外交・安保カレンダー(5月8-14日)

今週のハイライトはやはり仏大統領選挙だろう。日本の一部の経済専門家は「親欧州・新自由主義的政策を掲げた中道マクロン氏の選出は世界経済や市場にとり朗報」だと高く評価していた。EU分裂、保護主義傾斜のリスクは後退したというのだが、果たして本当だろうか。

詳しくは今週木曜日の産経新聞コラムをご覧いただきたいが、筆者の見立てはそれほど甘くない。理由は簡単、今回ルペン候補が決選投票に残っただけでなく、総得票の三分の一以上を獲得したことを過小評価すべきではないと考えるからだ。

今年1月21日、欧州各国の極右、右派ポピュリスト政党党首らがドイツ西部コブレンツに集まった。出席したのはドイツのための選択肢(AfD)、オランダ自由党、オーストリア自由党、フランス国民戦線、イタリア北部同盟の党首などだ。

彼らの主張には、①EU内の移動の自由を保証したシェンゲン協定の廃止、②不法移民の取り締まり強化と本国への送還、③ユーロ通貨の廃止と各国間経済格差の是正、④EU解体と各国の国家主権の回復など共通点も多いが、個々の政治活動となると各国で大きく異なる。

少なくとも、今回のマクロン候補の勝利で欧州の民族主義・大衆迎合主義の拡大に歯止めがかかったと判断するのは早すぎるような気がする。少なくとも、6月の仏議会選挙の結果を見なければ何とも言えない。各国国民の民族主義が異常なほど強靭な欧州政治を過小評価すべきではない。

〇欧州・ロシア
先週末の仏大統領選決戦投票では下馬評通り、マクロン候補が勝利したが、問題はこれからだ。同氏の長所も短所も「政治未経験のアウトサイダー」に限りなく近いこと。若輩の彼がどうやって仏議会選挙を仕切るのか。失敗すれば、ルペン候補は息を吹き返し、5年後を目指すだろう。既存二大政党への不信感は想像以上に深い。

〇東アジア・大洋州
この地域では今、北朝鮮問題ばかりが注目されているが、ここはもう少し巨視的に見る必要があるだろう。2016年以来、米中露三大国間のパワーゲームは新たな段階に入ったようだ。その直接の契機はトランプ政権誕生だが、本質は自己主張する中国の台頭であることは間違いない。
筆者の見立てでは、朝鮮戦争休戦から64年経って、ようやく北朝鮮の「終わりの始まり」が始まり、そこに一種の「力の真空」が生まれつつあるように思える。この「真空」を埋めるべく、米中露は新たなゲームを既に始めており、これから5~10年間に米中露、特に米中で朝鮮半島の奪い合いが始まるだろう。

〇中東・アフリカ ○南北アメリカ
トランプ氏が初外遊に出かける。まずはサウジとイスラエル、その後はバチカン、ブラッセルでNATO首脳会議、イタリアでG7首脳会議に参加する。なぜ、と言われると困るが、オバマ外交をundoすると考えれば良く判るだろう。サプライズがないことを祈るしかない。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

8日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
8日 中国4月貿易統計発表
8日 ロシア極東ウラジオストクと北朝鮮北東部の羅先経済特区を結ぶ定期航路開設
8-10日 国連経済社会理事会(ECOSOC)本会期(ニューヨーク)
8-12日 国連人間居住計画第26回審議会(ナイロビ)
8-12日 国際原子力機関(IAEA)理事会(ウィーン)
8-12日 国際人権理事会(ワーキンググループ会合)(ジュネーブ)
8-17日 国際人権理事会(ワーキンググループ会合)(ジュネーブ)
9日 韓国大統領選挙(韓国)
9日 メキシコ4月CPI発表
9-10日 外務省と「秋田犬ツーリズム」の共催で駐日外交団の秋田県北部の視察を実施
9-13日 欧州音楽祭ユーロビジョン(キエフ)
9-18日 APEC第2回高級実務者会合(SOM2)、関連シンポジウム(ベトナム・ハノイ)
10日 中国4月消費者物価指数(CPI)発表(国家統計局)
10日 4月米財政収支(財務省)
10日 ブラジル4月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
10日 バハマ下院議員選挙(バハマ)
10-11日 WTO一般理事会(スイス・ジュネーブ)
10-11日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
10-11日 国際サッカー連盟(FIFA)総会(バーレーン・マナマ)
10-17日 第69回世界気象機関(WMO)執行理事会(ジュネーブ)
10-12日 世界経済フォーラムASEAN会議(カンボジア・プノンペン)
11日 EU外相理事会(ルクセンブルク)
11日 黒海経済協力機構経済相会合(トルコ・イスタンブール)
11日 ブラジル3月月間小売調査発表
11-13日 G7財務相会合(イタリア・バーリ)
11-12日 第105回国連世界観光機関(UNWTO)執行理事会(マドリード)
11-15日 APECデジタル世代の人材育成に関するハイレベル政策対話、関連シンポジウム(ハノイ)
12日 米国4月消費者物価指数(CPI)、小売売上高統計発表(労働省)
12日 インド3月鉱工業生産指数発表
12日 香港第1四半期マクロ経済統計発表
12日 メキシコ3月鉱工業生産指数発表
12-13日 法王がポルトガル・ファティマを巡礼
14日 F1スペインGP決勝(モントメロ)
14-15日 ロシア・プーチン大統領が中国を訪問、首脳会談
14-15日 シルクロード経済圏構想「一帯一路」の国際首脳会議(北京)
14-19日 インド・モディ首相が中国、モンゴル、韓国を訪問
14-28日 大相撲夏場所初日(東京・両国国技館)

<5月15-21日>
15日 EU外相理事会(ルクセンブルク)
15日 中国4月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
15-18日 欧州議会本会議(ストラスブール)
16-17日 トルコ・エルドアン大統領が米国を訪問、首脳会談
16日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
16日 ファルコン9(インマルサット5 F4)の打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
17日 ロシア第1四半期GDP(速報値)発表
18日 ソユーズST-B(通信衛星SES-15)の打ち上げ(仏領ギアナ基地)
18日か19日 ロシア1~4月鉱工業生産指数発表
18-19日 EU外相理事会(ルクセンブルク)
18-19日 G20労働相・環境相会合(ドイツ・バート・ノイエンアール)
18-19日 APEC財務高級実務者会合(SFOM)、関連シンポジウム(ベトナム・ニンビン)
18-20日 アルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領が訪日
19日 イラン大統領選挙(イラン)
19-20日 G20保健相会合(ベルリン)
19-21日 APEC貿易相会合(MRT)(ハノイ)
21日 黒海経済協力機構外相会合(イスタンブール)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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