2012年大統領選本格始動:アイオワ州予備選に見える共和党のジレンマ

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 日本ではお屠蘇気分がまだ残っている1月3日、アイオワ州での予備選とともに米国では大統領選挙が本格始動しました。最後の最後まで誰が勝利するか分からず、事前の勝利予想も、政治評論家の中でもミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事、リック・サントラム元上院議員、ロン・ポール元下院議員の間で分かれる状態でした。
 蓋を開けてみると、予想通りの大接戦で、3日深夜になっても「ロムニーとサントラムが同率首位、僅差でポール」の状態が続き、ロムニー元知事が30015票を獲得して勝利を確定したのは、4日早朝でした。30007票を取った2位のサントラム元上院議員との票差は僅か8票。これまでにない接戦となりました。
 そして、今回のアイオワ州での予備選挙は、共和党が今年の大統領選に向けて抱えるジレンマを顕著に示しています。共和党の大統領候補者選びは昨年から、支持率がどれほどがんばっても30%を超えない「低め安定」のロムニー元知事以外はミシェル・バックマン下院議員、リック・ペリーテキサス州知事、既にセクハラ疑惑により候補者選から脱落したハーマン・ケイン、先月、支持が急上昇したニュート・ギングリッチ元下院議長、と、ほぼ月替わりでさまざまな候補が入れ替わり立ち代わり共和党員の支持を集めていました。つまり、ブッシュ(当時)テキサス州知事が当初から本命視されていた2000年の大統領選挙と異なり、「本命不在」だということです。共和党支持者の間で「ホワイトハウス奪還」に向けた意欲は非常に高いにもかかわらず、です。
 これは何故なのでしょうか。2000―08年のブッシュ政権の間の保守化に加えて2010年の中間選挙で大きな影響力を発揮した「茶会運動」の支持者が共和党の中に入ってきたことにより、アメリカの共和党はこれまでになく内向きで、保守的かつ、政治的妥協を許さない雰囲気に包まれています。もともと「小さな政府」を信奉するのが共和党ではありますが、現在の共和党の主流を占める人々の主張は「連邦予算歳出削減」一本やりで、一切の妥協を許さない柔軟性に欠ける姿勢が世論の反発を招いています。昨年12月20日にワシントン・ポスト紙とABCニュースが共同で行った世論調査では、共和党議員に対する支持はわずか20%という厳しい評価です。つまり、なかなか好転しない経済、膨らむ国家財政赤字-とアメリカが将来に向けて大きな問題を抱える中、政治的に妥協しながら事態の打開を図ってほしいという一般の有権者の求める政治姿勢と大きく乖離しているのが現在の共和党なのです。
 そこで共和党支持者は、
(1) 自分たちの主義主張に近い候補者では本選で再選を目指すオバマ大統領に勝てない
(2) 本選で勝つ見込みがありそうなロムニー氏は、自分たちには穏健すぎる
というジレンマを去年から抱え続けているわけです。既に、一時は支持率でロムニー氏に肉薄していたミシェル・バックマン下院議員が大統領候補者選からの脱退を表明しており、リック・ペリー知事もその去就が取りざたされてはいますが、絶対的な本命候補がいない今の状況では、このジレンマを引きずったまま共和党の予備選はこの数ヶ月続いていくことになりそうです。
 再選を目指すオバマ大統領にとってこれほどラッキーなことはありません。議会の共和党に対する世論の反発もあり、支持率自体は多少持ち直してきてはいるものの、「経済」「雇用」という、今年の大統領選挙の2大焦点となる課題におけるオバマ大統領の政策に対する世論の目は依然、厳しいものがあります。前述の世論調査の結果を見ても、オバマ大統領への支持率は49%と、不支持の47%を僅かではありますが上回っているものの、経済や雇用問題でのオバマ大統領の政策を評価する人は44%程度しかいない、という結果が出ています。しかし、共和党側が本命候補を絞りきれずに今から夏の党大会までの予備選の期間を過ごせばすごすだけ、オバマ大統領は本選に向けて力を蓄えることができるのからです。
 来週の1月10日はニューハンプシャー州で次の予備選が、1月21日にはサウス・カロライナ州、とこれからは平均7-10日間の間隔で全米各地で予備選が行われていきます。なかでも、バージニア、マサチューセッツ、オハイオ、ジョージアを含む10州で同時に予備選が行われる3月6日は「スーパーチューズデー」と呼ばれ、通常は、この日を境に候補者の絞込みが急速に進んでいきます。それまでに今回、8票差というまさに「首の皮一枚」でアイオワ州予備選を制したロムニー候補が、ジレンマを抱える共和党支持者の間で支持を広げることができるか、目が離せない日が続きそうです。

(辰巳由紀 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員)
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