外交・安保カレンダー(10月16-22日)

日本の総選挙以外で今週の最大関心事は、18日から始まる中国共産党の第19次全国代表大会、いわゆる党大会だろう。最近の党大会は5年に一度の開催で会期は数日間だろう。その後、新しい中央委員会の第一次全体会議(1中全会と呼ばれる)が開かれ、習近平総書記の二期目の指導部人事が決まる予定だ。

中国共産党の党員数は8900万人といわれ、党大会に出席する代表だけで2287人もいる。彼らが党規約を改定し中央委員を選ぶのだが、総書記等の最高指導部の選出は党大会ではなく1中全会であり、恐らくその概要は既に決まっているだろう。5年に一度のお祭りだから、ありとあらゆるゴシップが流れている。

習近平氏の再選は間違いなく、噂の対象は中央委員が選ぶ25人程度の政治局員、更にはその中から選ばれる政治局常務委員の人数と陣容だ。15年前、北京の日本大使館にいた頃は、誰が昇進するか、失脚するか、一つ一つの噂話に振り回されたものだが、この歳になるとあまり細かいことは気にならない。

誰がなるにせよ、習近平氏の権力は絶大であり、大きな流れは変わらない。むしろ問題は、こんなことをいつまで続けるのか、いつまで共産党の「指導」という名の独裁システムが「持つ」のかである。エジプト、イラク、中国という独裁国家に住んだ筆者の経験では、独裁システムは簡単には崩壊しない。

それよりも、個人的に懸念しているのはイラクだ。せっかくモスルからイスラム国の残党を掃討したのに、やはり恐れていたことが起きた。先日のイラク・クルド自治区住民投票での「独立派」圧倒的勝利を受け、イラク中央政府がキルクークに進軍し、一部の産業施設や空軍基地を制圧したという。

キルクークといえば、イラク北部の原油生産の拠点であり、クルド勢力の軍事組織ペシュメルガが実効支配してきた戦略的要衝だ。これを中央政府の正規軍が奪還しつつあるとなれば、これは新たな内戦の始まりを暗示する恐ろしい事態。イラクの安定を望む米国にとっては新たな頭痛の種となるだろう。


 
〇欧州・ロシア
欧州でも恐れていた事態が起きた。15日のオーストリア下院総選挙で、難民・移民受け入れに厳格な中道右派の国民党が勝利し、極右の自由党も躍進したという。国民党のクルツ党首は自由党との連立の可能性を示唆したが、政策を「右旋回」させた国民党の勝利により同国内政の右傾化が鮮明となった。決して良い兆候ではない。
一方スペインではカタルーニャ自治州の「独立宣言」についてまだ揉めている。中央政府は19日午前10時までに独立宣言を撤回しない場合、憲法が定める手続きに入ると警告した。同国憲法は自治州が違憲行為に出た場合、中央政府は直轄統治を始める構えだが、そこはスペインだから、ガチンコなしで解決することを祈ろう。
それにしても、欧州は何たる惨状か。今週はロンドンからルーマニアのブカレストとウクライナのキエフへ出張する予定だが、国によって状況は違うので、どれが欧州全体の潮流で、どれが各国特有の現象かを見極めることが重要だと思っている。来週は欧州の話をメインに書きたい。

〇東アジア・大洋州 
16日から米韓両軍が共同訓練を始めた。17日から本格的な演習が始まり、韓国側報道では、北朝鮮特殊部隊への対処、北朝鮮指導部を襲撃する「斬首作戦」を担う米特殊部隊も参加、日米韓イージス艦によるミサイル追跡訓練、朝鮮半島有事等を想定した米軍家族など非戦闘員の退避訓練も行うという。
先々週、「10月10日の党創建記念日前後にミサイル発射の可能性は50%」と言った専門家がいたが、16日現在、何も起きていない。18日の中国共産党党大会に合わせて発射するという説もあるが、皆さんはどう思われるか。筆者は「発射しない可能性も50%」だと言いたい。要するに、「当たるも八卦・・」である。

〇南北アメリカ
米国の有名アダルト雑誌のオーナーがワシントンポスト紙日曜版に全面広告を出稿し、「ドナルド・トランプの弾劾につながる情報の提供者に賞金一千万ドルを与える」と宣言したそうだ。ポルノ雑誌の帝王がトランプの足を引っ張ろうとしている。何かの冗談だろうと思ったが、件のオーナー氏は本気らしい。
「根拠のないデタラメな情報を拡散し続けている」、「近親者を不正に政府の重要ポジションにつけている」、「自身のビジネスの拡大のため米国政府を誤った方向へ導こうとしている」などが理由だそうだ。それ自体は間違っていない。やはり米国内政の劣化は危機的状況に達しつつあるのかもしれない。

〇中東・アフリカ 
イラク・キルクーク以外で気になるのはフィリピンのミンダナオ情勢だ。何故ミンダナオかって?ミンダナオ島で続くイスラム過激派と政府軍の戦闘で、過激派組織「アブサヤフ」のリーダーらが殺害されたからだ。アブサヤフはイスラム国に忠誠を誓った組織の一つ、生き残った戦闘員はどこへ行くのか。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

9-20日 国連人権理事会第15回ダーバン宣言と行動計画の効果的な実施に関する政府間作業部会(ジュネーブ)
9-27日 万国郵便連合管理理事会(ベルン)
12-18日 JENESYS2017で韓国青少年訪日第1-2団が訪日
15-22日 JENESYS2017及び日中国交正常化45周年記念事業として、中国社会科学院青年研究者代表団第2陣が訪日
16日 日米経済対話(ワシントン)
16日 法王が国連食糧農業機構(FAO)本部を訪問(ローマ)
16日 EU外相理事会(ルクセンブルク)
16日 ロシア国防相がイスラエルを訪問
16日 9月中国消費者物価指数(CPI)卸売物価指数(PPI)を発表(国家統計局)
16日か17日 ロシア1-9月鉱工業生産指数を発表
16-17日 米・サリバン国務副長官が訪日
16-19日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
16-26日 国際原子力機関(IAEA)の海洋モニタリング専門家が訪日
16-11/10日 第121回自由権規約人権委員会(ジュネーブ)
17日 日米外務次官協議(東京)
17日 ユーロスタットが9月CPI発表
17日 EU競争担当相理事会(ルクセンブルク)
17日 EU一般問題理事会(ルクセンブルク)
17日 インド8月鉱工業生産指数発表
17日 米・トランプ大統領がギリシャ・チプラス首相と会談(ワシントン)
17日 NAFTA再交渉第4回会合閉幕(ワシントン)
17-18日 杉山外務事務次官が日米韓次官協議に出席するため韓国ソウルを訪問
17-25日 JENESYS2.0及び日中国交正常化45周年記念事業に、2017年度中国高校生訪日団第2陣が訪日
17-28日 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)第20回交渉会合が開催(インチョン)
18日 中国共産党第19回全国代表大会開会(北京)
18か19日 米地区連銀景況報告(ベージュブック)(FRB)
18-20日 スペイン・マラガ市で第19回日本・スペイン・シンポジウムが開催
18-21日 第12回ベトナム国際木工展示会「Vietnamwood 2017」(ホーチミン)
18-26日「日蘭平和交流事業の開催」で元抑留民間オランダ人を招へい
19日 中国第3四半期マクロ経済統計(GDP、CPI、固定資産投資、社会消費品小売総額など)発表
19-20日 欧州理事会(ブリュッセル)
19-21日 APEC財務相会合(ベトナム・ホイアン)
20日 メキシコ9月雇用統計発表
20-21日 チェコ下院選挙
20日か23日 ロシア1-8月貿易統計発表
22日 第48回衆議院議員総選挙
22日 スロベニア大統領選挙
22日 自動車・F1米国GP決勝(米テキサス州オースティン)
22-25日 ベルギー経済使節団がコートジボワールを公式訪問

【来週の予定】
23日 雇用、社会政策、健康及び消費経済審議会(ルクセンブルク)
23日か24日 ロシア9月雇用統計発表
23-24日 ASEAN国防相会議(ADMMプラス)(フィリピン)
23-26日 欧州議会本会議(ストラスブール)
23日-11月22日 第14期第4回ベトナム国会
24日 ギリシャ外相がトルコを訪問(アンカラ)
24日 交通、電話会社、エネルギー委員会(ルクセンブルク)
24-25日 ブラジル中央銀行、金融政策委員会(Copom)
25日 メキシコ8月小売・卸売販売指数発表
26日 ケニア大統領選再投票(予定)
26日 メキシコ9月貿易統計発表
26日 セミナー「日EU経済連携協定(EPA):今後の展望」(ブリュッセル)
26日 欧州中央銀行(ECB)定例理事会(独フランクフルト)
26日 タイ・ラーマ9世前国王の火葬(バンコク)
26-27日 WTO一般理事会(ジュネーブ)
26-11月9日 第331回国際労働機関(ILO)理事会及びその委員会(ジュネーブ)
27日 米国第3四半期GDP(速報値)発表
27日 ロシア中央銀行理事会
28日 アイスランド議会選挙
28日- プロ野球日本シリーズ
29日 アルゼンチン上・下院選挙
29日 欧州各国が冬時間入り
29日 長野・山口市長選挙
29-31日 APEC林業担当相会合(韓国・ソウル)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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