外交・安保カレンダー(8月28日-9月3日)

9月1日にイスラム教の「犠牲祭(Eidul-Adha)」が始まる。イブラヒーム(アブラハム)が息子イスマイール(イシュマエル)を神への犠牲として捧げたことを記念する祝日だ。ヒジュラ暦12月10日から4日間続くが、同日はメッカ巡礼の最終日に当たる。多くのイスラム教徒は動物を生贄として捧げるという。

直前の8月27日、イラク軍は北西部タルアファルを「イスラム国」(IS)から奪還したと発表した。モスルを解放したのは7月だから、約一カ月でモスルからシリア国境へ抜ける中継地タルアファルまで来たことになる。米軍の支援を受けているとはいえ、イラク軍も漸く「軍隊らしく」なってきたということか。

外電によれば、掃討作戦開始時にタルアファル市街地にはIS戦闘員が最大2千人いたそうだが、彼らは疲弊していたようで、強い抵抗はなかったという。しかし、これでISが壊滅するとは到底思えない。残党はシリアに流れISの本体に合流するだろうから、シリアではまだ当分戦闘が続くだろう。

ISも重要だが、先週筆者が最も興味を持ったニュースは、8月22日、トランプ政権が人権侵害や北朝鮮との不適切な関係を理由に対エジプト援助の減額と一部延期を決定したのに対し、エジプト外務省がこれに強く反発したという記事だった。トランプ外交のお粗末さは別に今始まったことではないのだが・・・。

〇欧州・ロシア
欧州の長い夏休暇が終わり、今週からヨーロッパ人は仕事に復帰するようだ。28日には英国のEU離脱交渉が再開され、ロシア大統領がハンガリーを訪問、29日にはフィンランド大統領が訪米し、31日にはマクロン仏大統領がオランダ首相と会談する。
一方、27日の世論調査によると、マクロン大統領の仕事ぶりに不満を持つ有権者は7月の43%から57%に上昇、肯定的な評価も14%ポイント下がって40%となり、同大統領への支持が急速に下がっている。大統領は労働市場改革で議会と、予算削減では軍幹部とそれぞれ対立が深まっており、逆風が吹いたようだ。

〇東アジア・大洋州 
28日、韓国の国家情報院は、北朝鮮の豊渓里(プンゲリ)にある核実験場の坑道で「核実験の準備が完了した」と国会に報告したという。北朝鮮は昨年も建国記念日の9月9日に5回目の核実験を実施。韓国当局は、今年も強行するのではと警戒しているそうだ。毎度のことながら、誠にご苦労様である。
それにしても、短距離ミサイル発射は金正恩政権のジレンマの表れか、米国への過度の刺激を回避したのか、それとも「先軍節」に合わせた国威発揚なのか。米国を必要以上に刺激することは避けたいとの思いと、「先軍節」で何もしない訳にはいかないという国内事情があるのか、などと毎回毎回一喜一憂するのは如何なものか。北朝鮮ウォッチャーとは本当に大変なお仕事だと思う。

〇南北アメリカ
米南部テキサス州を襲った巨大ハリケーン「ハービー」は27日、熱帯低気圧となっていたが、テキサス州を中心に大洪水が発生し、米国第4の都市ヒューストン周辺で被害が拡大しているそうだ。この話を聞いて、12年前にニューオーリンズを襲ったハリケーン「カトリーナ」を思い出した。
当時は危機管理の失敗が政治問題化し、結局FEMA(連邦危機管理庁)の長官が更迭されたが、今回はどうか。トランプ政権の混乱ぶりが余りに酷いので、このくらいでは政治問題化しないということか。それとも、トランプ政権は意外に危機管理が上手なのか。筆者には良く分からない。

〇中東・アフリカ 
冒頭の対エジプト援助の続きだが、今回米国が供与中止・留保を決めた対エジプト援助の総額は約3億ドル。対外軍事融資は本年度分のうち6.6千万ドルを中止、昨年度分約2億ドルを留保。経済援助では昨年度分のうち3千万ドルを中止した。しかも、大統領の娘婿クシュナー顧問率いる米代表団のエジプト訪問直前に情報がリークされたのだから最悪のタイミングだ。
これに対し、エジプト政府は「長年の戦略的関係を正しく理解していないことを示す決定だ」と懸念を表明した。当然だろう。普通なら、米政府は国務省、国防省等あらゆるチャンネルを通じエジプト側に事前通報している筈だが、勿論トランプ政権にそんな芸当はできない。これではエジプトの面子丸潰れだ。

〇インド亜大陸
9月3日にスリランカが三週間にわたり軍事演習を実施する。興味深いことに、インドと中国がオブザーバーを派遣するのだそうだ。今週はこのくらいにしておこう。

18-30日 APEC第3回高級実務者会合(ベトナム・ホーチミン)
19-30日 第29回夏季ユニバーシアード競技大会(台北)
21-31日 国連包括的核実験禁止機関 準備委員会作業部会B及び非公式・専門家会議第49回会期(ウィーン)
27-29日 モラレス・グアテマラ外務大臣が訪日
28日 メキシコ7月貿易統計発表
28-29日 日伯経済合同委員会(ブラジル・クリチバ)
28-31日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
28日-9月1日 中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委(韓国・釜山)
28日-9月3日 柔道・世界選手権(ブダペスト)
28日-9月8日 北方四島から医師の受け入れ
29日 外務省等がセミナー「自由貿易の意義とEPAの役割〜中小企業の海外販路開拓と地域振興のために〜」を開催(新潟市)
29-30日 APEC第3回高級実務者会合(SOM3)(ベトナム・ホーチミン)
29-30日 国連ウィメン執行委員会(ニューヨーク)
30日 米国第2四半期GDP(改定値)発表
30-31日 中根外務副大臣がアジア・中南米協力フォーラム(FEALAC)第8回外相会合に出席(韓国・釜山)
30日-9月1日 英・メイ首相が訪日
31日 インド第1四半期GDP発表
31日 ブラジル7月全国家計サンプル調査発表
31日 ユーロスタットが7月失業率発表
31日 7月の米個人所得・支出発表(商務省)
31日 PSLV-XL(インド航法測位衛星IRNSS-1H)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
31日 ダイアナ英元妃死去から20年
31日 「中央アジア+日本」対話・第10回東京対話の開催
31-9月5日 サイン・マロ・パナマ副大統領兼外務大臣が訪日
9月1日 EU、掃除機に関する新たなエコデザイン要件とエネルギーラベル指令の適用開始
1日 米国8月雇用統計発表
1日 ブラジル第2四半期GDP発表
1日 アリアン5(インテルサット37eとBSAT 4a)の打ち上げ(仏領ギアナ基地)
2日 ウズベキスタン・カリモフ大統領死去から1年


<9月4-10日>
4日 レーバーデー(労働者の日)でニューヨーク市場休場
4-6日 国連世界観光機関(UNWTO)第22回総会(四川省・成都)
4-7日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
5日 ブラジル7月鉱工業生産指数発表
5日 国連世界観光機関(UNWTO)第106回執行理事会(四川省・成都)
5-6日 ブラジル中央銀行、金融政策委員会(Copom)
5日か6日 ロシア8月CPI発表
5-7日 第27回経済フォーラム(ポーランド・クリニツァ・ズドルイ)
5-11日 UNDP, UNFPA, UNOPS 執行理事会second regular session(ニューヨーク)
5-19日 国連行財政問題諮問委員会 fall session(ニューヨーク)
6-7日 東方経済フォーラム(ウラジオストク)
6日 ブラジル8月IPCA発表
6日 米国7月貿易統計発表
6-11日 フランシス法王がコロンビアを訪問
7日 ユーロスタットが第2四半期実質GDP成長率発表
7日 欧州中央銀行(ECB)定例理事会
8日 中国8月貿易統計発表
9日 中国8月CPI発表
9日 第74回ベネチア国際映画際授賞式
9日 国連世界観光機関(UNWTO)第107回執行理事会(四川省・成都)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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