今週の朝鮮半島(7月15‐21日)

 今週は北朝鮮経済に関する楽観論と悲観論がほぼ同時に流れた。まずは、先週紹介した北朝鮮の干ばつに関するニュースの続報だ。FAO(Food and Agriculture Organization:国連食糧農業機関)は、今年の北朝鮮が2001年以来最悪の干ばつで、4月から6月の作物植え付け時期に降水量が十分でなかったため、2017年の穀物生産は昨年より3割以上減少すると推計しているそうだ。
(参考:http://www.fao.org/news/story/en/item/1025100/icode/

 この関連で、24日付の韓国聯合ニュースは、「中国の旅行会社によると今月末から8月まで開催予定だった「第2回平壌大同江ビール祝典」が突然中止になった」と報じた。「干ばつとの関係で中止になったのではないか」とする同旅行会社の憶測情報ではあるが、今後の情報に注目したい。
(参考:https://koryogroup.com/blog/pyongyang-beer-festival-2017-cancelled

 他方、これとはまるで対照的なのが、21日に韓国で発表された北朝鮮に関する二つの経済指標だ。一つ目は韓国銀行が発表した推計であり、昨年の北朝鮮のGDPは前年比で3.9%増加したという。もう一つは、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)が発表した北朝鮮の貿易動向に関する報告書で、昨年の北朝鮮の対外貿易規模は前年比4.7%増の65億5000万ドルと発表された。
 国連安保理の経済制裁が厳しくなったにもかかわらず、経済成長が前年のマイナスからプラス成長に転じたのはなぜか。恐らくは、制裁から除外された民生目的の対中石炭輸出などの伸びが下支えしているのだろう。元々経済規模の小さい北朝鮮が、経済制裁の影響をあまり受けることなく、着実に低成長ながらも経済を発展させている可能性は十分あるだろう。核・ミサイル開発と経済成長を同時に実現させる「並進路線」の成果が一定程度あるのかもしれない。

 今週、もう一つ気になったのが日韓関係だ。文在寅政権の対日政策の基本は安全保障・経済問題と歴史問題を分けて進める「ツートラック戦略」だった。日韓安保協力は、度重なる北朝鮮の軍事挑発に対抗すべく、日米韓の枠組みを中心に一歩ずつ実績を積み上げつつある。また、経済界や地方自治体間を中心に交流活性化を模索する動きも活発である。
 それでも、最近の韓国国内での日韓合意を巡る動きを見ていると、筆者は両国関係が日に日に悪い方向へ向かっているとの印象を抱かざるを得ない。2015年の日韓合意に基づき設立された和解・治癒財団の理事長が19日に辞意を表明した。既に同財団の理事が2名辞任しており、財団は事実上活動できなくなるとの報道もある。文在寅政権発足後、歴史問題では韓国国内で未来志向ではなく、過去志向的な動きが目立つ。言論NPOと東アジア研究院による日韓共同世論調査(7月21日発表)を見ても、日本国民の対韓感情も、少しずつではあるが、着実に悪化しているのが気になる点だ。
 安保・経済での協力関係を模索する動きは、あくまでも2015年の日韓合意以後の関係改善の流れで生まれてきたものだが、切り離したはずの歴史問題が今後再び爆発すれば、安保・経済分野の協力まで悪影響を被りかねない。韓国側には冷静で慎重な対応を望みたい。


<7月第3週 朝鮮半島関連の主な動き>

17日

● 南北軍事境界線付近での敵対行為中止に向けた軍事当局者会談を21日に、南北離散家族の再会に向けた赤十字会談を来月1日に開催するよう提案。


18日

● 文在寅大統領は「国防予算の国内総生産(GDP)比を「現在の2.4%から任期内に2.9%まで引き上げることを目標にしている」と明らかに。

● 米軍のポール・セルバ統合参謀本部副議長は上院軍事委員会の公聴会に出席し、北朝鮮が4日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)の射程について「(米国の一部に届く)能力は明らかにある」と言及。


19日

● 韓国新政権の「国政企画諮問委員会」が「国政運営五か年計画」を発表。

● 文在寅大統領は新原発の建設工事一時中断について、「(大統領選で掲げた)公約は(工事の)全面中止だったが、公約したからといって押し通すことは無理だと考え、民主的な手続きを踏むことにした」と説明。

● 宋永武(ソン・ヨンム)国防部長官とブルックス在韓米軍司令官が会談。


20日

● 韓国・済州島の市民団体が記者会見で、今年の10月中旬を目途に済州市にある日本総領事館前に「徴用工を象徴する像」を建てる計画だと発表。


21日

● 韓国政府が提案した軍事当局者会談と赤十字会談に北朝鮮が応じず。

● 韓日議員連盟訪日団が安倍首相と首相官邸で会談。


(キヤノングローバル戦略研究所 研究員 伊藤 弘太郎)

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