日本各地で暑い日が続くが、朝鮮半島も夏の暑さが本格化している。去る6月23日付韓国・聯合ニュースは、「(北朝鮮)国内で干ばつが深刻化している」との北朝鮮・労働新聞の報道を引用していた。韓国気象庁ホームページの「北韓予報」を見ると、北でも連日晴天が続き最高気温は北東部の咸鏡道を除き30度を超えている。その後、北の干ばつに関する続報はないが、この夏の天候次第では、秋の収穫期へ向け北の食糧事情が大いに気になるところだ。

猛暑と言えば、増えるのは電力消費。先月19日に文在寅大統領は「新規の原発建設計画を全面的に白紙化し、寿命を超えた原子炉は運転しない」と「脱原発」を宣言した。早速6月27日には、有言実行とばかり、新規建設中の原発建設中止を決定した。読者の中には覚えている方もいると思うが、韓国は2011年9月15日に全国的な大規模停電(ブラックアウト)を経験している。今夏も電力需要が伸びることが予想されており、韓国では脱原発による電力供給能力の低下を心配する声も出始めている。

安保関連ニュースでは、在韓米軍の主力部隊である米陸軍第8軍が7月11日に京畿道・平澤市のキャンプ・ハンフリーズ(Camp Humphreys)に作られた新庁舎の開館式を行った。ソウル市龍山からキャンプ・ハンフリーズへの移転作業は終盤を迎え、第8軍司令部が来月までに、在韓米軍司令部が本年11月に、それぞれ移転を完了する予定だ(注:戦時作戦統制権の移管延期により、米韓連合司令部は引き続き龍山に残る)。韓国メディアは、返還は米軍駐留から「64年ぶり」、いや日本統治時代から「113年ぶり」などと報じていたが、今後の課題は米軍基地の跡地利用問題だろう。ソウル市内中心部の跡地を公園として造成するというが、作業には紆余曲折が予想される。

この問題、実は既に昨年4月の段階で国土交通部が各省庁に公募をかけ、一旦は、公園の敷地内に警察庁管轄の警察博物館、文化体育観光部のこどもアートセンター、女性家族部の女性史博物館等を作ると発表したのだが、同計画はソウル市や環境団体の反対で白紙化された経緯がある。ちなみに、この女性史博物館には慰安婦関連の展示が予定されていたという。

折しも、女性家族部長官に就任したばかりの鄭鉉栢(チョン・ヒョンベク)成均館大学元教授は、10日に、就任後初の視察先として元慰安婦らが共同生活する「ナヌムの家」を訪問した。そこで同長官は慰安婦博物館建設を推進し、韓国の民間団体が推進する慰安婦関連資料のユネスコ記憶遺産への登録に予算支援すると明らかにした。焦点の博物館建設に関しては、当初計画の女性史博物館を活用するか、別途に慰安婦博物館を作る計画だという。この発言に対し、菅官房長官や岸田外務大臣が抗議したことは報道の通りだ。鄭長官は、韓国の代表的市民団体「女性連合」と「参与連帯」代表を6年ずつ務め、特に、女性連合代表時代は韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)を支援してきたといわれる。今後は、彼女の言動がどこまで影響力を持つのか、日韓関係の火種となり得るのか、要注目となりつつある。

<7月第2週 朝鮮半島関連の主な動き>
8日
●米空軍B-1B(2機)が韓国空軍機とともに、江原道(カンウォンド)の空対地射撃場で「北朝鮮の核心施設を精密爆撃する」という想定で共同訓練を実施。グアムへの帰途において航空自衛隊のF-2との共同訓練も実施。

9日
●北朝鮮がICBMと主張する「火星14」の発射実験の成功を記念する公演が平壌で開催され、金正恩朝鮮労働党委員長も観覧。

11日
●日米韓の6か国協議代表がシンガポールで会合。
●韓国情報機関の国家情報院は、国会情報委員会において、「北朝鮮北東部の豊渓里で核実験が可能な状態だが、差し迫っているようには見えない」と報告。

12日
●日米韓の防衛当局がテレビ会議を実施。北のICBM発射を受けて対応を協議。
●統一部報道官は定例会見で、北朝鮮・金剛山観光再開には韓国人観光客の安全が保障され、北朝鮮核問題が進展する必要があるとの立場を示す。
●米国・通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表は声明で「米国は韓米FTAにともなう特別共同委員会の招集を韓国政府に正式要請した」と発表。

13日
●文在寅大統領は国防部長官候補に指名した宋永武(ソン・ヨンム)元海軍参謀総長の任命を強行。

14日
●北朝鮮外務省報道官は、「国連安全保障理事会が新たな対北朝鮮制裁決議を採択すれば、それに対抗する措置を取る」と言及。


(キヤノングローバル戦略研究所 研究員 伊藤 弘太郎)

2017年7月19日(水) | [ ]

薄熙来失脚後、2012年に吉林省党委書記から重慶市党委書記に昇格していた孫政才氏が先週突然解任された。本当か、なぜ彼なのか。孫政才といえば知る人ぞ知る、将来を嘱望された第6世代の逸材だ。本当に彼が失脚したとすれば、さすがは中国だ。やはり党大会の年には「何でもあり」ということか。

孫政才氏は1987年から党の活動に参加、翌年入党。北京市農林科学院大学院修了(作物栽培・耕作学)、農学博士。同科学院研究員、同科学院作物所研究室副主任、同科学院土肥所所長、同所党支部書記、同科学院副院長、同科学院党委員会副書記等を経て、中国共産党順義県委員会副書記に就任している。

その後、順義県副県長、代県長、県長、中国共産党北京市順義区委員会副書記、同区長、同区党委員会書記などを歴任した。2006年12月、第10期全国人民代表大会常務委員会第25回会議で農業部長就任が決定。2009年11月、吉林省党委員会書記に抜擢された。

更に、2012年11月には重慶市党委書記に就任し、当時、内モンゴル自治区党委書記から広東省党委書記となった同い年の胡春華氏とともに第6世代のホ-プとされ、「ポスト習」の有力候補として注目されていた。胡春華氏とは異なり、共産主義青年団出身ではないが、胡錦濤前総書記に近いといわれる。

問題は何故今、パージの対象が孫政才なのかということだ。これまでの経験から、昨日の今日では確度の高い情報は出て来ないだろうが、親族の腐敗などと言い始めたら、それこそ誰が捕まってもおかしくないのが中国だ。やはり、今年10月の党大会での人事の一環なのか。それにしても恐ろしい国だ。

〇欧州・ロシア
21日には核問題でイランと主要国との協議がジュネーブで行われる。一方、16日には金融犯罪との関連でイラン大統領の実弟が逮捕された。これがイラン内政の一環であることは間違いないが、イラン大統領再選後、経済制裁をめぐる米国との協議も進んでいない。同大統領の出方にはとても興味がある。

〇東アジア・大洋州
冒頭の中国共産党幹部人事の続きだが、孫氏のライバル胡春華氏は1963年4月生まれ、北京大学卒、湖北省出身の天才児といわれた。2006年まで一貫してチベットに勤務。1997年に共青団書記処書記、2007年に同団第一書記、2009年に河北省長、その後内モンゴル自治区党委書記から広東省党委書記に就任した。
胡氏も胡錦濤の直系といわれるが、彼の方は大丈夫なのか。今後二人とも失脚するなどという事態になれば、習近平氏への権力集中が更に進むだろう。それが本当に中国のためになるのか、正直なところ、筆者には分からない。

〇中東・アフリカ 
イラクのアバディ首相がIS(イスラム国)の拠点モースルを解放したと10日に表明してから一週間が経った。モースルの奪還は新たな問題を惹起し、特にシーア派ミリシアを支援したイランの影響力が強まることが懸念されている。問題はIS掃討後の米軍の動きだろう。
米軍部隊がイラクを去れば「力の真空」が生まれかねず、逆に残れば再び攻撃の対象となりかねない。どう転んでも、イラクが米国にとって鬼門となることだけは間違いなかろう。

〇南北アメリカ
 ロシアゲートの関連で、今度はトランプ氏の実の息子が集中砲火を浴びている。それにしても、このスキャンダルは底なしだ。逆に見れば、これだけ形勢が悪いのに、トランプ陣営は良く頑張っているのかもしれない。しかし、攻撃は最大の防御だ。防御だけで形勢逆転を期待することはできない。

〇インド亜大陸
先週紹介した日米印海軍合同演習は今週も続いている。今週はこのくらいにしておこう。

10-17日 日米印合同海上軍事演習(インド洋ベンガル湾)
10-19日 持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)(ニューヨーク)
10-21日 第85回国際化学物質安全性カード(ICSC)(ウィーン)
16-19日 岸田外務大臣がHLPFに出席するためにニューヨークを訪問
17日 米ロ高官協議再開(ワシントン)
17日 インド大統領選挙
17日 中国第2四半期マクロ経済統計(GDP、CPI、固定資産投資、社会消費品小売総額など)発表
17日 EU外相理事会(ブリュッセル)
17日 EU6月CPI発表(EU統計局)
17日 日・フィンランド社会保障協定第1回政府間交渉(ヘルシンキ)
17日か18日 ロシア上半期鉱工業生産指数発表
17-18日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
17、19日 WTOがブラジルに関する貿易政策レビュー(ジュネーブ)
17-19日 国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)閣僚級会合(ニューヨーク)
17-20日 河井内閣総理大臣補佐官がベトナム及び豪州訪問
17-20日 国連経済社会理事会(ECOSOC)本会期(ニューヨーク)
17-20日 アッバース・パレスチナ大統領が中国を訪問
17-23日 岸外務副大臣がアルバニア、ルーマニア及びクロアチアを訪問
17-24日 外務省がスリランカ柔道選手を招へい(スポーツ・フォー・トゥモロー)
18日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
18-28日 第19回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉会合(インド)
19日 米中包括経済対話(ワシントン)
20日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策、フランクフルト)
21日 メキシコ6月雇用統計発表
21日か24日 ロシア1-5月貿易統計発表
22日 アスタナ国際博「ジャパンデー」(カザフスタン)
22日 EUが改正特定有害物質使用制限(RoHS)指令で「産業用の監視・制御機器」への適用開始
22-23日 岸田外務大臣が駐日外交団と共に香川県及び兵庫県を訪問
23-28日 APECビジネス諮問委員会(カナダ・トロント)


【来週の予定】
24日 EU経済・財務省(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
24日か25日 ロシア6月雇用統計発表
24-28日 国際海事機関(IMO)第118回理事会(ロンドン)
24-9月15日 「国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト: ARDEC」第4回訓練開始(ナイロビ)
25日 メキシコ5月小売・卸売販売指数発表
25-26日 国連経済社会理事会(ECOSOC)本会期(ニューヨーク)
25-26日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
25-26日 ブラジル中央銀行、金融政策委員会(Copom)
27日 国連経済社会理事会(ECOSOC)組織会期(ニューヨーク)
27日 メキシコ6月貿易統計発表
27-30日 食品展示会2017(オークランド)
28日 ブラジル6月全国家計サンプル調査発表
28日 米国第2四半期GDP(速報値)発表
28日 ロシア中央銀行理事会
29日 ソユーズFGの打ち上げ(カザフスタン・バイコヌール宇宙基地)
7月中 IMF、経済見通し改訂版発表

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2017年7月18日(火) | [ ]

 7月1日付で着任した研究員の伊藤弘太郎です。今週より、私が気になった朝鮮半島関連(特に韓国)情報を、自分なりの見方とともにピックアップし、「今週の朝鮮半島」と題する短いコラムにまとめて毎週掲載します。朝鮮半島に関心ある読者のお役に立てば幸いです。

 
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7月第1週の朝鮮半島は大きく動いた。まず、4日に北朝鮮がICBMを発射。筆者の素人目には、何台ものカメラを使った発射シーン、弾頭の分離まで撮影した大気圏外からの映像、発射のカウントダウン表記が以前の古めかしいアナログからデジタルに変化したこと等が大いに気になった。北側に「見せる余裕」が出てきたことを感じさせる。

北のICBM発射以上に驚いたのは、翌5日に韓国軍合同参謀本部が公開した「戦略兵器映像」だ。初めて公開された巡航ミサイル「玄武3B」などの映像で、「北への強い牽制」だと報じられた。しかし、ここで紹介された北朝鮮の核・ミサイルを無力化するための「3軸体系」である①キルチェーン、②KAMD(韓国型ミサイル防衛)、③KMPR(大量反撃報復作戦)は、確かまだ構築途上の軍事システムや作戦概念だったはず。文在寅政権は大丈夫なのか。

文在寅といえば、同大統領は初外遊となる米国訪問(6月28日~7月2日)、ドイツでのG20(7月5日~10日)という11日間に及ぶ外交日程を無事終えた。6日発表の世論調査(ギャラップ)では83%の高い大統領支持率(前週比3%増)、更に71%が「今回の訪米を評価」していた。政権関係者もひとまず安心したことだろう。そんな中、今週特に気になったのは韓国製軍用機に関する記事だ。中央日報は「韓国航空宇宙産業、フィリピンに攻撃機12機引き渡し(4日付)」、「文在寅大統領「米国製戦闘機F-15購入するので韓国製高等訓練機T-50購入を(5日付)」と報じていた。

既にご存じの方も多いと思うが、現在、フィリピン・ミンダナオ島で行われているイスラム武装勢力に対する同国軍による空爆作戦には、韓国製のFA-50軽攻撃機が使用され活躍している。同機導入まで10年間ジェット戦闘機を持たなかったフィリピンにとって、韓国製攻撃機は貴重な戦力だ。韓国側はフィリピンによる同機の追加導入を強く期待している。

これまで韓国は、中国の南シナ海進出に対し、日米のような強い姿勢を示してこなかった。しかし、FA-50はインドネシアなどにも輸出されており、南シナ海沿岸国の軍事的能力構築の一助となっている。韓国はこうした実績を着実に積み上げつつ、当面の目標である米国へのT-50輸出に全力を注いでいる。今回の米韓首脳会談では文大統領がトランプ大統領に対し、「韓国が米国製戦闘機導入を拡大する代わりに、米国はT-50を購入する意思があるか打診した」などと報じられた。文在寅大統領は、「防衛産業の不正を正す」という選挙公約と、最重要政策である「雇用創出」にもつながる防衛産業の振興政策を、どう両立させていくのか。日本の航空・防衛産業にとっても要注目事項である。

<7月第1週 朝鮮半島関連の主な動き>
(6月30日 米韓首脳会談)
7月3日 文在寅大統領がオバマ前米国大統領と会談

4日
北朝鮮が「火星14号」発射と発表(特別重大放送)
文大統領はNSCを開催し北を非難

5日
韓米両軍は東海岸で弾道ミサイル射撃訓練を実施
北のミサイル発射をうけて国連安保理緊急会合が開催

6日
文大統領はドイツ・ベルリンにて演説。南北軍事境界線付近での双方の敵対行為の中止や南北離散家族の再会行事開催について協議する南北赤十字会談の開催を提案。
日米韓首脳会談
中韓首脳会談

7日
G20会合開催(〜8日)
日米韓が北朝鮮に対する共同声明発表
日韓首脳会談
露韓首脳会談

(キヤノングローバル戦略研究所 研究員 伊藤 弘太郎)

2017年7月11日(火) | [ ]

先週7月7日にようやく米露首脳会談が開かれたが、結果は散々だったようだ。G20首脳会議の際、ハンブルグで2時間以上会談したというが、露大統領は8日の記者会見で、「米側は露による米大統領選挙介入問題を何度も提起したが、露側は否定し、米大統領も露側の主張を受け入れ同意したと思う」と述べた。

勿論、ホワイトハウスはこれを強く否定。更に、9日早朝に米大統領はツイッター投稿で、露大統領とサイバーセキュリティー対策の組織創設に向け議論したと述べた。さすがにこれには共和党内から批判が相次ぎ、米大統領は投稿から数時間後に「同組織の実現は不可能」と再ツイートしたそうだ。

まだある。米大統領の実の息子が、昨年の大統領選挙中に、ヒラリー・クリントン候補に不利な情報を約束され、露政府とつながりのあるロシア人弁護士と会談していたという。トランプ氏の息子は会談は認めたものの、大統領選とは無関係だったとコメントしたそうだ。

それにしても、トランプ氏の頭の中は、一体どうなっているのだろう。こうして事実関係を纏めているだけで吐き気がしてくる。やはり「終わりの始まり」を感じざるを得ないのだが、本人は気にしていないのか、それとも、何も打つ手がなく手詰まりなのか、どちらかだろう。先が思いやられる。

〇欧州・ロシア
先週は中国国家主席の一連の欧州訪問後、7-8日にG20会合があったが、そこで大向こうを唸らせるような成果があった訳ではない。それでは失敗だったかというと、とんでもない。中国の外交は一貫している。米国と対抗するためならロシアとも組む。米EU関係を分断するため欧州、特にドイツを重視する。
中国の国家主席にロシア大統領やドイツ首相のような国際感覚があるとは到底思えないが、中国には民主主義と自由なメディアがない分、リアル・ポリティックスに集中できる政治環境がある。ここが、現代日本との最大の違いだ。日本の国会では今も●●学園の話ばかり。時間が惜しい気もしないではない。

〇東アジア・大洋州
10日から、日米印3カ国による合同海上軍事演習「マラバール」がインド洋ベンガル湾で実施される。日本からは護衛艦「いずも」が参加する予定で、日米印の連携を示し、中国を牽制する狙いがあると報じられた。10日から湾内訓練、14日からはインド東方海域で対潜水艦戦訓練などを行う。
インド洋で日米印がこの種の活動を始めて久しく、戦略的な意味合いも大きい。しかし、インドは亜大陸国家、日米のような海洋国家ではない。彼らはインド洋で中国艦船がうろつき回ることは断固拒否するだろうが、ニューデリーが対中牽制に使われることも拒否する。これがインドの非同盟主義なのだ。

〇中東・アフリカ 
イラクのアバディ首相がイラク北部モースルに順調に進んでいることをアピールしたいのだろう。イスラム国の侵入から三年、当時は米軍の最新装備で武装したイラク正規軍があろうことか敵前逃亡し、モースルは大量の軍事物資とともにイスラム国の手に落ちた。ようやく帰ってきたということだ。
しかし、これで全てが元へ戻る訳ではない。内政上気になるのは、モースル「解放軍」がスンニー主体の正規軍、イランが支援するシーア派ミリシアとクルド・ペシュメルガの混成部隊であることだ。モースルにクルド部隊とシーア派ミリシアが同時に入るのは歴史上なかったこと。むしろ今後の方が心配だ。

〇南北アメリカ
今週、米国務長官がトルコとクウェートを訪問するが、大変結構なことだ。今の中東湾地域でややこしいのはカタルの動き。だが、カタル人は誇り高い人々だから、一筋縄ではいかないだろう。このカタルと同様、独自の動きをしているのがトルコであり、ある意味でクウェートだ。国務長官は湾岸の微妙な国際関係を理解する必要がある。

〇インド亜大陸
日米印海軍合同演習については既に触れた。今週はこのくらいにしておこう。

7-10日 UAE経済大臣がロシアを訪問
9-10日 NATO事務総長がウクライナを訪問
9-10日 ティラーソン米国務長官がトルコを訪問(イスタンブール)
9-13日 小田原外務大臣政務官がシンガポール、ネパール及びラオス訪問
9-15日 薗浦外務副大臣が米国、ベルギー、クウェート及びチュニジア訪問
10-12日 安倍総理がデンマーク、フィンランド及びエストニアを訪問
10日 ティラーソン米国務長官がクウェート訪問
10日 中国6月CPI発表(国家統計局)
10日 ユーログループ(ブリュッセル)
10日 第157回国連食糧農業機関(FAO)理事会(ローマ)
10-13日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル・欧州議会)
10-13日 香港ファッション・ウィーク(春/夏)
10-13日 産業総合博覧会「イノプロム」開催(ロシア・エカテリンブルク)
10-14日 国連人権理事会(ジュネーヴ)
10-17日 日米印合同海上軍事演習(インド洋ベンガル湾)
10-19日 持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(ニューヨーク)
10-21日 第85回国際化学物質安全性カード(ICSC)(ウィーン)
11日 ロシア第2四半期国際収支統計発表
11日 EU経済・財務省(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
12日 インド5月鉱工業生産指数発表
12日 ブラジル5月月間小売り調査発表
12日 メキシコ5月鉱工業生産指数発表
12-15日 ハーニ・アル=ムルキー・ヨルダン首相が訪日
13日 6月米財政収支(財務省)
13日 中国第2四半期貿易統計発表(中国税関総署)
13-14日 外務省と宮崎県共催の駐日各国外交団宮崎県視察ツアー実施
13-15日 シリセーナ・スリランカ大統領がバングラデシュを訪問
14日 トランプ・米大統領がフランス革命記念日のパレードに出席(パリ)
14日 米国6月消費者物価指数(CPI)及び小売売上高統計発表
14日 ソユーズ2.1a(Kanopus-V-IK他)の打ち上げ(カザフスタン・バイコヌール宇宙基地)
14-15日「将来の課題のための日・オーストラリア委員会」第21回会合の開催
14-16日 国際ヘルスケア展(コロンボ)
15日 長征3B(航法則位衛星第三世代北斗2機)の打ち上げ(四川省・西昌衛星発射センター)
16日 米中「100日計画」最終日

【来週の予定】
17日 インド大統領選挙
17日 中国第2四半期マクロ経済統計(GDP、CPI、固定資産投資、社会消費品小売総額など)発表
17日 EU外相理事会(ブリュッセル)
17日 EU6月CPI発表(EU統計局)
17日か18日 ロシア上半期鉱工業生産指数発表
17-18日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
17、19日 WTO、ブラジルに関する貿易政策レビュー(ジュネーブ)
17-20日 経済社会理事会(ECOSOC)本会期(ニューヨーク)
18日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
20日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策、フランクフルト)
21日 メキシコ6月雇用統計発表
21日か24日 ロシア1-5月貿易統計発表
22日 アスタナ国際博「ジャパンデー」(カザフスタン)
22日 EU、改正特定有害物質使用制限(RoHS)指令で「産業用の監視・制御機器」への適用開始
23-28日 APECビジネス諮問委員会(カナダ・トロント)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2017年7月11日(火) | [ ]

今週は珍しく日本の政治についてコメントする。普通なら黙っているところだが、今回ばかりはコメントせざるを得ない。世界のマスコミは今回の小池百合子知事の勝利に終わった都議選の結果をどう報じたのだろうか。安倍政権に関する世界の評価は変わるのだろうか。こんなことが結構気になるからだ。

そうはいっても、現時点で配信しているのは東京発のロイターだけらしい。その要旨は、


●安倍の自民党が都議選で歴史的敗北を喫し、スキャンダルで傷付いた総理の将来の問題を暗示している。


●石破茂氏は、「都民ファーストの勝利というより、自民党の歴史的敗北だ」と述べた。


●小池知事は総理を狙うとの観測もあるが、それがあるとしても2020年の東京五輪以降となる可能性が高い。


●日本の政治学者は、安倍が狙っていた自民党総裁三選と憲法改正は難しくなった、と語った。


●より重要なことは、日本の有権者が安倍政権はより尊大になったという印象を持ち始めたことだ。


●このダメージから回復するため安倍は内閣改造を狙っているが、それは逆効果ともなり得る・・・・


毎回この種の記事を書くのは日本在住の長い名物記者だが、内容的には政府に批判的な邦字紙の記事を纏めて書くケースが少なくない。逆に言えば、この種の邦字氏の論調が日本の内政関連記事のトーンを決めるのだ。今後、ワシントンポストやフィナンシャルタイムズがどう書くか、個人的には興味津々だ。

 
〇欧州・ロシア
3-4日に中国の国家主席がロシアを訪問し、首脳会談を行う。更に、同主席は5-6日にドイツを訪問し首脳会談を行う。7-8日に予定されるG20前の欧州歴訪だが、中国の外交には無駄がない。民主主義のない国の外交は実にプロフェショナルである。

〇東アジア・大洋州
2日の米保守系メディアは米国防当局者の話として、米海軍艦船が中国が実効支配する南シナ海の西沙(パラセル)諸島のトリトン島から12海里内を航行したと報じた。5月に南沙(スプラトリー)諸島で実施して以来の「航行の自由」作戦となる。
同作戦はトランプ政権下で既に2度目。しかも、同大統領は翌日に中国国家主席と電話協議を控えていた。トランプ政権の対中政策は意外に強硬だ。それがトランプ氏の本心なのか、それとも、単にオバマ大統領がやらなかったことをやっているだけなのか、は正直分からない。

〇中東・アフリカ 
イラクのアバディ首相はイラク北部モースル奪還作戦が「あと数日で終わる」などと公言していたが、民間人の犠牲を考慮してか、まだ実現していない。1980年代、アサド(父親)大統領は、イスラム過激派に対し情け容赦のない掃討作戦を実施し、民間人に多大な犠牲者が出たが、全く意に介さなかった。時代は変わったのだ。

〇南北アメリカ
トランプ政権は健在だ。結果次第では中間選挙前にも共和党議員が「トランプ降し」を始めるかと思われたジョージア州下院議員補選は、共和党候補がかろうじて勝利した。これで大統領弾劾の話は当分動かないのだろう。これでワシントンの政治エリートたちの憂鬱は終わりそうにない。

〇インド亜大陸
4日にインド首相がイスラエルを訪問する。目立たない訪問だが、極めて重要だと思う。今週はこのくらいにしておこう。

6月27日-7月6日 対日理解促進交流プログラムJENESYS2017(韓国大学生訪日団)(東京)
2-12日 ユネスコの世界遺産委(ポーランド・クラクフ)
3日 EU5月失業率発表(EU統計局)
3日 外務大臣及び福岡県知事が地方創生支援レセプションを共催(飯倉公館)
3日か4日 ロシア需要項目別GDP統計発表
3-4日 中国・習主席がロシアを訪問、首脳会談(モスクワ)
5-6日 中国・習主席がドイツを訪問、首脳会談(ベルリン)
3-5日 ライチャーク第72回国連総会議長が訪日
3-6日 欧州議会本会議(ストラスブール)
3-8日 第40回国連食糧農業機関(FAO)会議(ローマ)
3-16日 テニス・ウィンブルドン選手権(ロンドン)
3-21日 第50回国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)(ウィーン)
4日 米国・独立記念日でニューヨーク市場休場
4日 ブラジル5月鉱工業生産指数発表
4-5日 シリア和平協議(カザフスタン・アスタナ)
4-6日 インド・モディ首相がイスラエルを訪問
4-7日 機械総合展示会(MTA)ベトナム2017(ホーチミン)
5-7日 米・トランプ大統領がポーランドを訪問(ワルシャワ)
5日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策、フランクフルト)
5、7日 WTO、EUに関する貿易レビュー(スイス・ジュネーブ)
6日 平成29年度外務大臣表彰式及びレセプション(飯倉公館)
6日 米国5月貿易統計発表(商務省)
6-7日 経済社会理事会(ECOSOC)本会期(ニューヨーク)
6日か7日 ロシア6月CPI発
7日 米国6月雇用統計発表(労働省)
7日 ブラジル6月拡大消費物価指数(IPCA)発表
7日 メキシコ6月CPI発表
7-8日 G20首脳会議(ドイツ・ハンブルク)
7-9日 ブラジル日本祭り2017「Festival do Japao」(サンパウロ)
8日 秋篠宮家の長女眞子さまの婚約発表
9日 奈良市長選挙(奈良県)

【来週の予定】
10日 中国6月CPI発表(国家統計局)
10日 ユーログループ(ブリュッセル)
10日 第157回国連食糧農業機関(FAO)理事会(ローマ)
10-13日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル・欧州議会)
10-13日 香港ファッション・ウィーク(春/夏)
10-13日 産業総合博覧会「イノプロム」開催(ロシア・エカテリンブルク)
10-14日 国連人権理事会(ジュネーヴ)
10-21日 第85回国際化学物質安全性カード(ICSC)(ウィーン)
11日 ロシア第2四半期国際収支統計発表
11日 EU経済・財務省(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
12日 インド5月鉱工業生産指数発表
12日 ブラジル5月月間小売り調査発表
12日 メキシコ5月鉱工業生産指数発表
13日 6月米財政収支(財務省)
13日 中国第2四半期貿易統計発表(中国税関総署)
14日 米・トランプ大統領がフランスを訪問
14日 米国6月消費者物価指数(CPI)及び小売売上高統計発表
14日 ソユーズ2.1aの打ち上げ(カザフスタン・バイコヌール宇宙基地)
14-16日 国際ヘルスケア展(コロンボ)
15日 長征3B(航法則位衛星第三世代北斗2機)の打ち上げ(四川省・西昌衛星発射センター)
16日 米中「100日計画」最終日

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2017年7月 4日(火) | [ ]