外交・安保カレンダー(1月30日-2月5日)

先週後半、ワシントンに出張してきた。第一の目的は、キヤノングローバル戦略研究所が現地のシンクタンク・スティムソンセンターと共催したシンポジウムに参加することだった。幸い、今回は前回以上に多くの旧友と会えたので、現地の雰囲気を直接感じとることができた。状況は予想以上に悪いと思う。

昨年末に続き、約一カ月ぶりのワシントンだったが、今回は大統領就任式後一週間だから、通常なら、新政権はとっくに始動している、いや「しているはず」だった。ところが、トランプ氏は相変わらず「選挙モード」のままらしく、「統治モード」に移行する気配は僅かしか見られなかった。

今回の出張中、政策面での気付きの点は今週木曜日の産経新聞と週刊新潮のコラムに詳しく書いたので、ご関心の向きはそちらを読んでほしい。ここでは新政権のロジ面で気になった点をご紹介しよう。簡単に言えば、今回ほどtransitionすなわち政権移行が混乱しているケースは珍しいということだ。

普通の年でも、政権移行は容易ではない。しかし、通常なら新大統領の側近や選挙チームの中に4年前、8年前の政府高官経験者がいるので、「政権移行」の限界については最小限の理解がある。ところが、今回はそれが全くない選挙チームがキャンペーン状態のまま、ホワイトハウスを占拠してしまったのだろう。

当然、事務的には大混乱となる。各省庁のトップが決まっていないのだから、次官以下の実務高官も当然いないのだ。実務の詳細に関する知識が不十分なまま、大統領令だけが乱発される。トランプ氏がNPD(自己愛的パーソナリティ障害)の典型症状を示しているとの指摘も聞いた。ホワイトハウス関係者からは夥しい量の不協和音的情報漏洩があるらしい。何もかも、驚くしかない。

「側近選挙チーム」のうち能力を欠いた連中が淘汰され、プロの「政策立案実施チーム」にとって代わられるまでには、通常でも数カ月かかる。しかし、今回は半年以上かかるのではないか。このままでは、いずれかの時点で内部対立が表面化し、何人かが象徴的に辞任するまで、大混乱が続くだろう。


〇欧州・ロシア
31日に英国議会がEU離脱法案の審議を始める。英最高裁が「離脱には議会の承認が必要」と判断したからだ。これでも離脱の方向性は変わらないのだろうか。2日にはロシア大統領がハンガリー首相と会い、ドイツ首相がトルコ大統領と会う。トランプ政権始動で欧州政治も活発化するのだろう。要注意だ。

〇東アジア・大洋州
2月初旬に米国の新国防長官が日韓を公式訪問する。トランプ氏は韓国首相に米国の防衛義務を確約した。どうやらマティス長官の下で同盟関係に激変が起こることはなさそうだ。問題は中国の出方だろうが、不気味なほど静かなのは当然としても、このまま人民解放軍が静かにしているかは疑問、要注意だ。

〇中東・アフリカ
トランプ氏の大統領令が混乱に拍車を掛けている。イスラム人口多数の7カ国からの移民・難民の入国を厳しく制限する大統領令は出たが、現場は大混乱だ。日本の一部には、対象国にトランプ氏がビジネスで深い関係にあるサウジ、トルコ、UAE、エジプト、インドネシアが含まれないのは何故かと問う声があるらしい。ビジネスと安保の区別もつかないのか、困ったことだ。他方、この措置に対するイスラム圏からの反発も半端ではなかろう。恐ろしい予感がする。

〇南北アメリカ
30日にヨルダン国王が訪米する。なぜ日本より先なのか、などと問わないでほしい。ヨルダンを重視するなんて、トランプ政権にしては上出来ではないか。今こそ、米国がシリアとイラクの周辺国に米国が「現状維持」の決意を示すべき時である。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。


1月30日 ブルネイ、モロッコ、レバノンから食品輸入規制当局関係者が日本を訪問
30日 外務省と国土交通省の主催による平成28年度第4回シティ・ツアー
30日 英国のメイ首相がアイルランドを訪問
30日 ヨルダンのアブドッラー国王陛下が米国を訪問
30-31日 ギリシャのチプラス首相がセルビアのブチッチ首相と会合(セルビア・ベオグラード)
30-31日 ブルガリアのRumen Radev大統領がブリュッセルを訪問
30日-2月1日 サイバー技術国際会議「サイバーテック2017」(イスラエル・テルアビブ)
30日-2月2日 中東地域医療産業見本市「アラブヘルス2017」(UAE・ドバイ)
30日-2月2日 欧州議会委員会会議(ベルギー・ブリュッセル)
30日-2月3日 トルコのメヴリュト・チャヴシュオール外相がアルゼンチン、パラグアイ、ドミニカ、メキシコを歴訪
30日-2月6日 対日理解促進交流プログラム「カケハシ・プロジェクト」でカナダ高校生が日本を訪問
30日-2月7日 JENESYS2016 招へいプログラム( 対象国:ASEAN10カ国、東ティモール及びインド、テーマ:経済)
31日 ユーロスタット、12月失業率発表
31日 最高裁「養子縁組無効確認」判決
31日 ブラジル12月全国家計サンプル調査発表
31日-2月1日 米国FOMC
31日-2月2日 バムジー緑の気候基金事務局長が日本を訪問
最終週 アンゴラ中銀、金融政策委員会
初旬 中国2017年主要統計の発表日程公表
上旬 ケニア中央銀行、金融政策委員会
上旬 中国2016年通年貿易統計発表
上旬 インド2016年度GDP予測発表
上旬 メキシコ12月CPI、自動車生産・販売・輸出統計、11月鉱工業生産指数発表
上旬 ブラジル12月IPCA発表
中旬 メキシコ12月雇用統計発表
中旬 中国2016年通年経済指標(GDP、CPI、固定資産投資、社会消費品小売総額など)発表
中旬 南ア12月CPI発表
中旬 ブラジル11月月間小売り調査発表
下旬 ブラジル12月全国家計サンプル調査発表
下旬 ナイジェリア中銀、金融政策委員会
下旬 第28回アフリカ連合(AU)総会(エチオピア・アディスアベバ)
下旬 メキシコ11月小売・卸売販売指数、12月貿易統計発表
下旬-2月上旬 第19回東アフリカ共同体(EAC)首脳会合
月内 オーストリアのクルツ外務・欧州統合相がジョージア訪問
月内 IMF、世界経済見通し(World Economic Outlook)発表
月内 世界銀行、世界経済見通し(Global Economic Prospects)発表
月内 ジョージアのクビリカシビリ首相がイタリア訪問
月内 英国最高裁、EU離脱通知の議会承認の要否に係る判決公表
月内 ウズベキスタンとタジキスタンの首都間で直行便運航が再開
月内 パキスタン中央銀行、金融政策決定会合
月内 西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)首脳会議(コートジボワール)
月末 米国大統領一般教書演説
2月1日 ブラジル12月鉱工業生産指数発表
1日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(ドイツ・フランクフルト)
1日 インド2017年度政府予算案発表
1日 米国FOMC
1-2日 欧州議会本会議(ベルギー・ブリュッセル)
1-2日 「Athens Energy Forum 2017」の開催(ギリシャ)
1-4日 米国のジェームズ・マティス国防長官が日韓を歴訪
2日 ロシアのプーチン大統領がハンガリーを訪問(ブダペスト)
3日 ロシア中銀理事会
3日 米国1月雇用統計発表
3日 英国除くEU首脳会合(マルタ・バレッタ)
5日 リヒテンシュタイン議会選挙

【来週の予定】
2月6日 EU外相理事会(ブリュッセル)
6日 第10回日本国際漫画賞授賞式(東京)
6-7日 モルドバのIgor Dodon大統領がブリュッセルを訪問
6-9日 アフリカ鉱業投資会議「マイニング・インダバ」(南ア・ケープタウン)
7日 米国12月貿易統計発表
7日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
7日か8日 ロシア1月CPI発表
7-8日 国際観光展「IMTM 2017」(テルアビブ)
7-17日 ウルグアイのバスケス大統領がロシアを訪問
8-10日 第2回国際観賞魚貿易と技術セミナー(コロンボ)
10日 日米首脳会談
12日 トルクメニスタン大統領選挙
12-14日 サウジ 水と環境フォーラム(SWEF)2017(リヤド)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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