外交・安保カレンダー(6月6日-12日)

今週はワシントン発の帰国便の中で書いている。今回初めて機上WiFiサービスを利用したが、19ドル95セントで飛行中ずっと使えるのは有り難い。この原稿もアラスカ上空あたりから送ることができた。世の中便利になったものだが、逆に「飛行機の中だから連絡しようがない」といった口実は使えなくなる。どっちが良いのか分からない。

今週はイスラム暦でラマダン(断食月)が始まる。正確にいつから始まるかは各国のイスラム法学者が実際に月を見て決める。また、断食といっても、一か月間ずっと食を絶つ訳ではない。日の出から日の入りまでだが、その間は水も飲んではいけない。6月は中東が最も暑い時期だが、こればかりはアッラーとの契約だから仕方がない。

米国の大統領選は相変わらずだ。週末にトランプ候補が再び大放言をやらかした。裁判係争中のトランプ大学問題で、こともあろうに担当判事を「メキシコ人だから、中立ではない」と批判したのだ。これには共和党主流派も猛反発。せっかくトランプとの共存の道を探り始めたのに、このままでは共和党は上院の多数を失いかねない。

共和党の受難は続くのか。一方、民主党の方は火曜日の「最後のスーパーテューズデー」で数の上ではクリントンが代議員の過半数を制するはずだが、サンダースは猛反発。スーパー代議員を除けば、クリントンは過半数を制しておらず、最終決着は7月の党大会で決まると主張する。

そもそもスーパー代議員は、サンダースのような偏った候補を民主党大統領候補にしないための制度だから、サンダースの主張には一理ある。今回は民主党の「主流に対する一般党員の怒り」が爆発し、そもそも論が蒸し返されたのだろう。サンダースは「出遅れた」にしては「出来過ぎ」たため、逆に撤退表明できなくなっているのかも。

〇欧州・ロシア
7日に欧州委員会が不法移民問題を解決するため、600億ユーロのアフリカ基金創設問題を議論する。提案者は伊首相らしい。気持ちは判るが、ではイタリアは一体いくら払うのか。総額が大きいだけに、加盟国間で話が纏まらないかもしれない。
10日にフランスで欧州サッカー協会主催のEuro2016トーナメント大会が始まる。テロリストにとっては絶好の機会だけに、警備は厳重を極めるだろう。何事もないことを祈るしかないが。

〇東アジア・大洋州
5-7日に米中戦略経済対話(S&ED)が北京で開かれる。今回が8回目になるが、回を重ねるほど成果は乏しいようだ。そもそも中国がこのような大人数の会議で本音を言ったり、戦略的な譲歩を行う筈はない。そこは米国も良く判っているが、他に妙案はない。こうして毎年長々と会議が続き、僅かな進展を成功と発表するしかないのだ。
6-10日に米軍とフィリピン軍がCARATと呼ばれる合同演習を行う。フィリピンといえばポピュリスト(大衆迎合主義者)の新大統領の対中政策が気になるところだが、軍事面では2014年以降、米比協力が着々と進んでいるようだ。

〇中東・アフリカ
7日にイスラエル首相がモスクワを訪問する。イスラエルとロシアの関係は今年が25周年らしいが、今回の訪問は単なるセレモニーではなかろう。ネタニヤフとプーチンだから、狐と狸の化かし合いになることは必至。これは見物である。

〇アメリカ両大陸
南米ではブラジル大統領の弾劾手続きが進んでいる。6日には大統領弾劾委員会が弾劾のための具体的手順を議論するそうだが、オリンピック開催直前とは思えない余裕である。日本だったらこうは行かないだろう。別の意味で、ブラジルは大国だと思う。

〇インド亜大陸
7-9日にインド首相が米国とメキシコを訪問する。近年の米印関係の進展には目覚ましいものがある。特に、軍事産業を含む、軍事面での協力が深まっている。 他方、最近の両国関係を見ていると、対中関係についてインドは米国が思うほど米印協力に前向きではない。
その典型例は、最近の米太平洋軍ハリス司令官の発言だ。同司令官がインドで「いずれ米印海軍は共同で航行するだろう」と発言したのに対し、インド側はこれを強く否定したという。さすがはインドだ、非同盟の伝統はまだまだ根強いということか。今週はこのくらいにしておこう。


6月6日 ラマダン(断食月)開始
6日 韓国顕忠日
6日 セントルシア議会選挙
6日 第3回日・インドネシア領事当局間協議(パリ)
6日か7日 ロシア5月CPI発表
6-7日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ルクセンブルク)
6-7日 日本の濵地外務大臣政務官が中国を訪問
6-8日 日本の木原外務副大臣がモンゴルを訪問
6-8日 日中社会保障協定(仮称)第5回政府間交渉(北京)
6-9日 欧州議会本会議(ストラスブール)
6-10日 国際原子力機関Board of Governors(ウィーン)
7日 イスラエルのネタニヤフ首相がロシアを訪問
7日 米大統領予備選挙(カリフォルニア、モンタナ、ニュージャージー、ニューメキシコ、サウスダコタ州)
7日 米国民主党党員集会(ノースダコタ州)
7日 南ア第1四半期GDP発表
7日 ユーロスタット、第1四半期実質GDP成長率発表
7日 CIS首脳会議(キルギス・ビシケク)
7-8日 ブラジル中銀、Copom
7-8日 WTO知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)理事会(ジュネーブ)
7-8日 インドのモディ首相がアメリカを訪問
8日 中国5月貿易統計発表
8日 ブラジル5月IPCA発表
8日 日中(上海市)高齢者産業交流会(上海)
8-10日 ベトナム国際小売り・フランチャイズショー(ホーチミン)
8-10日 スウェーデンのカール16世グスタフ・スウェーデン国王陛下がブータンを訪問
9日 中国5月CPI発表
9日 メキシコ5月CPI発表
9-10日 EU司法・内務相理事会(ルクセンブルク)
9-10日 「インフラストラクチャーアフリカ」(南ア・ヨハネスブルク)
9-11日 カンボジア・アーキテクト&ディコア(Architect&Decor)2016(プノンペン)
9-11日 エチオピア観光会議・展示会「MICE 東アフリカ 2016」(アディスアベバ)
9-11日 中国端午節休暇
10日 ドイツ5月CPI発表
10日 メキシコ4月鉱工業生産指数発表
12日 中国5月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
12-17日 第4回中国-南アジア博覧会(中国・昆明)
12-18日 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉第13回会合(オークランド)


【来週の予定】
6月13日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(ルクセンブルク)
13-15日 フィンランドのレニタ・トイヴァッカ外国貿易・開発担当相がポーランドを訪問
13日-7月1日 第32回国連人権理事会(ジュネーブ)
14日 米民主党大統領予備選挙(ワシントン)
14日 英国5月CPI発表
14日 ブラジル4月月間小売り調査発表
14日 米国5月小売売上高統計発表
14-15日 米国FOMC
14-16日 国連児童基金執行理事会(ニューヨーク)
15-17日 フィリピンセミコンダクターと電機展示会(PSECE)(マニラ)
15日 南ア4月自動車製造・販売統計発表
15日 英国労働市場統計(2~4月)発表
15日 フランス5月CPI発表
15日か16日 ロシア第1四半期経済活動別GDP統計(速報値)発表
16日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ルクセンブルク)
16日 インド4月鉱工業生産指数発表
16日 ユーロスタット、5月CPI発表
16日 米国5月CPI発表
16日か17日 ロシア1~5月鉱工業生産指数発表
16-17日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ルクセンブルク)
16-17日 炭素市場プラットフォーム第1回戦略対話(東京)
16-18日 サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(ロシア・サンクトペテルブルク)
16-19日 第2回カンボジア宝石&ジュエリーフェア(プノンペン)
17日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ルクセンブルク)
18日 イタリアのレンツィ首相がロシア訪問
18-20日 エチオピア国際鉱業展「Ethio International Mining Expo 2016」(アディスアベバ)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

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