先週も米国のトランプ氏に世界が振り回された。8月5日に全会一致で採択された安保理決議第2371号は、先週申し上げた通り、従来の制裁措置を強化し、北朝鮮との間のヒト、モノ、カネの流れを更に厳しく規制する内容だった。勿論完璧ではないが、一定の前進には違いなかろう。

普通ならここで北朝鮮の出方を見るのが外交の定石だが、今の米政府には常識が通用しない。8月8日トランプ氏は、北朝鮮が米国をこれ以上脅かせば、北朝鮮は「世界がこれまで目にしたことのない炎と怒り(fire and fury)に直面する」と吠えた。恐らくアドリブの発言だろうが、何たることか。

より正確には、"They will be met with fire and fury like the world has never seen ... he has been very threatening beyond a normal state. They will be met with fire, fury and frankly power the likes of which this world has never seen before."と言ったらしい。おいおい、子供の喧嘩じゃあるまいし。

日本では以上が先週の最大関心事だったが、へそ曲がりの筆者の関心はちょっと違う。米国内の最大関心事はバージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義を掲げる団体と反対派の衝突事件だった。トランプ氏は12日、「各方面の憎悪、偏見、暴力」を非難したが、最後まで白人至上主義の秘密結社クー・クラックス・クラン(KKK)やネオナチを名指しで批判することはなかった。

これに対し、米国のネオナチグループはこうコメントした。Trump comments were good. He didn't attack us. He ... implied that there was hate...on both sides! ...Also refused to answer a question about White Nationalists supporting him. No condemnation at all. When asked to condemn, he just walked out of the room. Really, really good. これを日本語にしてみよう。皆さんはどう思うか。

「トランプのコメントは良かった。彼は我々を攻撃しなかった。双方に憎悪があると示唆した。・・・彼を支持する白人民族主義者に関する質問には答えなかった。非難は全くなかった。非難すべしと求められた時、彼は退席した。とても、とても良かった。」

これは米国なる国家のあり方そのものに関わる大問題だ。トランプ氏はやはり米国のダークサイドが生んだ政権である。ちなみに、この極右グループのウェブサイトは次の通りだ。一回見る価値はある。https://www.dailystormer.com/ 

〇欧州・ロシア
欧州大陸は今週も開店休業、完全にサマーバケーションモードだが、14-18日に英政府がEU離脱に関するポジションペーパーを公表する予定という。一方、17日には日露次官級協議がモスクワで開かれる。7日に河野外相がマニラでロシア外相と初めて会談し合意したというのだが、一体何を話すのだろうか。

〇東アジア・大洋州 
〇南北アメリカ
前述の8日のトランプ「炎と怒り」発言に対し、10日、北朝鮮中央通信(KCNA)は、同国が「弾道ミサイル4発を米領グアムに向け発射する計画を8月中旬までに策定する」と報じた。これを受け同日、トランプ氏は8日の「炎と怒り」発言について「厳しさが足りなかったかもしれない」と再び即興で述べた。
更にトランプ氏は、「北朝鮮がグアムに対して何かすれば、誰も見たことのないような事態が北朝鮮で起きるだろう」と再び警告した。また、先制攻撃を検討するかとの質問に対しては、「何が起きるかを見極める(We will see)」とだけ述べたという。
筆者のコメントは三つ。第一は、トランプ外交がやはり危険であること。トランプ氏が金正恩と同レベルでないことを祈るしかない。第二は、トランプ氏の警告は北朝鮮よりも中国に向けられたものであること。第三に、ホワイトハウスの内の軋轢は危機的状況にあり、ケリー新首席補佐官でも十分調整できていないらしいことだ。先が思いやられる。

〇中東・アフリカ 
15日にシリアの反政府勢力の「高級交渉委員会」がリヤドで会合を開く。16日にはイラクの裁判所が、キルクークの政府庁舎にクルドの旗を掲げることの是非について公聴会を開くという。一応イラクでは民主制度が動いているように見えるが、恐らく判断は「否」だろう。問題はその後のクルド側の対応だ。

〇インド亜大陸
15日のインド独立記念日に際し、中国人民解放軍の代表が五か所でインド側と会合を持つそうだ。今週はこのくらいにしておこう。

7月31日-8月18日 国際海底機構(ISA)第23回総会(ジャマイカ・キングストン)
7-21日 第99回全国高校野球選手権大会(甲子園球場)
12-20日 震災復興交流サッカー・ネパール代表チームを招へい(日中植林・植樹国際連帯事業)
13-15日 トゥルクメニスタン・メレドフ副首相兼外相がインドを訪問
13-18日 米・ペンス副大統領がコロンビア及びアルゼンチン、チリ、パナマを訪問
14日 中国7月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 中国・汪洋国務院副総理がネパールを訪問
14日 協商会議(西アフリカ5カ国の協力機構)理事会(トーゴ)
15日 韓国光復節
15日 ケニア大統領選挙公式結果発表(就任式は29日)
15日 米国7月小売売上高統計発表
15日 ブラジル6月月間小売り調査発表
15日 ファルコン9(スペースX社商用補給機12号機ドラゴン)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
15日か16日 ロシア1-7月鉱工業生産指数発表
16日 水銀の使用や輸出入を国際的に規制する「水俣条約」が発効
16日 7月の訪日外国人数発表(日本政府観光局)
16日 7月25, 26日開催分の米連邦公開市場委(FOMC)議事要旨(FRB)
16-20日 北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉第1回会合(ワシントン)
17日 EU7月消費者物価指数(CPI)発表(EU統計局)
17-21日 フード・エキスポ(香港)
18日 アトラスV(データ中継衛生TDRS M)(ケープカナベル空軍基地)
18-30日 APEC第3回高級実務者会合(ベトナム・ホーチミン)
19-30日 第29回夏季ユニバーシアード競技大会(台北)

<8月21日-27日>
21日 約1世紀ぶりの全米横断皆既日食
21-24日 自動車部品関連展示会「アフトメカニカ」(モスクワ) 
21-31日 国連包括的核実験禁止機関 準備委員会作業部会B及び非公式・専門家会議第49回会期(ウィーン)
22日 メキシコ第2四半期GDP発表
23日 メキシコ6月小売・卸売販売指数発表
23日 ロシア第1四半期対内外直接投資統計発表
23日 アンゴラ大統領選挙・国民議会選挙
23日か24日 ロシア上半期貿易統計、7月雇用統計発表
23-26日 自動車部品関連展示会「インテルアフト」(モスクワ)
23-27日 ネパール・デウバ首相がインドを訪問
24-25日 フランス・マクロン大統領がルーマニア及びブルガリアを訪問
24-25日 第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)閣僚級フォローアップ会合(モザンビーク・マプト)
25日 メキシコ7月雇用統計発表
25日 タイ・インラック前首相に対する最高裁判決
25日 ファルコン9(地球観測衛星Formosat5およびSherpa小型衛星搭載機構)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
27日 茨城県知事選挙

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2017年8月15日(火) | [ ]

先週7月28-29日深夜に北朝鮮が2度目のICBM発射実験を行った。直後の29日早朝、某公共放送から電話が入り、翌日の日曜討論出演が決まった。今回の発射の意味、北朝鮮の意図は、国際社会は何を?いずれも定番の質問だった。

北朝鮮の意図は、軍事的挑発ではなく、交渉上の挑発だ。米国本土に届く核弾頭付きICBMを実戦配備し、力の立場から米国に北朝鮮を核兵器保有国として認めさせ、対北朝鮮平和条約を締結させ、その上で生き残りたいのだ。

しかし、それは自殺行為ではないか。核弾頭付きICBMが米本土に届けば、米国のホームランドセキュリティとなるから、米国は本気で自衛権行使を考える可能性が出てくる。北朝鮮はそれで本当に良いのか。

今回のICBMは3725キロ上空まで達し、47分12秒=2832秒で998キロ飛んだという。ネット上には便利な計算サイトがあり、放物運動の高度と距離から初速を計算し、その初速で打ち出し角度を45度にすれば最大射程が計算できる、http://keisan.casio.jp/exec/system/1204505768ハズだったのだが、どうやっても計算が合わない。重力係数は間違いなさそうだが、空気抵抗の誤差か、速度が変化するから実際の飛行時間とは違うのか。北朝鮮問題の詳細は今週木曜日の産経新聞コラムをお読み頂きたい。

今週はトランプ氏の「中国には大いに失望した、口だけで何もしない、このままでは許さない」発言と習近平氏の「人民解放軍を世界一流の軍隊にする(どちらも7月30日)」発言に笑った。米中首脳の発言は意外に軽いのだ。

〇欧州・ロシア
8月1日にイタリア政府が難民の流入を止めるためリビアに艦船を派遣する案を議会に送付するという。そういえば、地中海はもう夏だから、また難民が殺到しているのだろうか。犠牲者が出ないとニュースにならないのか。考えただけでも胸が痛む。

〇東アジア・大洋州
8月1日に習近平・党中央軍事委員会主席が建軍90周年演習を視察する。前日には軍事パレードに出席し、「人民解放軍を世界一流の軍隊にする」と述べたそうな。ということは、人民解放軍はまだ「世界一流」ではないということか。
8月2~8日にマニラで第50回ASEAN外相会議が開かれる。拡大外相会議には日米中露韓と北朝鮮が参加する。もう50回になったか。昔は、アトラクションをやったり、お遊びのような会議だったが、今はどうなのだろう。

〇中東・アフリカ 
7月31日にサウジアラビアにイラン巡礼団の第一陣が到着する。これからハッジが始まるのか。イランといえば、4日から北朝鮮の金永南・最高人民会議常任委員会委員長がテヘランを訪問し、5日にはローハニ大統領と会談する。
イランといえば、北朝鮮にミサイル技術を提供しているはずだが、まあこのレベルで核兵器の詳細が議論されるとは思わない。それにしても、金永南氏は大したものだ。あの国で粛清されないとは、それだけで偉大である。

〇南北アメリカ
過去3カ月の中国・北朝鮮関連のトランプ氏発言は右往左往した。
習氏はとても良い人で、何かしたいようだが、できない可能性もある(4月27日)、北朝鮮は中国や尊敬すべき習近平国家主席の思いに敬意を払わない(4月28日)、習氏は友人だが、北朝鮮でもう少しやってくれるはず、様子を見たい(7月14日)、中国には大いに失望、喋るだけで何もしない、このままでは許さない(7月30日)。
中国については「友人」から「失望」に180度変わった訳だが、これで本当に外交になるのか。ホワイトハウスの首席補佐官が元軍人に交代するが、これを機に、トランプさん、こんな発言はもう止めて、もっと仕事をしたらどうですか。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

24日-8月2日 武井外務大臣政務官が米国、カナダ、パナマ及びホンジュラスを訪問
25日-8月3日 対日理解促進交流プログラムJENESYS2017で韓国青年訪日団が訪日
27日-8月4日 アブラアム国際司法裁判所所長が訪日
30日-8月2日 ペンス・米副大統領がエストニア、ジョージア、モンテネグロを訪問
30日-8月5日 ビデガライ・メキシコ合衆国外務大臣が訪日
31日 外務省及び国土交通省がASEAN設立50周年記念シティ・ツアーを開催(東京)
31日 長征3B(航法測位衛星第3世代北斗2機)の打ち上げ(四川省・西昌衛星発射センター)
31日 中国製造業PMI発表(国家統計局)
31日 EU・6月失業率発表(EU統計局)
31日-8月11日「核兵器用核分裂性物質生産禁止条約」第1回ハイレベル準備会合(ジュネーブ)
31日-8月18日 国際海底機構(ISA)第23回総会(ジャマイカ・キングストン)
8月1日 ブラジル6月鉱工業生産指数発表
1日 4-6月期のユーロ圏GDP速報値(EU統計局)
1日 米国・6月個人所得、個人消費支出(PCE)発表(商務省)
2日 7月の消費動向調査発表(内閣府)
2日 地方創生支援のための外務大臣及び岡山県知事共催レセプションを開催(飯倉公館)
2日 ヴェガ(環境モニタリング衛星など)の打ち上げ(仏領ギアナ基地)
2-8日 第50回ASEAN外相会議(マニラ)
3日 アトラスV(データ中継衛星TDRS M)(ケープカナベラル空軍基地)
4日 6月の毎月勤労統計調査発表(厚労省)
4日 米国・6月貿易統計(商務省)、7月雇用統計発表(労働省)
4日 ルワンダ大統領選挙
4日か7日 ロシア7月消費者物価指数(CPI)発表
4-13日 陸上世界選手権(ロンドン)
5日 イラン新内閣発表
5日 モーリタニア国で改憲国民投票
6日 広島市原爆死没者慰霊式並びに平和記念式(広島市平和記念公園)
6-9日 カンボジア・フン・セン首相が日本を訪問

【来週の予定】
7-11日 第19回人権理事会諮問委員会(ジュネーブ)
8日 中国7月貿易統計発表
8日 ケニア大統領選・国民議会選挙
9日 長崎原爆犠牲者慰霊平和記念式典(長崎市平和公園ほか)
9日 中国7月消費者物価指数(CPI)発表
9日 ブラジル7月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
9日 メキシコ7月消費者物価指数(CPI)発表
11日 米国7月消費者物価指数(CPI)(労働省)
11日 メキシコ6月鉱工業生産指数発表
11日 ロシア第2四半期GDP成長率(速報値)発表
11日 「みちびき3号機」(準天頂衛星)の打ち上げ(種子島宇宙センター)
11-13日 CRT(ココナッツ、ゴム、紅茶)国際展(コロンボ)
13日 西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)首脳会議(ベナン)
13-18日 ペンス・米副大統領をコロンビア、アルゼンチン、チリ、パナマを訪問

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2017年8月 1日(火) | [ ]

 今週は北朝鮮経済に関する楽観論と悲観論がほぼ同時に流れた。まずは、先週紹介した北朝鮮の干ばつに関するニュースの続報だ。FAO(Food and Agriculture Organization:国連食糧農業機関)は、今年の北朝鮮が2001年以来最悪の干ばつで、4月から6月の作物植え付け時期に降水量が十分でなかったため、2017年の穀物生産は昨年より3割以上減少すると推計しているそうだ。
(参考:http://www.fao.org/news/story/en/item/1025100/icode/

 この関連で、24日付の韓国聯合ニュースは、「中国の旅行会社によると今月末から8月まで開催予定だった「第2回平壌大同江ビール祝典」が突然中止になった」と報じた。「干ばつとの関係で中止になったのではないか」とする同旅行会社の憶測情報ではあるが、今後の情報に注目したい。
(参考:https://koryogroup.com/blog/pyongyang-beer-festival-2017-cancelled

 他方、これとはまるで対照的なのが、21日に韓国で発表された北朝鮮に関する二つの経済指標だ。一つ目は韓国銀行が発表した推計であり、昨年の北朝鮮のGDPは前年比で3.9%増加したという。もう一つは、KOTRA(大韓貿易投資振興公社)が発表した北朝鮮の貿易動向に関する報告書で、昨年の北朝鮮の対外貿易規模は前年比4.7%増の65億5000万ドルと発表された。
 国連安保理の経済制裁が厳しくなったにもかかわらず、経済成長が前年のマイナスからプラス成長に転じたのはなぜか。恐らくは、制裁から除外された民生目的の対中石炭輸出などの伸びが下支えしているのだろう。元々経済規模の小さい北朝鮮が、経済制裁の影響をあまり受けることなく、着実に低成長ながらも経済を発展させている可能性は十分あるだろう。核・ミサイル開発と経済成長を同時に実現させる「並進路線」の成果が一定程度あるのかもしれない。

 今週、もう一つ気になったのが日韓関係だ。文在寅政権の対日政策の基本は安全保障・経済問題と歴史問題を分けて進める「ツートラック戦略」だった。日韓安保協力は、度重なる北朝鮮の軍事挑発に対抗すべく、日米韓の枠組みを中心に一歩ずつ実績を積み上げつつある。また、経済界や地方自治体間を中心に交流活性化を模索する動きも活発である。
 それでも、最近の韓国国内での日韓合意を巡る動きを見ていると、筆者は両国関係が日に日に悪い方向へ向かっているとの印象を抱かざるを得ない。2015年の日韓合意に基づき設立された和解・治癒財団の理事長が19日に辞意を表明した。既に同財団の理事が2名辞任しており、財団は事実上活動できなくなるとの報道もある。文在寅政権発足後、歴史問題では韓国国内で未来志向ではなく、過去志向的な動きが目立つ。言論NPOと東アジア研究院による日韓共同世論調査(7月21日発表)を見ても、日本国民の対韓感情も、少しずつではあるが、着実に悪化しているのが気になる点だ。
 安保・経済での協力関係を模索する動きは、あくまでも2015年の日韓合意以後の関係改善の流れで生まれてきたものだが、切り離したはずの歴史問題が今後再び爆発すれば、安保・経済分野の協力まで悪影響を被りかねない。韓国側には冷静で慎重な対応を望みたい。


<7月第3週 朝鮮半島関連の主な動き>

17日

● 南北軍事境界線付近での敵対行為中止に向けた軍事当局者会談を21日に、南北離散家族の再会に向けた赤十字会談を来月1日に開催するよう提案。


18日

● 文在寅大統領は「国防予算の国内総生産(GDP)比を「現在の2.4%から任期内に2.9%まで引き上げることを目標にしている」と明らかに。

● 米軍のポール・セルバ統合参謀本部副議長は上院軍事委員会の公聴会に出席し、北朝鮮が4日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)の射程について「(米国の一部に届く)能力は明らかにある」と言及。


19日

● 韓国新政権の「国政企画諮問委員会」が「国政運営五か年計画」を発表。

● 文在寅大統領は新原発の建設工事一時中断について、「(大統領選で掲げた)公約は(工事の)全面中止だったが、公約したからといって押し通すことは無理だと考え、民主的な手続きを踏むことにした」と説明。

● 宋永武(ソン・ヨンム)国防部長官とブルックス在韓米軍司令官が会談。


20日

● 韓国・済州島の市民団体が記者会見で、今年の10月中旬を目途に済州市にある日本総領事館前に「徴用工を象徴する像」を建てる計画だと発表。


21日

● 韓国政府が提案した軍事当局者会談と赤十字会談に北朝鮮が応じず。

● 韓日議員連盟訪日団が安倍首相と首相官邸で会談。


(キヤノングローバル戦略研究所 研究員 伊藤 弘太郎)

2017年7月26日(水) | [ ]

ヨルダンにあるイスラエル大使館で先週末発砲があり、ヨルダン人2人が死亡、イスラエル人1人が負傷した。17歳のヨルダン人が工具のドライバーを武器にイスラエル人警備担当者を襲ってきたという。イスラエル国内なら発砲は当然だろうが、場所はアンマンだ。ヨルダン民衆の反応が非常に気になる。

ヨルダンはヨルダン川東岸にあり、人口の過半数はパレスチナ人だが、既にイスラエルと平和条約を結んでいる。万が一、このヨルダンが不安定化すれば、地中海東岸の中東地域は大混乱になる。このような穏健でまともなアラブの国になぜ石油や天然ガスが出ないのか。アッラーは慈悲深いはずなのに。

一方、日本では国際情勢に関係のない獣医学部の「新設」や陸自PKO部隊の「日報」の議論に明け暮れている。誰もこれで良いとは思っていないだろうが、これはもう理屈ではない。政局や倒閣運動にしたい人々がいるのだろう。内政にコメントはしないが、やはり日本にもポピュリズムの足音が聞こえ始めた。

〇欧州・ロシア
24日から英米の政府関係者がイギリスEU離脱後の米英FTAについて話し合うという。翌25日に欧州委員会は、ドイツがノルドストリーム2というパイプラインでロシア天然ガスを購入する問題について議論するそうだ。これを見ていると、やはりドイツは「欧州」だが、英国は「欧州」ではないと痛感する。
米副大統領が28日からエストニア、ジョージア、モンテネグロを訪問するという。いずれも小さな国だが、ロシアとの関係では重要な役割を果たし得る国々ばかり。トランプ氏ではなく、ペンス氏のような「サプライズのない」要人を派遣して、米外交を安定化させることはとても重要だと思う。

〇東アジア・大洋州
24日に中国共産党が、孫政才・前重慶市共産党委員会書記を「重大な規律違反の疑い」で調査すると正式発表したそうだ。「重大な規律違反」とは汚職を意味するのだが、それではこの種の規律違反をしていない主要幹部が一体どこにいるのだろう。つくづく日本に生まれて良かったと思う。
27日は朝鮮戦争休戦協定の署名日であり、あれから64年経った。そう、1953年は筆者が生まれた年だから覚えやすい。その北朝鮮では26日から始める予定のビール祭りが中止されたという。昔平壌で飲んだ「大同江」ビールは実は予想以上に美味しかった。旱魃の悪影響はここまで及んでいるのか。

〇中東・アフリカ 
24日にイラク外相がインドを訪問、25日にはリビア政府関係者がパリを訪問してマクロン大統領と会談するという。このところ中東では大きなニュースがない。シリア内戦はどうか、モスル陥落後のイラクはどうか、スンニーアラブ主要国の対カタール経済制裁はどうなのか。水面下で動いている兆候はないが・・・。

〇南北アメリカ
ロシアゲートの関連で、24日、トランプ氏の娘婿が米上院情報特別委員会で非公開で証言した。クシュナー氏は証言に先立ち、大統領選中から複数回、ロシア政府関係者と面会していたことを明らかにする一方、ロシアとの共謀を否定する声明を発表したそうだ。しかし、証言は宣誓なしの非公開。これでは疑いは晴れないだろう。

〇インド亜大陸
インドの安全保障担当補佐官が26-27日に中国で開かれるBRICSの安全保障担当補佐官会議に出席する可能性があるという。何が話し合われるのやら。今週はこのくらいにしておこう。

18-28日 第19回東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉会合(インド)
19-26日 全米ジャパン・ボウル成績優秀者が訪日(対日理解促進交流プログラム)
19-28日 韓国青年訪日団が訪日(対日理解促進交流プログラムJENESYS2017)
23-24日 エルドアン・トルコ大統領がサウジ、クウェート、カタールを歴訪
23-28日 APECビジネス諮問委員会(カナダ・トロント)
23-30日 薗浦外務副大臣がトリニダード・トバゴ、セントルシア、スリナム、ジャマイカ及び米国訪問
23-30日 中国青年メディア関係者代表団が訪日(対日理解促進交流プログラムJENESYS2017)
24日 貿易経済に関する日露政府間委員会地域間交流分科会第6回会合を開催(富山市)
24日 IMFが経済見通し改訂版発表
24日 EU経済・財務省(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
24日か25日 ロシア6月雇用統計発表
24-28日 河井内閣総理大臣補佐官が米国訪問(ワシントンD.C.)
24-28日 国際海事機関(IMO)第118回理事会(ロンドン)
24-8月2日 武井外務大臣政務官が米国、カナダ、パナマ及びホンジュラスを訪問
24-9月15日 「国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト: ARDEC」第4回訓練開始(ナイロビ)
25日 外務省が海外へ三重県の魅力発信のため「車座ふるさとトーク」を開催(伊勢市)
25日 インド新大統領の就任式
25日 ハリーリ・レバノン首相がアメリカを訪問(ワシントンD.C.)
25日 メキシコ5月小売・卸売販売指数発表
25日 EU-トルコ間「ハイレベル政治対話」会議 (ブリュッセル)
25-26日 国連経済社会理事会(ECOSOC)本会期(ニューヨーク)
25-26日 米国連邦公開市場委員会(FOMC)
25-26日 ブラジル中央銀行、金融政策委員会(Copom)
27日 包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進に関する地域会合開催(外務省)
27日 国連経済社会理事会(ECOSOC)組織会期(ニューヨーク)
27日 プーチン・ロシア大統領がフィンランドを訪問
27日 メキシコ6月貿易統計発表
27-30日 食品展示会2017(オークランド)
28日 学生向けのCTBT及びその検証体制に関するシンポジウム(東京工業大学)
28日 日本6月雇用統計と消費者物価指数(統計局)
28日 ブラジル6月全国家計サンプル調査発表
28日 米国第2四半期GDP(速報値)発表
28日 ロシア中央銀行理事会
29日 ソユーズFGの打ち上げ(カザフスタン・バイコヌール宇宙基地)
30日 横浜市長選
30日-8月2日 ペンス・米副大統領がエストニア、ジョージア、モンテネグロを訪問
31日 長征3B(航法測位衛星第3世代北斗2機)の打ち上げ(四川省・西昌衛星発射センター)


【来週の予定】
7月31日 EU・6月失業率発表(EU統計局)
7月31日-8月11日「核兵器用核分裂性物質生産禁止条約」第1回ハイレベル準備会合(ジュネーヴ)
7月31日-8月18日 国際海底機構(ISA)第23回総会(ジャマイカ・キングストン)
8月1日 ブラジル6月鉱工業生産指数発表
1日 4-6月期のユーロ圏GDP速報値(EU統計局)
1日 米国・6月個人所得・消費(商務省)
2日 ヴェガ(環境モニタリング衛星など)の打ち上げ(仏領ギアナ基地)
2-8日 第50回ASEAN外相会議(マニラ)
3日 アトラスV(データ中継衛星TDRS M)(ケープカナベラル空軍基地)
4日 米国・6月貿易統計(商務省)、7月雇用統計発表(労働省)
4日 ルワンダ大統領選挙
4日か7日 ロシア7月CPI発表

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2017年7月25日(火) | [ ]

日本各地で暑い日が続くが、朝鮮半島も夏の暑さが本格化している。去る6月23日付韓国・聯合ニュースは、「(北朝鮮)国内で干ばつが深刻化している」との北朝鮮・労働新聞の報道を引用していた。韓国気象庁ホームページの「北韓予報」を見ると、北でも連日晴天が続き最高気温は北東部の咸鏡道を除き30度を超えている。その後、北の干ばつに関する続報はないが、この夏の天候次第では、秋の収穫期へ向け北の食糧事情が大いに気になるところだ。

猛暑と言えば、増えるのは電力消費。先月19日に文在寅大統領は「新規の原発建設計画を全面的に白紙化し、寿命を超えた原子炉は運転しない」と「脱原発」を宣言した。早速6月27日には、有言実行とばかり、新規建設中の原発建設中止を決定した。読者の中には覚えている方もいると思うが、韓国は2011年9月15日に全国的な大規模停電(ブラックアウト)を経験している。今夏も電力需要が伸びることが予想されており、韓国では脱原発による電力供給能力の低下を心配する声も出始めている。

安保関連ニュースでは、在韓米軍の主力部隊である米陸軍第8軍が7月11日に京畿道・平澤市のキャンプ・ハンフリーズ(Camp Humphreys)に作られた新庁舎の開館式を行った。ソウル市龍山からキャンプ・ハンフリーズへの移転作業は終盤を迎え、第8軍司令部が来月までに、在韓米軍司令部が本年11月に、それぞれ移転を完了する予定だ(注:戦時作戦統制権の移管延期により、米韓連合司令部は引き続き龍山に残る)。韓国メディアは、返還は米軍駐留から「64年ぶり」、いや日本統治時代から「113年ぶり」などと報じていたが、今後の課題は米軍基地の跡地利用問題だろう。ソウル市内中心部の跡地を公園として造成するというが、作業には紆余曲折が予想される。

この問題、実は既に昨年4月の段階で国土交通部が各省庁に公募をかけ、一旦は、公園の敷地内に警察庁管轄の警察博物館、文化体育観光部のこどもアートセンター、女性家族部の女性史博物館等を作ると発表したのだが、同計画はソウル市や環境団体の反対で白紙化された経緯がある。ちなみに、この女性史博物館には慰安婦関連の展示が予定されていたという。

折しも、女性家族部長官に就任したばかりの鄭鉉栢(チョン・ヒョンベク)成均館大学元教授は、10日に、就任後初の視察先として元慰安婦らが共同生活する「ナヌムの家」を訪問した。そこで同長官は慰安婦博物館建設を推進し、韓国の民間団体が推進する慰安婦関連資料のユネスコ記憶遺産への登録に予算支援すると明らかにした。焦点の博物館建設に関しては、当初計画の女性史博物館を活用するか、別途に慰安婦博物館を作る計画だという。この発言に対し、菅官房長官や岸田外務大臣が抗議したことは報道の通りだ。鄭長官は、韓国の代表的市民団体「女性連合」と「参与連帯」代表を6年ずつ務め、特に、女性連合代表時代は韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)を支援してきたといわれる。今後は、彼女の言動がどこまで影響力を持つのか、日韓関係の火種となり得るのか、要注目となりつつある。

<7月第2週 朝鮮半島関連の主な動き>
8日
●米空軍B-1B(2機)が韓国空軍機とともに、江原道(カンウォンド)の空対地射撃場で「北朝鮮の核心施設を精密爆撃する」という想定で共同訓練を実施。グアムへの帰途において航空自衛隊のF-2との共同訓練も実施。

9日
●北朝鮮がICBMと主張する「火星14」の発射実験の成功を記念する公演が平壌で開催され、金正恩朝鮮労働党委員長も観覧。

11日
●日米韓の6か国協議代表がシンガポールで会合。
●韓国情報機関の国家情報院は、国会情報委員会において、「北朝鮮北東部の豊渓里で核実験が可能な状態だが、差し迫っているようには見えない」と報告。

12日
●日米韓の防衛当局がテレビ会議を実施。北のICBM発射を受けて対応を協議。
●統一部報道官は定例会見で、北朝鮮・金剛山観光再開には韓国人観光客の安全が保障され、北朝鮮核問題が進展する必要があるとの立場を示す。
●米国・通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表は声明で「米国は韓米FTAにともなう特別共同委員会の招集を韓国政府に正式要請した」と発表。

13日
●文在寅大統領は国防部長官候補に指名した宋永武(ソン・ヨンム)元海軍参謀総長の任命を強行。

14日
●北朝鮮外務省報道官は、「国連安全保障理事会が新たな対北朝鮮制裁決議を採択すれば、それに対抗する措置を取る」と言及。


(キヤノングローバル戦略研究所 研究員 伊藤 弘太郎)

2017年7月19日(水) | [ ]