の人々だから通常のルートではアポイントなど取れそうもないと諦めていたのだが、今回はひょんなことからアポが取れた。実に幸運だった。

結論から言えば、対東アジア外交に関する限り、マクマスターNSC担当補佐官以下の国家安全保障会議スタッフが、前評判通り、非常に機能する実務能力を持つチームであることを確認できたということだ。長いトンネルの中で「光が見えた」ということか、日本にとってはまことに得難い存在ではある。

もう一人、名前は言わないが、某有力紙コラムニストで25年来の友人にも会えた。国際ベストセラー作家となった彼との友情が確認できたことは有難かった。経済の分野で続くグローバリゼーションと、政治レベルでのナショナリズム・ポピュリズムが衝突する時代になったという点で意見は図らずも一致した。

果たして「歴史は終わった」のか、「文明の衝突」は起きたのか、本当に「世界はフラット」なのか等についていずれ書く必要があるという点でも一致した。なるほど、米国でも似たようなことを考えている人はいるのだ。この点については日米欧でもっと議論を深める必要があるのではなかろうか。

〇欧州・ロシア
18日にオーストリアで中道右派の国民党と極右の自由党による連立政権が発足する。首相は国民党の若い党首だが、外相、国防相、内務相の主要ポストは自由党が獲得しそうだ。この国の極右は難民受け入れに強硬に反対でロシア寄りとされるが、こうして彼らが政権入りした以上、オーストリアとEUとの関係が気になるところだ。
気になるといえば、21日にスペイン・カタルーニャ地方で行われる選挙にも関心がある。20日にはドイツのキリスト教民主同盟など連立与党と社会民主党との連立協議は再び行われる。更に、22日からは統一ロシア党が来年の大統領選挙を前に党大会を開くそうだ。プーチン大統領支持を打ち出す出来レースとなるのだろうか。

〇東アジア・大洋州 
18日から中朝国境にある「友好橋」の「修理」が終わり再開されるという。丹東にあるこの橋が「修理のため」閉鎖されるなんて、ちょっと考えられない。中国側では北朝鮮との関係凍結などが喧伝されたが、要するに今回も完全な関係凍結には至っていなかったということか。別に驚かないが・・・。
19日から韓国外相が訪日する。1970年代の学生時代に訪韓した筆者は当時、「いずれ日韓外相が英語で話し合う時代は来るだろう」と直感したが、そういう時代がようやく近づきつつある。しかし、いつも思うことだが、時代は変わったが、韓国内政が相変わらずなのは仕方のないことなのか。

〇南北アメリカ
今回ワシントンで最も驚いたのは政治家のセクハラ疑惑がワシントン以外にも更に拡大しつつあることだ。日本でも実態は同じはずだが・・・。アラバマ州上院議員特別選挙で疑惑の共和党候補が惜敗し、上院の民主・共和議席数は51対49となった。但し、これでトランプ氏が直ちに窮地に陥るとは思わない。
ワシントンのもう一つの話題は共和党の減税法案で、法人税が大幅に引き下げられるという。トランプ政権と共和党指導部はクリスマス前に同法案を成立させたいようだ。しかしこうなると、マケイン上院議員など病気療養中の議員が二人もいる共和党は大変。若い議会スタッフとも会えたが、ご苦労様ですね。

〇中東・アフリカ 
米副大統領が19日から3日間、エジプト、イスラエルを訪問する。米国がエルサレムをイスラエルの首都と認定してから初めてとなるが、何か前向きな期待を持つのは難しい。イスラエルとの協調を確認する一方、アラブ諸国との関係修復を図るというが、そんなこと出来る筈はない。辛い旅になるだろう。

〇インド亜大陸
18日にパキスタンが中国との「経済回廊」の長期計画を明らかにするという。20-21日には中印国境協議が開かれる。先週の露印外相会談に続き、23日にはロシア副首相が訪印する。来週は本年第52号、あっという間に年末となった。今週はこのくらいにしておこう。

10-18日 JENESYS2017の一環及び日中国交正常化45周年記念事業で、香港・澳門高校生が訪日
12-20日 対日理解促進交流プログラム・日本の大学生らが韓国を訪問
14-21日 対日理解促進交流プログラム「カケハシ・プロジェクト」日系米国人一行が訪日
16-20日 南ア与党アフリカ民族会議(ANC)党大会・総裁選
17-25日 佐藤外務副大臣がモロッコ、南スーダン及びアルジェリアを訪問
18日 EU統計局が11月CPI発表
18日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ブリュッセル)
18日 山田ブラジル大使と高瀬メキシコ大使による任国治安情勢講演会の開催(東京)
18日 北方四島における共同経済活動に関する局長級作業部会の開催(モスクワ)
18-19日 フランス・ルメール経済・財務相がロシアを訪問
18-19日 日・ヨルダン投資協定交渉第2回会合の開催(東京)
18-20日 日・ナイジェリア投資協定交渉第1回会合の開催(東京)
18-22日 UNCITRAL(国連国際商取引法委員会)第52回ワーキンググループV(倒産法)(ウィーン)
19日 EU環境相理事会(ブリュッセル)
19日 米・7-9月期経常収支(商務省)
19-20日 康京和韓国外交部長官が訪日し、河野外務大臣との日韓外相会談
19-20日 日中犯罪人引渡条約締結交渉第4回会合の開催(北京)
19-22日 平成29年度中南米大使会議の開催(東京)
19-23日 米・ペンス副大統領がエジプト、イスラエル、ドイツを歴訪
20日 メキシコ10月小売・卸売販売指数発表
20日 ジャパン・ハウス ロサンゼルスの一部を先行して開館
20日 外務省が「海外への徳島県の魅力発信」をテーマに「車座ふるさとトーク」を開催(徳島県・北島町立図書館)
20日 米・ペンス副大統領がエジプト大統領と会談
21日 スペイン・カタルーニャ州議会選
21日 米国第3四半期GDP(確定値)発表
21日 米・ペンス副大統領がイスラエル首相と会談(エルサレム)
21日か22日 ロシア1-10月貿易統計発表
21-22日 シリア和平協議(カザフスタン・アスタナ)
22日 メキシコ11月雇用統計発表
22日 英・ジョンソン外相がロシア・モスクワを訪問
22日か25日 ロシア11月雇用統計発表
23日 ファルコン9(イリジウム・ネクスト10機)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
23日 H-IIAロケット37号機(気候変動観測衛星「しきさい」等)打ち上げ(種子島宇宙センター)
23日 長征2D(陸地探査衛星2号)打ち上げ(甘粛省酒泉衛星発射センター)

<25日-31日>
25日 クリスマス(米国休場=為替、債券、株式、商品市場)
25日 長征2D(高景一号03/04)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
26日 ゼニート(アンゴラの通信衛星)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
26日 長征11(科学教育衛星 淮安号恩来星)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
27日 メキシコ11月貿易統計発表
28日 SS-520 5号機(超小型衛星TRICOM-1R)打ち上げ(鹿児島・内之浦宇宙空間観測所)
29日 ブラジル11月全国家計サンプル調査発表
12月中 中国中央経済工作会議(北京)
12月中旬 インド10月鉱工業生産指数発表

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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