外交・安保カレンダー(11月13-19日)

ようやくトランプ氏のアジア歴訪が終わるが、事前の懸念は杞憂だった。先週一週間、トランプ氏は日本だけでなく、韓国、中国でも安全運転に徹した。政策スピーチはもちろん、共同記者会見でも用意されたテキストから逸脱することはなかった。これが本当のトランプ氏かって?そんなはずはないだろう。

案の定、先週末あたりから以前の「トランプ節」が戻ってきた。日曜日にはハノイで、ロシアゲートの捜査を求める人々を「haters and fools」と罵り、「crooked Hillary」の対ロシア関係発言をあざ笑い、トランプ氏を「lunatic old man」と呼んだ金正恩を「私はshort and fatとは呼ばなかった」と嘯いた。

要するに、統治モードのトランプ氏は一週間しか続かなかったのだが、むしろ、よくぞ一週間も続いたと賞賛すべきなのかもしれない。歴訪開始前の11月2日、マクマスターNSC担当補佐官は「大統領は自ら望む言葉を使うだろうが、そのレトリックは同盟国・友好国に大いに安心を与えるものだ」と述べた。

それだけではない。日曜日にホワイトハウスのジョーンズ首席補佐官は、「大統領のツイートに関心は払っていないし、ホワイトハウスのスタッフにも、そうしたツイートに影響されることは認めない」と述べたそうだ。えっ、それって本当なのか。これが米国大統領府スタッフの責任者の発言なのか。

更に、同補佐官はこう言った。「ツイートはツイートだ。しかし、歴訪の準備でスタッフの仕事をやり、大統領を準備完了とし、各地で大統領をブリーフし、次の日程の説明を行うのは我々である。(大統領の)ツイートが自分の生活を左右するのではない、左右するのは良いスタッフの仕事(の出来)である。」

これほど米国の大統領を軽んじた発言はないと思うのだが、トランプ氏はこれについて文句を言っていない。だとすれば、今回のアジア歴訪の機会にトランプ政権内部の外交政策立案・実施について、漸く「一定のルール」が出来つつある、ということなのかもしれない。

もしこれが事実であれば、トランプ政権では、大統領が国内政治上の配慮から、良く言えば自由に、悪く言えば勝手に、ツイートすることは仕方がないが、基本的政策はNSCなど事務方が作成し、それを粛々と実施していくことを、大統領自身が了解している、ということか。そうであれば、一定の前進である。

〇欧州・ロシア
13日からカタロニアの各政党は12月21日の地域議会選挙の候補者名簿作成するが、17日には事実上ベルギーに「亡命」しているカタロニア前大統領に対するスペイン政府の逮捕状失効についてベルギーで公聴会が開かれる。14日には英下院がEU離脱法案の議論を開始する。
16日には仏の労組団体がマクロン大統領の労働関係改革に反対する抗議運動を行う。こう見るだけでも、欧州には問題が山積している。ロシアがこの間隙を突いて、対露経済制裁を解除させようとする気持ちも分からないではない。ロシアの力は明らかに低下しているが、それでも欧州各国にチョッカイを出すことはできるのだ。

〇東アジア・大洋州 
13日から第31回目のASEAN首脳会議が開かれるが、同日から22日までASEAN諸国はタイ湾で合同海軍演習を行う。13-14日にはフィリピンで開催される東アジア首脳会議の機会に、日米豪印の四カ国が首脳会議を開催する。また、14日には11日に始まった米空母三隻による演習が終了する。

〇南北アメリカ
17日から21日までメキシコでNAFTA関連交渉が再開される。トランプ氏は再交渉を主張するが、そんなこと、カナダとメキシコには認め難いだろう。トランプ氏はどんな「落とし方」を考えているのか。両国が簡単に再交渉で大幅譲歩などするだろうか。筆者ならトランプ氏のやり方を絶対に認めないだろう。

〇中東・アフリカ 
11日にEU代表団がイランを訪問する。米トランプ政権が対イラン経済制裁を強めているだけに、EUとの話し合いはイランにとって重要だ。13日からはトルコ大統領がロシア、クウェートとカタルを訪問する。これはシリアがらみの動きといって良い。エルドアン大統領が考えるシリア問題の出口は一体何だろう。

〇インド亜大陸
13日から4週間、インドとバングラデシュがインドで対テロ合同訓練を行う。14日からはインドとEUが長年の懸案となっているFTA締結について議論するという。今週はこのくらいにしておこう。

10月23-11月22日 第14期第4回ベトナム国会
10月30-11月14日 第39回ユネスコ(UNESCO)総会(パリ)
10月30-11月17日 第212回国際民間航空機関(ICAO)理事会(モントリオール)
10月31-11月17日 第120回国際麻薬統制委員会(ウィーン)
6-14日 対日理解促進交流プログラム・地域医療や看護を学ぶ韓国大学生を招へい
6-17日 国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23)(ドイツ・ボン)
7-15日 対日理解促進交流プログラム・2017年度中国高校生訪日団が訪日
8-15日 韓国・文大統領がインドネシア、ベトナム、フィリピンを訪問
9-15日 対日理解促進交流プログラム・韓国青少年団訪日団が訪日
9-16日 佐藤外務副大臣がエチオピア、ジブチ、セネガル及びコートジボワールを訪問
10-14日 第31回ASEAN首脳会議(フィリピン・クラーク)
12-14日 米・トランプ大統領がフィリピンを訪問
12-16日 薗浦内閣総理大臣補佐官がイスラエル、パレスチナ、ヨルダン及びフィリピンを訪問
13日 ソマリア大統領選挙
13日 EU外相理事会(ブリュッセル)
13-15日 第49回包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)second regular session(ウィーン)
13-16日 欧州議会本会議(ストラスブール)
13-17日 シンガポール・フィンテック・フェスティバル
13-17日 国連世界食糧計画(WFP)執行理事会(ローマ)
14日 中国10月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 ブラジル9月月間小売り調査発表
14日 国連人権理事会で対日審査(ジュネーブ)
14日 東アジアサミット(マニラ)
14日 10月中国鉱工業生産と小売売上高の発表(国家統計局)
14日 デルタ2(米次世代気象観測衛星JPSS)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
14-15日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
14-21日 対日理解促進交流プログラム・ベトナム及びガンボジアの学生らが来日
14-27日 インド国際見本市「India International Trade Fair」(ニューデリー)
15日 米・ティラーソン国務長官がミャンマーを訪問
15日 米国10月消費者物価指数(CPI)及び小売売上高統計発表
15日 長征4C(気象衛星 風雲三号04)打ち上げ(山西省太原衛星発射センター)
16日 EU外相理事会(ブリュッセル)
16日 EU統計局(ユーロスタット)が10月CPI発表
16-17日 国連訓練・調査研究所(UNITAR)第55回理事会(ジュネーブ)
16日か17日 ロシア1-10月鉱工業生産指数発表
17日 EU経済・財務省理事会(ブリュッセル)
17-21日 NAFTA再交渉第5回会合開幕(メキシコ市)
17日 インド9月鉱工業生産指数発表
19日 チリ大統領・国会議員選挙
19日 福島市長選挙

【来週の予定】
20-21日 アジア欧州会議(ASEM)外相会合(ミャンマー)
20-23日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
20-24日 国連人権理事会第21回アフリカ系子孫に関する国連専門家作業部会(ジュネーブ)
20-24日 国連人権理事会第80回恣意的拘禁に関する作業部会(ジュネーブ)
21日 長征6(地球観測衛星 吉林一号3機)打ち上げ(山西省太原衛星発射センター)
23-24日 国際原子力機関(IAEA)理事会(ウィーン)
25日 長征3B(航法測位衛星第三世代北斗2機)打ち上げ(四川省西昌衛星発射センター)             
22日 英国秋季予算案発表
22日か23日 FOMC議事要旨発表
22日か23日 ロシア1-9月貿易統計発表
23日 米・感謝祭(外為、債権、株式、商品市場が休場)
23日 メキシコ9月小売・卸売販売指数発表
23日か24日 ロシア10月雇用統計発表
24日 EU東方パートナーシップ首脳会議(ブリュッセル)
24日 メキシコ第3四半期GDP発表
26日 ネパール新憲法下で初の議会選挙
26日 ホンジュラス大統領・国会議員・中米議会議員・市長選挙
26日 外務省が「第3回ユース非核特使フォーラム」を開催(広島市)
26日 自動車F1アブダビGP決勝(アブダビ)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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