外交・安保カレンダー(6月26日-7月2日)

今週は久しぶりで日本のマスコミがイラクという国に関心を払ってくれた。メディアの主たる関心は、モースル陥落が近づき「追い詰められるイスラム国」が「世界で拡散しつつあるイスラム主義者のテロに如何なる影響を及ぼすか」にあるようだ。
大変有難く、良い傾向と思う。以下は筆者の現時点での見立てだ。


●最大拠点であるモースルが陥落しても、「イスラム国」にとって決定的な打撃とはならない。今モースルに残っているのは、恐らく、下っ端の自爆分子であり、高級指揮官や爆弾製造等の技術を持つ者はとっくに脱出しているはずだ。


●モースル(そして、いずれはシリアのラッカ)陥落は世界に拡散しつつあるイスラム主義、ジハード主義のテロを一層拡散する可能性すらあるので、今後この種のテロは増えることはあっても、減ることはないだろう。


●過激思想に共感・洗脳される人々を過激主義者のリクルート活動から守ることは難しい。少なくとも、欧州や中東のイスラム教徒のコミュニティが健全で安定し繫栄しない限り、新たな戦闘員のリクルート先はほぼ無尽蔵にある。


●そうした状況は欧州もアジアも変わらない。現在フィリピンのミンダナオで激化する「イスラム国」戦闘員を巻き込んだ戦闘も長期化する可能性が高く、同地がいずれ対東京五輪テロの新たな出撃基地となる恐れもなしとしない。


●先進国で相次ぐテロと現在中東で追い詰められている「イスラム国」との直接の関連を調べても、意味はないかもしれない。なぜなら、現在我々が目撃しているテロは「組織によるもの」ではなく、「思想によるもの」だからだ。


●ベルギー・イギリス・フランスなどで相次ぐテロを見ると、その犯行にこれまでのような宗教性、組織性、専門性が感じられず、増々幼稚性、衝動性、アマチュアリズムが深まっている。この種のテロは今後も減ることがないだろう。


●海外勤務・在住の邦人へのテロ対策は間違いなく不十分だ。日本人もターゲットであることを前提に、日本政府や企業は、十分時間とカネをかけて、対抗措置を常に改善していく必要がある。


●日本がモデルケースとすべき国としては、常にその種の脅威に晒されているイスラエルがベストだろうが、彼らのやり方は今の日本には高度すぎ、高価すぎるかもしれない。


●頻発するソフト・ターゲット攻撃への対抗策は、はっきり言ってない。テロリストは卑劣な連中で、最も脆弱な標的を最小のリスクで狙い、最大の恐怖と衝撃を与えようとする。狙われないように普段から抑止していくしかない。


●五輪を控える日本でも、狙われたら防ぎようがないので、これまで以上の厳しい対テロ抑止策、防衛策、情報分析などが求められるのだが、日本の一般市民の意識がそこまで高まっているようには思えない。



〇欧州・ロシア
1日からエストニアがEUの、ハンガリーがビシェグラード4(V4)のそれぞれ議長国となる。V4は1991年2月、チェコスロバキア、ハンガリー・ポーランドという中欧3か国で設立。チェコスロバキア分離後はチェコとスロバキア両国ともグループに参加した。
これらの4か国は2004年5月にそろって欧州連合に加盟しており、それなりの影響力を持っている。エストニアもハンガリーも最近訪問したことがあるが、いずれも強かで、よく頑張っている。あまり目立たないが、要注意だ。

〇東アジア・大洋州
26日にモンゴルで大統領選挙がある。与党人民党の候補が優勢だったが、野党民主党で柔道連盟会長の候補が若者の支持を伸ばし、接戦となっている。人民革命党も候補者を出しているので、場合によっては決選投票の可能性もある。
それにしても、モンゴルで健全な民主的選挙があるとは、実に素晴らしいことだ。民主的に選ばれたという点では、28日に韓国の新大統領が訪米する。中国、米国、日本、ロシアと北朝鮮、バランスを取るのが実に難しいようだ。

〇中東・アフリカ 
イラクについてもう一言。アラブ人には希望と事実の区別がつかない人が少なくないが、イラクのアバディ首相もその一人かもしれない。先日同首相は、現在最終段階にあるといわれるイラク北部モースルの奪還作戦が「あと数日で終わる」と公言した。
ラマダン明け祭日中にも発表したかったようだが、現実はそう甘くないようだ。モースルを奪還しても、イラク正規軍と、イランに支援されたシーア派ミリシアと、クルドのペシュメルガがほぼ同時に街に入る。全く新しい問題が生じることだけは間違いないだろう。イラクの混乱に終わりはない。

〇南北アメリカ
もうトランプ政権のことを書くのも飽きてきた。今週は珍しく、トランプ関係ニュースが少ない。それでも先週のワシントンポストの記事は強烈で、CIAのYour Eyes Only超機密情報によれば「プーチン大統領自身が米大統領選挙への干渉を命令した」という。これでも、トランプ氏はメゲナイ。大したものである。

〇インド亜大陸
26日から米印首脳会談がワシントンである。トランプ氏の対インド観は如何なるものなのだろう。興味深いが、あまり期待すべきではないかもしれない。今週はこのくらいにしておこう。

21-27日 スポーツ・フォー・トゥモロー(セルビアからの体操関係者招へい)
24-27日 インドのモディ首相がポルトガル、米国、オランダを訪問
24-7月1日 薗浦外務副大臣がアラブ首長国連邦、モーリシャス、ケニア、マダガスカル、モザンビークを訪問
25-27日 セーフティートレードショー2017(ニュージーランド・オークランド)
25-7月2日 対日理解促進交流プログラム(中国社会科学院青年研究者代表団第1陣が訪日)
26日 米印首脳会談(ワシントン)
26日 メキシコ5月雇用統計発表
26日 モンゴル大統領選挙
26日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ルクセンブルク)
26日 第18回日中民間緑化協力委員会合(東京)
26日 ファルコン9 (イリジウム・ネクスト10機)打ち上げ(米・ヴァンデンバーグ空軍基地)
26-28日 杉山外務事務次官が米国を訪問(ワシントン)
26-29日 欧州議員委員会会議(ブリュッセル)
26-30日 滝沢外務大臣政務官がジョージア及びアルメニアを訪問
26-7月3日 武井外務大臣政務官がザンビア、スワジランド及びナミビアを訪問
27-7月1日 北方四島での日ロ共同経済活動に向けた官民調査
27日 メキシコ5月貿易統計発表
27-28日 国連ウィメン執行理事会年次総会(ニューヨーク)
27-29日 第45回国連工業開発機構・工業開発理事会(ウィーン)
27-29日 夏季ダボス会議(中国・大連)
27-30日 ソボトカ・チェコ共和国首相が訪日
28日-7月1日 韓国の文大統領が初訪米
28-30日 第68回軍縮諮問委員会(米・ニューヨーク)
29日 米国第1四半期GDP(確定値)発表(米・商務省)
29日 アリアン5の打ち上げ(仏領ギアナ基地)
29-30日 米韓首脳会談(米・ワシントン)
29-7月1日 中国・習主席が香港を初訪問
30日 ブラジル5月全国家計サンプル調査発表
30日 日本5月雇用統計(総務省・統計局)
30日 5月消費者物価指数発表(総務省・統計局)
30日 中国6月製造業PMI発表(中国統計局)
30日 米5月個人所得・消費発表(商務省)
7月1日 エストニアがEU議長国に就任(12月末まで)
1日 香港返還20周年と行政長官就任式
1日 ハンガリーが「ビシェグラード4」(チェコ、スロバキア、ポーランドとの協力枠組み)の議長国に就任(2018年6月末まで)
2日 チリ・大統領および国会議員の予備選挙(政党・政党連合が実施を決定した場合)
2日 セネガル国民議会議員選挙
2日 兵庫県知事選挙
2日 東京都議会議員選挙
2日 長征5(高速通信衛星)の打ち上げ(海南省・文昌衛星発射センター)
2日 ファルコン9(通信衛星)の打ち上げ(ケネディ宇宙センター)

【来週の予定】
3日 ユーロスタット、5月失業率発表
3日か4日 ロシア需要項目別GDP統計発表
3-6日 欧州議会本会議(ストラスブール)
3-8日 第40回国際連合食糧農業機関(FAO)会議(ローマ)
3-16日 テニス・ウィンブルドン選手権(ロンドン)
3-21日 第50回国際連合国際商取引法委員会(ウィーン)
4日 米国・独立記念日でニューヨーク市場休場
4日 ブラジル5月鉱工業生産指数発表
5, 7日 WTO、EUに関する貿易レビュー(ジュネーブ)
6日 米国5月貿易統計発表(商務省)
6日 経済社会理事会(ECOSOC)本会期(ニューヨーク)
6日か7日 ロシア6月CPI発表
7日 米国6月雇用統計発表(労働省)
7-8日 G20首脳会議(ドイツ・ハンブルク)
7日 ブラジル6月IPCA発表
7日 メキシコ6月CPI発表
7-9日 ブラジル日本祭り2017「Festival do Japao」(サンパウロ)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

« 外交・安保カレンダー(6月19-25日) | トップページ | 外交・安保カレンダー(7月3-9日) »

« 外交・安保カレンダー(6月19-25日) | トップページ | 外交・安保カレンダー(7月3-9日) »