外交・安保カレンダー(4月17 -23日)

先週は世界の関心が北朝鮮に集中したのでは、と感じた人も多いだろう。確かに、米国は空母打撃群を朝鮮半島に派遣し、漸く強制力を伴う外交を始めた。中国は米国からの強い要請を受け、これまで以上に北朝鮮への働きかけを行った。北朝鮮は「核実験」でも「ICBM」でもない中距離ミサイル発射を試み、見事に失敗した。

これが出来レースだとは思わないが、結果は「お見事」と言う外ない、というのが筆者の見立てだ。北朝鮮は米中の圧力に屈しない姿勢を示しつつ、ちゃっかり北京に恩を売った。これで中国は米国に「北朝鮮に核実験とICBM発射を断念させた」と言えるだろう。米国だってカールビンソン派遣の目的を一応達成したではないか。

北朝鮮問題のポイントは二つある。第一は、予測不能な金正恩が合理的な戦略判断を続けられるか否かであり、第二は、北朝鮮の核弾頭付きICBM実戦配備が近づいたら、米国は今のように対北朝鮮攻撃を躊躇しなくなるというジレンマがあること、要するに今後北朝鮮の核問題は「時間との戦い」となることだ。

今回4月末までこのまま北朝鮮による核実験やICBM発射がなければ、このラウンドは終了。逆にどちらかでもあれば、中国は面子を失い、米国の対中圧力が倍増するだろう。しかし、それはそれだけの話。筆者にとって先週のハイライトは北朝鮮などではなく、16日に行われたトルコの国民投票の結果だ。

理由は簡単、エルドアン大統領が「プーチン化」し、ケマル・アタテュルク以来一貫して世俗主義共和国を志向してきたトルコが遂に「帝国化」のプロセスを開始したと考えるからだ。このことは、短期的に、シリアをめぐる問題を更に複雑化させ、中長期的には、NATO南方の結束が綻び始め、トルコのEU加盟も絶望的となるだろう。

ユーラシア大陸における現状変更志向のリビジョニスト帝国は四つになった。ロシア、イラン、中国に次いで、遂にトルコもその仲間に加わったということだ。トルコのような大国が欧米との協力路線を放棄し、ロシアやイランと共にリビジョニスト勢力の一角を占めるようなれば、中東地域の安定は増々遠のくのではないか。

北朝鮮が核弾頭を小型化しICBMを完成するのは、それ自体大事件ではあるが、所詮は想定内の問題である。これに対して、トルコの帝国化はユーラシア中東方面の地政学的な大変化だ。国際政治ゲームに新たな手強く予測不能なプレーヤーが参加してきた。これでユーラシアの不安定化は進む。筆者の懸念はここにある。

〇欧州・ロシア
20-21日にG7議長国のイタリア首相が米国とカナダを訪問する。G7にロシアを加える案を本気で考えているのだろうか。ロシアに対し一定の効果があることは否定しないが、冷戦終了後一時G8にして、何か成果はあったのか。なし崩し的に対露経済制裁を解除するなら、それこそロシアの思う壺ではないか。
23日から5月7日までフランスの大統領選挙第一回目が行われる。EUから英国が離脱してもEUは機能し続けるだろうが、仏が離脱し、独仏の枢軸が崩れれば、EUは有名無実となる恐れがある。欧米でのフランス大統領選挙に対する関心は異常に高い。第二回目の決選投票まで目が離せない。

〇東アジア・大洋州
17日から28日まで米韓空軍による共同訓練が実施される。この間に北朝鮮が何らかの行動を起こす可能性が取り沙汰されている。17日から米副大統領が訪日し、その後、インドネシア、豪州を歴訪する。23日には中国初の国産空母が就航するというが本当に使えるのか。

〇中東・アフリカ
イランの大統領選挙が近づいてきた。16日から大統領候補者を決めるイスラム法学者の会合が開かれる。現職のローハニ大統領は再選を目指すというが、果たしてどうなるだろうか。18日からは米国防長官がサウジアラビア、エジプト、イスラエル、カタル、ジブチを訪問する。

〇南北アメリカ
今最も気になるのはトランプ氏の政策判断の基準だ。トランプにはイデオロギーもドクトリンもない。良く言えば柔軟だが、悪く言えば朝令暮改で一貫性がない。手法は衝動的、感覚的、選択的であって、それ以上でも、以下でもない。要するに、トランプは今後も選挙モードと統治モードの間を行ったり来たりするのだ。
幸い、NSCは選挙モードのトランプ1.0から統治モードの2.0に移行しつつある。マクマスター補佐官以下チームとして纏まりつつあるようだ。バノンの離脱が象徴的である。しかし、バージョン1.0の象徴であるバノンはホワイトハウスから去らない。それは三年後の再選を考えるトランプ自身が選挙モードを止めるつもりがないからだ。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

4月12-17日 アンヘル・グリア経済協力開発機構(OECD)事務総長が訪日
17日 黒田日銀総裁が第92回信託大会であいさつ(経団連会館)
17日 中国1~3月期の中国国内総生産(GDP)発表(午前11時頃)
17日 中国1~3月期の消費者物価指数(CPI)、固定資産投資、社会消費品小売総額など発表
17日 ヨーロッパはイースターマンデーで祝日
17日 ボストン・マラソン(米マサチューセッツ州ボストン)
17日か18日 ロシア第1四半期鉱工業生産指数発表
17-21日 ネパール・バンダリ大統領がインドを訪問
18-19日 米・ペンス副大統領が訪日、安倍首相との会談
18日 麻生副首相兼財務大臣と米・ペンス副大統領が日米経済対話の初会合(日本)
18日 安倍首相と米・ロス商務長官が通商交渉と為替問題を会談(日本)
18日 文部科学省の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)(日本)
18日 国際通貨基金(IMF)が世界経済見通し(WEO)で記者会見(ワシントン)
18-20日 ルクセンブルク・ベッテル首相がカナダを訪問
18-21日 スウェーデン・ヴィクトリア皇太子が訪日
18-25日 JENESYS2016(対日理解促進交流プログラム)第8陣が来日(日本)
19日 金融システムリポート(日銀、16時)
19日 3月の訪日外国人数発表(日本政府観光局、16時)
19日 アトラスV(オービタル社商用補給機)打ち上げ(米・ケープカナベラル空軍基地)
19-21日 国際連合経済社会理事会実質会期 (ニューヨーク)
19-28日 上海モーターショーが開幕(一般公開は21日から)
19-5月3日 第201回ユネスコ執行委員会 (パリ)
20日 米伊首脳会談(ワシントン)
20日 米・ペンス副大統領がインドネシアを訪問
20日 中国・習近平国家主席がパキスタンを訪問
20日 春の園遊会(日本・赤坂御用地)
20日 ソユーズFG(Soyuz-FG)の打ち上げ(午後4時13分、カザフスタン・バイコヌール宇宙基地)
20日 長征7(CZ-7)の打ち上げ(中国海南省・文昌衛星発射センター)
20日か21日 ロシア1~2月貿易統計発表
20-21日 G20財務省・中央銀行総裁会議(米・ワシントン)
20-21日 イタリア・ジエンティロー二首相がカナダを訪問
20-22日 クラスノヤルスク経済フォーラム(ロシア)
21日 天皇退位の有識者会議が最終報告書公表
21日 メキシコ3月雇用統計発表
21-23日 IMF・世界銀行春季総会(ワシントン)
22日 米・ペンス副大統領がオーストラリアを訪問
23日 名古屋市長選挙投票(日本・名古屋)
23日 フランス大統領選第1回投票 (フランス)

【来週の予定】
24日か25日 ロシア3月雇用統計発表
24-25日 スペイン・ラホイ首相がブラジルを訪問
24-27日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
24-28日 第156回国際連合食糧農業機関(FAO)理事会(ローマ)
25日 EU一般問題理事会(ルクセンブルク)
25日 香港3月貿易統計発表(香港)
25-26日 EU環境相理事会非公式会合(バレッタ)
26日 メキシコ2月小売・卸売販売指数発表
26日 欧州安全保障協力機構(OSCE)のザニエル事務総長がロシア訪問
26-27日 欧州議会本会議(ブリュッセル) 
26-27日 日銀金融政策決定会合
26-27日 第6回モスクワ国際安全保障フォーラム
26-27日 EU防衛相理事会非公式会合(バレッタ)
26~29日 第30回ASEAN首脳会議(フィリピン・マニラ)
27-28日 安倍首相がロシアを訪問、首脳会談(ロシア)
27日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(独フランクフルト)
27日 アフガニスタン・ガーニ大統領がインドを訪問
27日 メキシコ3月貿易統計発表
28日 ブラジル3月全国家計サンプル調査発表
28日 米国第1四半期GDP(速報値)発表
28日 イギリス1~3月期GDP(速報値)発表
28日 ロシア中央銀行理事会
28-29日 EU外相理事会非公式会合(バレッタ)
28-29日 ローマ法王がエジプトを訪問
29日 EU首脳会議でイギリス離脱交渉指針を採択
30日 ジャパン・ハウス サンパウロの開館(ブラジル・サンパウロ)
30日 自動車F1ロシアGP決勝(ロシア・ソチ)
下旬 北朝鮮の核問題をめぐる日米韓の6カ国協議の首席代表会合(東京)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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