外交・安保カレンダー(5月22-28日)

日本では北朝鮮のミサイル発射がビッグニュースだが、今週筆者が最も気になったのは初外遊の最初の訪問国サウジアラビアでのトランプ氏の演説だ。聴衆はアラブ・イスラム諸国首脳たち。大統領選中あれだけ反イスラム発言を繰り返したトランプ氏にはイスラムとの和解を図る数少ない機会となるはずだった。

確かにスピーチの始まりは悪くない。"We are not here to lecture. We are not here to tell other people how to live, what to do, who to be or how to worship. Instead, we are here to offer partnership, based on shared interests and values."イスラムに対し教訓を垂れるつもりはない、との姿勢は評価できた。

これは宗教の戦いでも文明の戦いでもない。善と悪との闘いなのだ。"This is not a battle between different faiths, different sects or different civilizations... This is a battle between good and evil."スピーチライターもそれなりに頑張って書いたのだろう。ここまで、トランプ氏にしては、何とか合格点だった。

ところがその後は駄目だ。事前の打ち合わせでは、多くのムスリムが忌み嫌う「イスラム過激テロradical Islamic terrorism」なる言葉ではなく、「イスラム主義過激派Islamist extremists」を使う筈だったのだが、結局トランプ氏は何度かIslamistの代わりにIslamicを使ってしまったようだ。

まあ、トランプ氏が英語で何を言ってもアラビア語訳は同じだろう。だが、続いてトランプ氏は「イスラム主義過激派を地上から抹殺せよ」と吠えた。"Drive them out of your places of worship. Drive them out of your holy land. And drive them out of this Earth."レクチャーなどしないはずだったのに、だ。

やはりトランプ氏のような人物に外交上の微妙なニュアンスの違いを理解させることは至難の業のようだ。今週はサウジアラビアの後、イスラエル、バチカン、ブラッセル、イタリアを訪問するらしいが、とにかくサプライズなく無難な結果に終わるよう祈るしかない。

〇欧州・ロシア
今週は25日に米大統領のブラッセル訪問でNATO首脳会議と米EU首脳会議が、26-27日にはイタリアでG7首脳会議がある。トランプ氏にとっては欧州デビューというところだが、肝心の対ロシア政策について欧米の腰が定まっていない。ワシントンではロシアゲートで大騒ぎだが、そんなことでNATOは大丈夫か。気になるところだ。

〇東アジア・大洋州
今週のもう一つの注目点は北朝鮮の中距離ミサイル発射だ。金正恩氏は大喜びで、このミサイルを量産すべしと命じたそうだが、逆に言えば、他のミサイルは皆まだプロトタイプということだろう。日本を射程距離内に置くこの移動式発射台からcold launchできる弾道ミサイル、核弾頭の完成度が気になる。
問題はこれで中国が本気になるかどうかだが、筆者の見立ては「否 not yet」である。北朝鮮の動きを見ると、米中が強硬策を取れないぎりぎりの範囲内で最大の効果を得るような方法を巧みに組み合わせている気がする。中国も生命維持装置を外す気はなさそうだから、北朝鮮はいずれ核実験を行うだろう。

〇中東・アフリカ 
日本ではあまり大きく報じられなかったが、先週19日のイラン大統領選で現職ロウハーニ大統領が予想通り再選された。投票率は73.1%で、ロウハーニは2355万票(57.1%)を獲得、第2位のライーシー前検事総長は1579万票(38.3%)だった。最近のイランの大統領は再選が続いている。やはり現職は強いということなのだろう。
それにしても、トランプ氏が民主主義のかけらもないサウジでイラン批判を強めつつある中、イランが完全ではないものの「民主主義もどき」の大統領選挙を実施し、これまで保守対穏健の政権交代が整然と行われていることは皮肉としか言いようがない。第二位となった保守派のライーシーはまだ56歳、次期大統領の可能性は残っている。

〇南北アメリカ
「特別検察官は・・大統領にも解任できない。」と19日付某有力日刊紙が一面トップに書いた。どうも米国の特別検察官については誤解が少なくないようだ。そもそも筆者の知る限り、特別検察官は4種類あり、官職の英語名だけで三つもある。詳しくは今週木曜日の産経新聞のコラムを読んでほしい。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

15-25日 2017国際電気通信連合(ITU)委員会(ジュネーブ)
15-26日 第119回国際麻薬統制(INCB)委員会(ウィーン)
16-23日 対日理解促進交流プログラムJENESYS2016招へいプログラムを実施(第9陣)
18-23日 武井外務大臣政務官がバルバドス及びメキシコを訪問
20-22日 アジア太平洋経済協力(APEC)貿易担当大臣(MRT)会合及び第3回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)閣僚中間会合(ベトナム・ハノイ)
21-23日 ロベルト・アゼベド世界貿易機関(WTO)事務局長が外務省の閣僚級招へいにより訪日
22日 黒海経済協力機構25周年記念サミット(イスタンブール)
22日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
22日 米・イスラエルの首脳会談(エルサレム)
22日 ロシア2016年第4四半期外国直接投資統計発表
22日 メキシコ第1四半期GDP発表
22日 日本・イタリアの防衛相会談(防衛省)
22日 北方四島住民支援事業の一環として患者4人を日本が受け入れ
22-26日 アフリカ開発銀行年次総会(インド・アーメダバード)
22-26日 フィリピンのドゥテルテ大統領がロシアを訪問
22-31日 第70回世界保健(WHO)総会(ジュネーブ)
23日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
23日 米・パレスチナの首脳会談(ベツレヘム)
23日 2018会計年度米予算教書の発表
23日 メキシコ3月小売・卸売販売指数発表
23日 東京都の東京未来ビジョン懇談会(都庁)
24日 米のトランプ大統領が法王と会談(バチカン)
24日 エクアドルのレニン・モレノ新大統領就任式(キト)
24日 米FOMC議事要旨(FRB、午後2時)
24日 ケイマン立法議会選挙(ケイマン諸島)
25日 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議(ブリュッセル)
25日 石油輸出国機構(OPEC)定例総会(ウィーン)
25日 EU-US leaders' meeting(ブリュッセル)
25日 米仏首脳会談(ブリュッセル)
25日 メキシコ4月貿易統計発表
25日 PSLV-XL(地球観測衛星)の打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
25日か26日 ロシア4月雇用統計発表
26日 米国第1四半期GDP(改定値)発表
26日 CIS首相会議(ロシア)
26日 メキシコ4月雇用統計発表
26日 日本4月消費者物価指数の発表(総務省統計局)
26-27日 G7首脳会議(イタリア・タオルミーナ)
26日か27日 安倍首相とトランプ大統領が日米会談(イタリア・タオルミーナ)
26日か29日 ロシア第1四半期貿易統計発表
27日 南スーダン国連平和維持活動(PKO)の陸上自衛隊が全員帰国
27日 ラマダン(断食月)開始
28日 仏カンヌ国際映画祭授賞式
28日 F1モナコGP決勝(モンテカルロ)
28-30日 中国端午節休暇
28-6月11日 テニス全仏オープン(パリ)

【来週の予定】
29日 米・メモリアルデー(為替、債券、株式、商品市場が休場)
29-30日 EU競争力担当委員会(ブリュッセル)
29-6月1日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
30日 米・4月の個人所得及び消費の発表(商務省)
30-31日 ブラジル中央銀行、金融政策委員会(Copom)
30-6月9日 国連開発計画(UNDP)/国連人口基金(UNFPA)/国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)の年次執行理事会(ニューヨーク)
31日 ユーロスタット、4月失業率発表
31日 インド1~3月期GDP発表
31日 ブラジル4月全国家計サンプル調査発表
31日 世界保健機構(WHO)の「世界禁煙デー」
31-6月1日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
3-4日 岸田外務大臣が駐日外交団と石川県を訪問
6月1日 ブラジル第1四半期GDP発表
1日 みちびき2号機(準天頂衛星)(種子島宇宙センター、午前9時20分頃)
2日 米国4月貿易統計、5月雇用統計発表
2日 ブラジル4月鉱工業生産指数発表
3日 レソト国民議会選挙(レソト王国)
4日 メキシコ統一地方選挙〔コアウイラ州(知事、州議会)、メキシコ州(知事)、ナヤリット州(知事、州議会)など〕

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

« 外交・安保カレンダー(5月15-21日) | トップページ | 外交・安保カレンダー(5月29日-6月4日) »

« 外交・安保カレンダー(5月15-21日) | トップページ | 外交・安保カレンダー(5月29日-6月4日) »