外交・安保カレンダー(5月1-7日)

今週日本はゴールデンウィークでお休み。しかし、主要省庁の閣僚、副大臣、政務官や国会議員は外遊で忙しいはずだ。それにしても、朝鮮半島で何が起きてもおかしくないと報じられている昨今、そんなに長く国を空けても良いのだろうか。ちょっと気になるところだ。恐らく彼らは、「今は何も起きない」と達観しているのだろう。さすがだ。

北朝鮮問題に関する筆者の見通しは簡単。短期的には楽観的だが、中長期的には悲観的である。現在米国が対北朝鮮先制攻撃を仕掛ける可能性は低い。だが、それをあまりはっきり言ってしまえば、対中国、対北朝鮮の抑止効果は大幅に相殺される。やはり、米国が何をするかは最後まで曖昧にしておくのが最も賢いやり方だろう。

一方、中長期的には気が滅入る。北朝鮮が核兵器開発を断念する可能性は殆どないし、中国には北を説得するだけの力も度胸もない。このまま北朝鮮が核弾頭を乗せたICBMの実戦配備に向け進めば進むほど、米国が北朝鮮に対し先制攻撃を行う可能性は高まる。問題は東アジアではなく、米本土の安全保障に関わるからだ。

その時、日中韓は最悪の場合、第二次朝鮮戦争を覚悟する必要がある。その時初めて、北朝鮮が土壇場で核開発を断念する可能性が出てくるからだ。しかし、現状ではそれも不可能。米中間には朝鮮半島の将来に関する最低限のコンセンサスすらないからだ。そのコンセンサスには日韓だけでなく、露も協議を求めてくるだろう。

朝鮮戦争休戦から64年。この古くて新しいクライシスが、若い三代目のリーダーの出現により、再始動する恐れが出てきた。これから朝鮮半島を米中露が獲り合う新たなゲームが始まる。日本は韓国とともに、このゲームに関与し、勝者として生き残らなければならない。されば、外遊するのも良いが、他にもっと考えることがあるだろう。

〇欧州・ロシア
今週末には仏大統領選の決戦投票がある。マクロン候補勝利が予測されているが、ルペン女史も反EUの姿勢を軟化させている。でも、まさかの結果となる可能性は低いだろう。一方、若輩のマクロンにフランスを今の惨状から救う力があるとも思えない。既存二大政党への不満が解消しない限り、フランス内政の混乱は続くだろう。
2日にドイツ首相がロシアを訪問する。メルケルはロシア語に堪能、プーチンもドイツ語が喋れるはずだ。主要国の中でもこれだけ突っ込んだ話ができそうな首脳同士は他にないだろうが、一体何を話すのか。ルペンがいてメルケルがいない(分裂含みの)EUはプーチンにとって夢であるはずなのだが・・・。

〇東アジア・大洋州
30日のCBSのFace The Nationとのインタビューでトランプ氏が中国について述べた部分が面白い。「中国が為替操作をやっていたのは明白」だが、「北朝鮮は貿易問題よりも重要」であり、「中国は究極的ではないにせよ、かなりの力を持っており、北朝鮮問題の解決に中国が助けになるなら、貿易問題で妥協も厭わない」と述べた。
何と単純な男なのだろう。このような大統領を相手に、中国の国家主席を含む各国の百戦錬磨の政治家たちは一体何を感じ取るのか。トランプ氏のような大統領でもビクともしない米国に対し、プーチンがいなければ恐らく二流国になり下がっていたかもしれないロシアと、そのどちらでもない習近平の中国がどう対応するのか興味深い。

〇中東・アフリカ
3日にロシア・トルコ首脳会談がソチで開かれる。同日、ワシントンでは米・パレスチナ首脳会談が開かれる。偶然の一致だろうが、このコントラストは興味深い。一時悪化したトルコとロシアの関係は最近改善しているという。この民主的選挙で選ばれた二人の独裁者がシリア問題で何を話すのだろうか。
一方、パレスチナ問題については何も期待していない。トランプ氏は米国が長年支持してきたユダヤ・パレスチナの「二国家論」について、「当事者が合意すれば、どちらでも良い」と突き放している。しかも、トランプ氏は娘婿をパレスチナ問題の仲介役にするつもりらしい。クシュナー氏には失礼だが、彼にそのような大役は無理である。

〇南北アメリカ
29日はトランプ氏の大統領就任100日目だったが、30日にトランプ氏はペンシルベニア州で開かれた集会に出席、恒例のホワイトハウス記者との夕食会を欠席した。トランプ政権が相変わらず「選挙・キャンペーン」を重視していることを象徴する出来事だ。トランプ氏は、歴代政権と比べても、「選挙・キャンペーン」モードのバージョン1.0と「統治」モードのバージョン2.0の混在が著しく顕著だが、これで本当に良いのか。
外交面ではシリアや北朝鮮など国際危機に対応する中、NSC(国家安全保障会議)は着実に2.0に移行しつつあるように見える。これに対し、内政面では「選挙」モード1.0のまま、イスラム系諸国からの入国制限やオバマケア代替法案などで失敗が続いている。彼が「選挙」モードを放棄し、バージョン2.0に移行することはないのだろう。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

27日-5月3日 岸田外務大臣がアメリカ、トルクメニスタン、オーストリアを訪問
27日-5月7日 薗浦外務副大臣が中南米(ブラジル、パラグアイ、アルゼンチン、コロンビア、コスタリカ、ニカラグア)を訪問
30日-5月1日 ドイツ・メルケル首相がサウジアラビアとUAEを訪問
30日-5月1日 トルコ・エルドアン大統領がインドを訪問
1日 3月の米個人所得・消費(商務省)
1日 「中央アジア+日本」第6回外相会合出席(トルクメニスタン)
1-6日 岸外務副大臣がカンボジアとパキスタンを訪問
1-6日 武井外務大臣政務官がモロッコ、ナイジェリア、ジブチを訪問
1-12日 国際人権理事会(ワーキンググループ会合)(ジュネーブ)
1-26日 国連総会第5委員会(ニューヨーク)
1-6月2日 第69回国連国際法委員会(ジュネーブ)
2日 ドイツ・ロシア首脳会談(ロシア)
2日 EU3月失業率発表(EU統計局)
2-3日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
2-4日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
2-5日 第48回包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)(ウィーン)
2-5日 ブラジル流通業者専門見本市「Feira APAS 2017」(ジェトロがジャパンブースを設置)(サンパウロ)
2-12日 2020年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議第1回準備委員会(ウィーン)
2-12日 第18回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉会合(フィリピン)
3日 ユーロ圏第1四半期GDP速報値の発表(EU統計局)
3日 ブラジル3月鉱工業生産指数発表
3日 ロシア・トルコ首脳会談(ロシア・ソチ)
3日 米・パレスチナ首脳会談(ワシントン)
4日 米・東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会合(ワシントン)
4日 米豪首脳会談(ニューヨーク)
4日 米国3月貿易統計発表(商務省)
4日 アルジェリア国民議会選挙(アルジェリア)
4-7日 アジア開発銀行(ADB)第50回年次総会(日本・横浜)
5日 米国4月雇用統計発表(労働省)
5日か10日 ロシア4月CPI発表
5日 GSLV MK2ロケットの打ち上げ(インド・サティシュ・ダワン宇宙センター)
5日 アリアン5(アリアンスペース社)の打ち上げ(仏領ギアナ基地)
6日 ニウエ議員選挙 (ニウエ)
7日 フランス大統領選(決選投票)(フランス)
7-9日 ファム・ビン・ミン ベトナム社会主義共和国副首相兼外務大臣が訪日

<5月8-14日>
8日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
8日 中国4月貿易統計発表
8-10日 国連経済社会理事会(ECOSOC)本会期(ニューヨーク)
8-10日 国連人間居住計画の審議会(ナイロビ)
8-12日 国際原子力機関(IAEA)理事会(ウィーン)
8-12日 国際人権理事会(ワーキンググループ会合)(ジュネーブ)
8-17日 国際人権理事会(ワーキンググループ会合)(ジュネーブ)
9日 韓国大統領選挙(韓国)
9日 メキシコ4月CPI発表
9-10日 外務省と「秋田犬ツーリズム」の共催で駐日外交団の秋田県北部の視察を実施
9-13日 欧州音楽祭ユーロビジョン(キエフ)
9-18日 APEC第2回高級実務者会合(SOM2)、関連シンポジウム(ベトナム・ハノイ)
10日 中国4月CPI発表
10日 ブラジル4月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
10日 バハマ下院議員選挙(バハマ)
10-11日 WTO一般理事会(スイス・ジュネーブ)
10-11日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
10-12日 世界経済フォーラムASEAN会議(カンボジア・プノンペン)
11日 EU外相理事会(ブリュッセル)
11日 黒海経済協力機構経済相会合(トルコ・イスタンブール)
11日 ブラジル3月月間小売り調査発表
11-13日 G7財務相会合(イタリア・バーリ)
11-15日 APECデジタル世代の人材育成に関するハイレベル政策対話、関連シンポジウム(ハノイ)
12日 米国4月消費者物価指数(CPI)、小売売上高統計発表
12日 インド3月鉱工業生産指数発表
12日 香港第1四半期マクロ経済統計発表
12日 メキシコ3月鉱工業生産指数発表
14-15日 ロシアのプーチン大統領が中国を訪問
14-15日 「一帯一路」構想に関する国際協力ハイレベルフォーラム(北京)
14-19日 インド・モディ首相が中国、モンゴル、韓国を訪問

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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