外交・安保カレンダー(8月14-20日)

先週も米国のトランプ氏に世界が振り回された。8月5日に全会一致で採択された安保理決議第2371号は、先週申し上げた通り、従来の制裁措置を強化し、北朝鮮との間のヒト、モノ、カネの流れを更に厳しく規制する内容だった。勿論完璧ではないが、一定の前進には違いなかろう。

普通ならここで北朝鮮の出方を見るのが外交の定石だが、今の米政府には常識が通用しない。8月8日トランプ氏は、北朝鮮が米国をこれ以上脅かせば、北朝鮮は「世界がこれまで目にしたことのない炎と怒り(fire and fury)に直面する」と吠えた。恐らくアドリブの発言だろうが、何たることか。

より正確には、"They will be met with fire and fury like the world has never seen ... he has been very threatening beyond a normal state. They will be met with fire, fury and frankly power the likes of which this world has never seen before."と言ったらしい。おいおい、子供の喧嘩じゃあるまいし。

日本では以上が先週の最大関心事だったが、へそ曲がりの筆者の関心はちょっと違う。米国内の最大関心事はバージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義を掲げる団体と反対派の衝突事件だった。トランプ氏は12日、「各方面の憎悪、偏見、暴力」を非難したが、最後まで白人至上主義の秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)やネオナチを名指しで批判することはなかった。

これに対し、米国のネオナチグループはこうコメントした。Trump comments were good. He didn't attack us. He ... implied that there was hate...on both sides! ...Also refused to answer a question about White Nationalists supporting him. No condemnation at all. When asked to condemn, he just walked out of the room. Really, really good. これを日本語にしてみよう。皆さんはどう思うか。

「トランプのコメントは良かった。彼は我々を攻撃しなかった。双方に憎悪があると示唆した。・・・彼を支持する白人民族主義者に関する質問には答えなかった。非難は全くなかった。非難すべしと求められた時、彼は退席した。とても、とても良かった。」

これは米国なる国家のあり方そのものに関わる大問題だ。トランプ氏はやはり米国のダークサイドが生んだ政権である。ちなみに、この極右グループのウェブサイトは次の通りだ。一回見る価値はある。https://www.dailystormer.com/ 

〇欧州・ロシア
欧州大陸は今週も開店休業、完全にサマーバケーションモードだが、14-18日に英政府がEU離脱に関するポジションペーパーを公表する予定という。一方、17日には日露次官級協議がモスクワで開かれる。7日に河野外相がマニラでロシア外相と初めて会談し合意したというのだが、一体何を話すのだろうか。

〇東アジア・大洋州 
〇南北アメリカ
前述の8日のトランプ「炎と怒り」発言に対し、10日、北朝鮮中央通信(KCNA)は、同国が「弾道ミサイル4発を米領グアムに向け発射する計画を8月中旬までに策定する」と報じた。これを受け同日、トランプ氏は8日の「炎と怒り」発言について「厳しさが足りなかったかもしれない」と再び即興で述べた。
更にトランプ氏は、「北朝鮮がグアムに対して何かすれば、誰も見たことのないような事態が北朝鮮で起きるだろう」と再び警告した。また、先制攻撃を検討するかとの質問に対しては、「何が起きるかを見極める(We will see)」とだけ述べたという。
筆者のコメントは三つ。第一は、トランプ外交がやはり危険であること。トランプ氏が金正恩と同レベルでないことを祈るしかない。第二は、トランプ氏の警告は北朝鮮よりも中国に向けられたものであること。第三に、ホワイトハウスの内の軋轢は危機的状況にあり、ケリー新首席補佐官でも十分調整できていないらしいことだ。先が思いやられる。

〇中東・アフリカ 
15日にシリアの反政府勢力の「高級交渉委員会」がリヤドで会合を開く。16日にはイラクの裁判所が、キルクークの政府庁舎にクルドの旗を掲げることの是非について公聴会を開くという。一応イラクでは民主制度が動いているように見えるが、恐らく判断は「否」だろう。問題はその後のクルド側の対応だ。

〇インド亜大陸
15日のインド独立記念日に際し、中国人民解放軍の代表が五か所でインド側と会合を持つそうだ。今週はこのくらいにしておこう。

7月31日-8月18日 国際海底機構(ISA)第23回総会(ジャマイカ・キングストン)
7-21日 第99回全国高校野球選手権大会(甲子園球場)
12-20日 震災復興交流サッカー・ネパール代表チームを招へい(日中植林・植樹国際連帯事業)
13-15日 トゥルクメニスタン・メレドフ副首相兼外相がインドを訪問
13-18日 米・ペンス副大統領がコロンビア及びアルゼンチン、チリ、パナマを訪問
14日 中国7月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 中国・汪洋国務院副総理がネパールを訪問
14日 協商会議(西アフリカ5カ国の協力機構)理事会(トーゴ)
15日 韓国光復節
15日 ケニア大統領選挙公式結果発表(就任式は29日)
15日 米国7月小売売上高統計発表
15日 ブラジル6月月間小売り調査発表
15日 ファルコン9(スペースX社商用補給機12号機ドラゴン)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
15日か16日 ロシア1-7月鉱工業生産指数発表
16日 水銀の使用や輸出入を国際的に規制する「水俣条約」が発効
16日 7月の訪日外国人数発表(日本政府観光局)
16日 7月25, 26日開催分の米連邦公開市場委(FOMC)議事要旨(FRB)
16-20日 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉第1回会合(ワシントン)
17日 EU7月消費者物価指数(CPI)発表(EU統計局)
17-21日 フード・エキスポ(香港)
18日 アトラスV(データ中継衛生TDRS M)(ケープカナベル空軍基地)
18-30日 APEC第3回高級実務者会合(ベトナム・ホーチミン)
19-30日 第29回夏季ユニバーシアード競技大会(台北)

<8月21日-27日>
21日 約1世紀ぶりの全米横断皆既日食
21-24日 自動車部品関連展示会「アフトメカニカ」(モスクワ) 
21-31日 国連包括的核実験禁止機関 準備委員会作業部会B及び非公式・専門家会議第49回会期(ウィーン)
22日 メキシコ第2四半期GDP発表
23日 メキシコ6月小売・卸売販売指数発表
23日 ロシア第1四半期対内外直接投資統計発表
23日 アンゴラ大統領選挙・国民議会選挙
23日か24日 ロシア上半期貿易統計、7月雇用統計発表
23-26日 自動車部品関連展示会「インテルアフト」(モスクワ)
23-27日 ネパール・デウバ首相がインドを訪問
24-25日 フランス・マクロン大統領がルーマニア及びブルガリアを訪問
24-25日 第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)閣僚級フォローアップ会合(モザンビーク・マプト)
25日 メキシコ7月雇用統計発表
25日 タイ・インラック前首相に対する最高裁判決
25日 ファルコン9(地球観測衛星Formosat5およびSherpa小型衛星搭載機構)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
27日 茨城県知事選挙

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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