外交・安保カレンダー(3月20-26日)

今週は安倍晋三首相の欧州歴訪が予定されている。今回ほど欧州諸国首脳が、「日本の首相は何を言うか」に強い関心を持つことはなかったのではないか。混乱する米トランプ外交の中で、対アジア、対日外交だけが大きなサプライズもなく、まともに動き出しているように見えるからだ。

だが、個人的には先週15日のオランダ総選挙の結果の方に関心がある。日本の有力紙は蘭現与党が下院第一党を維持したことで、「オランダ『寛容』守る」、「右派阻止、EUから賛辞」などと手放しで評価していた。本当にそうなのか。先週指摘したように、オランダ与党はトルコとの軋轢を政治的に利用した。

あれだけの「劇場政治」をやったにもかかわらず、ルッテ首相率いる自由民主党は議席数を7も失った。逆に言えば、先週トルコが騒がなければ、もっと極右が台頭していたかもしれないのだ。政権与党は辛うじて主導権を維持した、と言えないこともない。事態はより複雑かつ深刻なのではないのか。

選挙といえば、26日に香港行政長官選挙が投開票される。中国指導部のお気に入り「本命」の前政務長官キャリー・ラム女史に反対する人が学生を中心に増えつつあると報じられた。気持ちは判るが、今の香港で真の民主的選挙が行われる可能性は限りなく低い。恐らく状況は今後更に悪化するのではないか。

〇欧州・ロシア
20日に日露2+2会合が開かれた。この数週間で米国の国防長官、国務長官が相次いで訪日し、今度はロシアだ。これで日露関係が進展するとは思えないが、こんな会合が開かれること自体、時代の流れを大いに感じる。領土問題とは別に、こうした日露対話を積み重ねることは、やはり重要だろう。

〇東アジア・大洋州
今週はアジアの域内外交が活発だ。19-22日にフィリピン大統領がミャンマーとタイを訪れ、イスラエル首相と5閣僚からなる代表団が訪中する。21-24日にはシンガポール首相がベトナムを訪問し、22-29日には中国の国務院総理がオーストラリアとNZを訪問、23日からは中国海南省でボーアオ会議が開かれる。
 
〇中東・アフリカ
25-26日にOPEC諸国が会合を開く。前回の会合で決めた減産を継続するか否かを議論するというが、シェール革命後の原油グラットの中で価格を高値安定させるのは難しい。このことは1980年代の経験で分かっている筈なのだが、大丈夫なのだろうか。
一方、22日には米国務長官がイスラム国打倒のため関係国との会合を主催するそうだ。それにしても、国務省職員は可哀想だと思う。副長官も次官も決まらず、国務省予算は大幅減。報道によれば、一部外国は国務長官をバイパスして、トランプ氏の娘婿に会おうとしているそうだ。国務省は未だ正常ではない。

〇南北アメリカ
今週はCNNを見ながらこの原稿を書いている。間もなくFBI長官が議会下院の情報委員会で証言し、その後、次期最高裁判事候補の議会承認手続きも動き始めるからだ。トランプ氏が「オバマ大統領がトランプタワーの盗聴を命じた」とツイートしてから2週間経った。米国内政の混乱はまだまだ続きそうだ。

〇インド亜大陸
中国国防部長がネパールとバングラデシュを訪問するが、一体何が目的なのだろう。ちょっと気になるところだ。今週はこのくらいにしておこう。

3月20日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(健康相理事会非公式会合)(マルタ・バレッタ)
20日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ベルギー・ブリュッセル)
20日 日露外相会談、日露外務・防衛閣僚協議「2+2」(東京)
20日 日独首脳会談(ドイツ・ハノーバー)
20日 東ティモール大統領選挙
20日か21日 ロシア1月貿易統計発表
20-21日 第5回アフリカCEOフォーラム(スイス・ジュネーブ)
20-23日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
20-24日 国際情報通信技術見本市「CeBIT 2017」(ハノーバー)
20-31日 日露さけ・ます漁業交渉
20日-4月3日 国連の先住民族に関する特別報告者がオーストラリアを訪問
21日 安倍首相、ユンケル欧州委員長、トゥスクEU大統領が会談
21日 日仏首脳会談(フランス・パリ)
21日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
21-23日 ベトナム国際加工・包装技術展(プロパックベトナム2017)(ホーチミン)
21-23日 ノルウェー王国のハラルド五世国王陛下がアイスランドのヨハネソン大統領と会合
21-25日 奥・井ノ上記念日本青少年国連訪問団が国連本部等を訪問(米国・ニューヨーク)
21-28日 対日理解促進交流プログラム「カケハシ・プロジェクト」米国大学生(ビジネススクール)が日本を訪問
22日 南ア2月CPI発表
22日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(ドイツ・フランクフルト)
22日 日伊首脳会談(イタリア・ローマ)
22日か23日 ロシア2月雇用統計発表
22-29日 JENESYS2.0 中国青年公益事業交流団第2陣が日本を訪問(テーマ:体育・青少年教育、ボランティア、企業CSR・文化財保護)
23日 ECB一般理事会(フランクフルト)
23-24日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
23-29日 第28回アラブサミット(ヨルダン・アンマン)
24日 ロシア中銀理事会
24日 ローマ法王がEU各国首脳と会談(バチカン)
24日 メキシコ1月小売・卸売販売指数発表
25日 ローマ条約調印60周年記念日、非公式首脳会議(ローマ)
26日 ドイツ・ザールランド州議会選
26日 香港特別行政区行政長官選挙
26日 ブルガリア国民議会選挙
26日 千葉県知事選挙
26日 欧州各国が夏時間入り(英との時差は8時間、仏独伊とは7時間に縮小)
26日 ブルガリア国民議会選挙
26-28日 デンマーク王国フレデリック皇太子同妃両殿下が日本を訪問

【来週の予定】
3月27日 メキシコ2月貿易統計発表
27-28日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
28日 南ア第4四半期雇用統計発表
28日 メキシコ2月雇用統計発表
29日 タイ中銀、金融政策委員会
30日 米国2016年第4四半期および年間GDP(確定値)発表
30日 ブラジル1月月間小売り調査発表
30日 米国のティラーソン国務長官がトルコを訪問
30-31日 マニラ・インターナショナル・オートショー
30-31日 G7文化相会合(イタリア・フィレンツェ)
31日 ブラジル2月全国家計サンプル調査発表
最終週 アンゴラ中銀、金融政策委員会
上旬 ケニア中銀、金融政策委員会
上旬 メキシコ2月自動車生産・販売・輸出統計発表
下旬 マレーシア中銀、2016年年次報告発表(2017年経済見通しを含む)
下旬 ナイジェリア中銀、金融政策委員会
下旬 イランのローハニ大統領がロシア訪問
月内 EU南米南部共同市場(メルコスール)自由貿易協定(FTA)交渉ラウンド(アルゼンチン・ブエノスアイレス)
月内 アゼルバイジャンのアリエフ大統領がイラン訪問
月内 インド・ゴア州、マニプール州、パンジャブ州、ウッタラカンド州選挙
月内 パキスタン中銀、金融政策決定会合
月末 米国通商代表部(USTR)、外国貿易障壁報告書発表
4月1日 インド、物品・サービス税(GST)導入予定
1日 ユーラシア経済連合(EEU)関税領域へ持ち込む航空貨物に対する事前申告義務付け
2日 エクアドル大統領選挙決選投票(2月19日の選挙で当選者が出ない場合)
2日 アルメニア議会選挙
2-4日 中国清明節休暇

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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