外交・安保カレンダー(3月13-19日)

最近の内外メディアの関心は珍しく「外交関係」に集中している。先週まで彼らの関心はクアラルンプール空港での金正男氏暗殺をめぐる北朝鮮とマレーシアの外交的報復合戦だった。ところが、今週の焦点はトルコとオランダの外交論争だ。それにしても、両国首脳が相手国を罵る光景は異様である。

事の発端は極右勢力の圧力に屈したオランダ政府がトルコ外相のオランダ入国を拒否したこと。同外相はロッテルダムで開かれる予定の在外トルコ人の集会に空路参加しようとしたが、オランダは国内の緊張を煽る可能性があるとして、同外相の搭乗機にロッテルダム空港への着陸許可を与えなかったという。

続いて、トルコの家族相がドイツから陸路で入国したが、同相はロッテルダムのトルコ総領事館前でオランダ当局により阻止され、何とドイツに追い返されたそうだ。オランダ首相府報道官によれば、同総領事館前に集まったトルコ系住民の抗議デモが暴徒化し、警察は放水でデモ隊を解散させたという。

この一連の事件でトルコ大統領はオランダを「ファシスト」、「ナチス」と罵倒し、現在海外で休暇中の駐トルコ・オランダ大使の帰国を当面は歓迎しないと発言。更に、オランダが家族相の追放について謝罪しない限り、外交的・政治的・経済的な報復も辞さないと表明したそうだ。事態は泥仕合となっている。

だが、一連の騒動に関する筆者の見方は冷めている。この問題はオランダ、トルコ両国にとって、外交ではなく、内政問題だからだ。オランダでは3月15日に総選挙が実施される。右派勢力から突き上げられている現与党としてはトルコに対し厳しい姿勢を示さざるを得ない。騒ぎは大きいほど良いのだ。

トルコ与党にとっても状況は同じ。同国では近く大統領への権限集中を認める憲法改正案の国民投票が予定されている。在外のトルコ人にも投票権があるので、トルコ与党が在欧州トルコ人有権者に対する働き掛けを強めたいのは当然だろう。どちらにとっても本質は外交ではなく、内政問題でしかない。

両国が外交問題を内政に利用しようとする以上、この問題に円満な解決などあり得ない。冷たい言い方だが、この問題は当分放っておくしかない。唯一明らかなことは、これによりトルコのEU加盟問題が事実上迷宮入りすること。トルコが欧州の一員となる可能性は完全になくなったということだ。


 
〇欧州・ロシア
14日にドイツ首相が訪米する。同首相と米大統領との関係は微妙であり、二人の会談結果はEUの将来を左右する、といっても過言ではない。少なくとも、トランプ政権の対欧州政策とEU諸国の対米政策の間には大きなギャップが存在する。今回の首脳会議の結果次第ではEUの将来を左右しかねないだろう。

〇東アジア・大洋州
今週はサウジ国王の日本・中国訪問と米国務長官の日中韓三国訪問が予定されている。サウジの大名行列はともかく、最近ワシントンでティラーソン国務長官の存在感が薄れつつあるとする報道が気になっている。今回のトランプ政権の最大の敗者は、もしかしたら米国務省かもしれないからだ。

〇中東・アフリカ
14日にカザフスタンのアスタナでシリア和平会議が開催される。ジュネーブでの会議とは別に、ロシア主導のこうした会議が開かれ続けること自体、シリア問題の将来にとっては良いニュースではない。米露間でシリアの将来に関する最低限のコンセンサスが生まれない限り、この種の会議は踊り続けるだろう。

〇南北アメリカ
報道によれば、最近訪米する諸外国外相は国務長官ではなく、トランプ氏の娘婿クシュナー顧問と会談することが少なくないという。これが事実であれば、いずれトランプ政権幹部の誰かが辞任に追い込まれる可能性がある。新政権幹部同士の権力闘争は誰かが犠牲者にならないと終焉しないからだ。

〇インド亜大陸
特記事項なし。

3月13日 ギリシャのニコス・コジアス外相が米国のワシントンを訪問
13日 フランスのジャン=マルク・エロー外務・国際開発大臣がストックホルムを訪問(スウェーデン)
13日 ウクライナのIvanna Klympush-Tsintsadze副首相がフィンランドを訪問
13日 ガーナのシェリー・アヨコー・ボチュウェイ外相が南アを訪問
13-15日 オランダのマキシマ王妃陛下がワシントンとニューヨークを訪問(米国)
13-16日 欧州議会本会議(フランス・ストラスブール)
13-16日 アジア最大規模の映像コンテンツ見本市「香港フィルマート」
13-16日 モザンビーク共和国のニュシ大統領が日本を訪問
14日 メキシコ1月鉱工業生産指数発表
14日 中国2月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 ドイツのメルケル首相が米国のトランプ大統領と会合(米国・ワシントン)
14-15日 米国FOMC
14-16日 アルメニアのサルグシャン大統領がロシアを訪問
14-18日 河井内閣総理大臣補佐官が米国を訪問
15日 オランダ下院選挙
15日 米国2月CPI、小売売上高統計発表
15日 薗浦外務副大臣が「アジア太平洋地域における統合イニシアティブに関するハイレベル対話」へ出席するため、ビニャ・デル・マールを訪問(チリ)
15日 米国連邦債務上限凍結が終了
15-17日 米国のティラーソン国務長官が日本を訪問
16日 ユーロスタット、2月CPI発表
16日か17日 ロシア1~2月鉱工業生産指数発表
16-17日 WTOサービス貿易理事会(スイス・ジュネーブ)
17日 CIS加盟国国際経済フォーラム、CIS経済理事会(ロシア・モスクワ)
17-18日 G20財務相・中央銀行総裁会議(ドイツ・バーデン・バーデン)
19-20日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(雇用・社会政策・健康相理事会非公式会合)(マルタ・バレッタ)

【来週の予定】
3月20日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ベルギー・ブリュッセル)
20日か21日 ロシア1月貿易統計発表
20日 東ティモール大統領選挙
20-21日 第5回アフリカCEOフォーラム(ジュネーブ)
20-24日 国際情報通信技術見本市「CeBIT 2017」(ドイツ・ハノーバー)
21日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
21-23日 ベトナム国際加工・包装技術展(プロパックベトナム2017)(ホーチミン)
22日 南ア2月CPI発表
22日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(ドイツ・フランクフルト)
22日か23日 ロシア2月雇用統計発表
23日 ECB一般理事会(フランクフルト)
23-24日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
23-29日 第28回アラブサミット(ヨルダン・アンマン)
24日 ロシア中銀理事会
24日 メキシコ1月小売・卸売販売指数発表
26日 ドイツ・ザールランド州議会選
26日 香港特別行政区行政長官選挙
26日 ブルガリア国民議会選挙
26日 千葉県知事選挙
26-28日 デンマーク王国フレデリック皇太子同妃両殿下が日本を訪問

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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