今年もあと二週間となった。今バンコク発の全日空便で羽田に向かって飛んでいる。いつもなら月曜日の夜に何とか書き上げるのだが、今週は事情変更。過去一週間、外務省の依頼で中東4カ国を回り講演やインタビューを行った。最近海外講演は米国ばかりだったなと反省し、安易に引き受けたのが間違いだった。

結果的には、7日間で4カ国、経由地を含め7カ国の「地獄のロード」となったが、それをOKしたのは筆者自身だから、まさに自業自得だろう。昨日はアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで朝昼晩の三回、講演とプレゼンをこなした。楽しかったが、体力的限界を超えたらしく、執筆が遅れてしまった。

オマーンは筆者の大好きな、湾岸地域の良心を代表する国だ。この古くからの海洋国家は相変らず堅実で開放的。イランは目と鼻の先、ホルムズ海峡に近いアラブ首長国連邦とオマーンだが、オマーンがイランとも関係が良いのに対し、UAEはイランに対する警戒心に満ちていた。

オマーンからは深夜便でイスタンブール経由チュニジアに向かった。イスタンブールといえば、かのサウジ人ジャーナリストを思い出す。某国総領事館にだけは何となく敬遠だ。もっとも、トランプ政権とサウジの二人の「皇太子」は反イランで一致している。あの事件は「トカゲの尻尾切り」で終わりだろう。

しかし、出身国名は言えないのだが、今回会った湾岸アラブのある識者は、ロシアゲートでトランプ氏に何かが起これば、サウジ皇太子の地位も危うくなると本気で心配していた。なるほど、そういう見方もあるのだな、サウジ皇太子の威光も決して絶大ではない、ということかもしれない。

チュニジアではまだ民主化の試行錯誤が続いているようだ。ベンアリ時代の方が良かったという声すら聞いた。民主化しても、経済が良くなるわけでも、素晴らしい政府ができるわけでもない。民主主義とは何十年か過去を振り返った時、致命的なミスだけはなかったと言える政治体制でしかないのだから。

チュニスの次はエジプトだ。あの懐かしい首都カイロは筆者が2年間アラビア語を研修した場所。イラン革命直後からサダト大統領暗殺の直前まで住んだが、あれから40年、エジプトは元の軍政に戻ってしまった。今週の産経新聞コラムではエジプトでの日本式教育について書いたのでご一読賜りたい。

ここまで書いたところで、PCの電池が残り20%になった。この原稿を機内Wi-Fiで送信できるうちに送ってしまわないと。というわけで、今週はこのくらいにしておこう。

11月20日-12月21日 ラオス第8期第6回国民議会
9-18日 対日理解促進交流プログラム・オーストラリアの大学生らが訪日
10-18日 対日理解促進交流プログラム・インド、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、ネパール及びモルディブから「農業」をテーマに大学生らが訪日
11-17日 対日理解促進交流プログラム・「科学技術交流」をテーマにシンガポールの大学生らが訪日
11-18日 対日理解促進交流プログラム・「科学技術交流」をテーマにタイの高校生らが訪日
11-18日 対日理解促進交流プログラム・インドネシアのイスラム大学及び二大イスラム社会団体から訪日
13-19日 佐藤外務副大臣がジャマイカ及びキューバを訪問
13-20日 対日理解促進交流プログラム・日系米国人大学生らの一行が訪日
17日 EU11月CPI発表
17日 第3回日・キューバ官民合同会議の開催
17日 モルディブ・ソリ大統領がインドを訪問
17-18日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
17-18日 第10回日中高級事務レベル海洋協議の開催(中国浙江省嘉興市烏鎮)
17日か18日 ロシア1-11月鉱工業生産指数発表
17-19日 日・ベトナム刑事共助条約交渉 第1回会合の開催(東京)
17-20日 ザンビア・ルング大統領が訪日
18日 ロシア疑惑めぐる元米大統領補佐官の判決
18日 貿易経済に関する日露政府間委員会第14回会合の開催(東京)
18日 ファルコン9(GPS 3-01)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
18-19日 米国FOMC
19日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(エネルギー)(ブリュッセル)
19日 米・7-9月期の経常収支(商務省)
19日 GSLV(政府系通信衛星GSAT-7A)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
19日 マダガスカル大統領選挙決選投票
20日 トーゴ国会議員選挙
20日 EU環境相理事会(ブリュッセル)
20日 タイ銀行金融政策委員会
20日 メキシコ10月小売・卸売販売指数発表
20日 プーチン大統領によるプレスコンファレンス
21日 米国第3四半期GDP(確定値)発表
21日 第6回日フィリピン経済協力インフラ合同委員会の開催(比マニラ)
21日 プロトンM(Blagovest-13L)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
21日か24日 ロシア1-10月貿易統計発表
21-31日 長征11(珠海一号03)打ち上げ(甘粛省酒泉衛星発射センター)
22日 米・11月のPCE物価指数発表
23日 コンゴ民主共和国大統領選挙および国民議会議員選挙

【来週の予定】
24日 メキシコ11月雇用統計発表
24日か25日 ロシア11月雇用統計発表
25日 クリスマスで米市場が全て休場
25日- 長征3C(通信技術試験衛星三号)打ち上げ(四川省西昌衛星発射センター)
27日 ソユーズ2.1a(Kanopus-V N5/N6, Dove等)打ち上げ(ロシア・ボストチヌイ基地)
28日 ブラジル11月全国家計サンプル調査発表
28日 メキシコ11月貿易統計発表
29日 ロシア第3四半期需要項目別GDP統計発表(速報値)
30日 バングラデシュ国会議員選挙
31日 ギニア国会議員選挙
中旬 中央経済工作会議(中国・北京)
中旬 インド、ラジャスターン州議会選挙
中旬 インド、マディア・プラデシュ州議会選挙
中旬 インド、チャッティースガル州議会選挙
下旬 米国がユネスコ(国連教育科学文化機関)を脱退

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2018年12月19日(水) | [ ]

今週は書くことが沢山ある。まずは中国の大手通信機器メーカーのCFO逮捕の衝撃から始めよう。日本のマスコミは社名を「ファーウェイ」としているが、これには違和感がある。「ファーウェイ」と書くと多くの人は「Far Way」とでも思うかもしれないが、中国語の正確な発音は「フア2・ウェイ4」、漢字で書けば「華為」である。

「華為」とは、恐らく「中華有為」を短くしたものだろう。中華が意義ある仕事をする、とでもいう意味だろうか。前途有為の「有為」だが、いかにも人民解放軍エンジニアが考えそうな社名ではないか。今回逮捕されたのは創業者・任正非氏の最初の妻の娘・孟晩舟女史だが、今は母親の姓を使っている。色々葛藤があったのだろうか。

それはともかく、彼女逮捕のタイミングが絶妙で、直前の米中首脳会談との関係が取り沙汰された。90日間の休戦で折角合意したのに、なぜこの時期に?と訝る向きもあったようだ。真相は不明だが、トランプ氏は逮捕を事前には知らなかったとしており、偶然説も根強い。だが常識的には、この逮捕に政治的メッセージがない筈はない。

華為は、ZTEと並び、昔から知る人ぞ知る要注意企業だった。筆者が両社の製品の問題点を最初に取り上げたのは2012年6月。当時連載していた「中国株式会社の研究」というコラムに以下のように書いている。ちょっと長くなるが、重要なので該当部分を引用しよう。今から読み返してみても、華為はちっとも変っていないようだ。
(以下引用)

●華為技術(Huawei)、中興通訊(ZTE)という名を聞いてピンと来る読者はインターネット・情報通信にかなり詳しい方々だろう。今これら中国通信機器メーカーに「中国当局の隠れ蓑」、「不正情報収集」疑惑が浮上している。今回はこの疑惑の真偽を取り上げたい。

●下院委員会の公式質問状
手元に二通の公式書簡がある。去る6月12日、米下院インテリジェンス特別委員会が件の「華為技術」と「ZTE」の経営者に対し3週間以内の情報開示を求めたものだ。・・・同書簡カバーレターには、今回の目的が「中国政府と潜在的に関係を持ち得る中国企業が米国の死活的インフラと防諜体制に与える脅威について調査すること」だとはっきり記されている。どうやら委員会の目的は貿易・経済ではなく、あくまで安全保障のようだ。

●相当悪質な華為とZTE
冒頭では華為とZTEに「疑惑が浮上」と書いたが、こうした疑惑は実は今回が初めてではない。それどころか、過去数年間だけでも、世界中でこの二社が製造した通信設備・機器などにつき、安全保障上の重大な懸念が指摘されている。
例えば、インド政府は2010年3月から、華為技術やZTEなどの通信設備・機器輸入を事実上禁止したという。これらの製品には盗聴用の特殊なチップが組み込まれており、遠隔操作で機密性の高いネットワークへの侵入も可能になるというのが理由だ。
また、同年10月のワシントン・ポストは、米国家安全保障局(NSA)が2009年末、AT&Tに対し華為技術の通信機器は中国情報機関のスパイ活動に利用される恐れがあるので取引を見合わせるよう警告していたと報じている。

●翌2011年11月には、件の米下院インテリジェンス特別委員会が、華為技術やZTEを含む中国企業が米国の安全保障と通信インフラを脅威に曝しているとして予備調査を開始している。今回の質問状はこの調査の延長上にあるものだ。
更に、本年3月にはオーストラリアでも同様の問題が起きている。豪連邦政府は同国ブロードバンド網(NBN)整備計画において華為技術の応札を禁じ、パース・シンガポール間の海底ケーブル敷設事業でも情報の安全性につき調査を始めると報じられた。

●つい最近も米国ZTE製のスマートフォンに通常ではあり得ない異常な「バックドア(情報流出のための重大な脆弱性)」が見つかったという。特定のパスワード入力で端末のコントロールが可能になるそうだが、専門家は単なるミスや偶然では起こり得ないと主張する。
このほかにも、最近では欧州連合(EU)が華為技術とZTEに対し反ダンピング調査を開始すると報じられた。華為技術の創業者・任正非氏は人民解放軍出身、ZTEは中国国有企業との関連が深い。中国政府の圧力・関与を懸念する声はどうしても消えないのだ。・・・・・(以下略)

もう十分だろう。この華為技術なる中国企業は実は10年も前から、米EU豪印などでその危険性が指摘されていた問題企業だ。その会社の製品を漸く日本政府は調達禁止と決めたが、実は多くの日本の民間企業が今もこれらを使用している。このことはあまり大きく報じられていなかったが、こんなことで良いのか、疑問は尽きない。

〇東アジア・大洋州
先の米中首脳会談では何も決まらなかった。更に、華為技術のCEOが逮捕されたのだから、米中貿易交渉が順調に進むとは到底思えない。ホワイトハウス内でも、財務長官、大統領の娘婿など中国との取引を優先しようとするグループと、それに反対する勢力との綱引きが続いている。華為CEOの逮捕もその一環と見るべきだろう。

〇欧州・ロシア
フランスで政府に抗議するデモが続いているが、報道画像をよく見ると、これは単なる「デモ」を通り越して、一種の暴動に近いのではないか。「黄色いベストを着る」ということは、暴徒の中心が学生や知識人などではなく、フランスの雑多な単純労働者達の組織されない衝動的集団行動であることを暗示しているのかもしれない。
直接のきっかけは燃料税引き上げだったが、その本質は非エリート労働者層のエリート指導層に対する素朴な反感ではないのか。さればこの運動に強力な指導者がいる可能性は低く、参加者は現在のマクロン式エリート政治に不満を持つ、右翼、左翼、外国人労働者など雑多な人々なのだろう。マクロンの化けの皮が剥がれつつある。

〇中東・アフリカ
7日にOPEC石油輸出国機構とロシアなどの産油国が2019年上期に日量120万バレルの減産を実施することで合意したという。削減量120万BDのうちOPECが80万BD、ロシアが23万BDを削減するというが、本当にうまく行くのかね。こういう時は合意はできるけど、皆抜け駆けを考えるのではないのかね。要注意である。

〇南北アメリカ
米国ではロシアゲート問題の特別検察官が法廷に新たな文書を提出し、トランプ氏の周辺や身内への包囲網が更に狭まりつつあるという報道が流れている。だが、本当のところは良く分からない。トランプ氏に明確な有罪に値する違法行為があったことを示す証拠はないからだ。
そうした中で、ホワイトハウスの大統領首席補佐官が年内に辞任することが明らかとなり、現在後任候補が取り沙汰されている。しかし、今更こんな仕事を喜んで引き受ける人がいるのだろうか。能力のある賢い人なら引き受ける筈はないから、今後、就任する人がトランプ氏の下でホワイトハウスを仕切るのは至難の業だろうと思う。

〇インド亜大陸
特記事項はない。今週はこのくらいにしておこう。

11月20日-12月21日 ラオス第8期第6回国民議会
3-14日 国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)(ポーランド・カトヴィツェ)
9-11日 鈴木外務大臣政務官がモロッコを訪問
9-18日 対日理解促進交流プログラム・オーストラリアの大学生らが訪日
10日 EU外相理事会(ブリュッセル)
10日 日・ジャマイカ租税 第1回目条約交渉(東京)
10-12日 ブラジル中央銀行、Copom
10-13日 欧州議会本会議(ストラスブール)
10-13日 ガーナ・アクフォ=アド大統領が訪日
10-18日 対日理解促進交流プログラム・インド、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、ネパール及びモルディブから「農業」をテーマに大学生らが訪日
11日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
11日 英国労働市場統計(8~10月)発表
11日 英議会がEU離脱合意案採決
12日 メキシコ10月鉱工業生産指数発表
12日 米国11月消費者物価指数(CPI)発表
12日 インド10月鉱工業生産指数発表
12-13日 WTO一般理事会(スイス・ジュネーブ)
13日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
13日 ブラジル10月月間小売り調査発表
13日 「中東・アフリカ知的財産担当官会議」開催 第27回目(在ドバイ総領事館)
13-14日 欧州理事会(ブリュッセル)
13-14日 日韓・韓日議員連盟の合同総会(ソウル)
14日 中国11月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 米国11月小売売上高統計発表
14日 黒海経済協力機構外相会議(アゼルバイジャン・バクー)
14日 ロシア中央銀行理事会
16日 トーゴ国民投票

【来週の予定】
17日 EU11月CPI発表
17-18日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
17日か18日 ロシア1-11月鉱工業生産指数発表
18日 貿易経済に関する日露政府間委員会第14回会合の開催(東京)
18日 ファルコン9(GPS 3-01)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
18-19日 米国FOMC
19日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(エネルギー)(ブリュッセル)
19日 GSLV(政府系通信衛星GSAT-7A)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
19日 マダガスカル大統領選挙決選投票
20日 トーゴ国会議員選挙
20日 EU環境相理事会(ブリュッセル)
20日 タイ銀行金融政策委員会
20日 メキシコ10月小売・卸売販売指数発表
20日 プーチン大統領によるプレスコンファレンス
21日 米国第3四半期GDP(確定値)発表
21日 第6回日フィリピン経済協力インフラ合同委員会の開催(比マニラ)
21日 プロトンM(Blagovest-13L)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
21日か24日 ロシア1-10月貿易統計発表
22日 米・11月のPCE物価指数発表
23日 コンゴ民主共和国大統領選挙および国民議会議員選挙

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2018年12月11日(火) | [ ]

現地時間の11月30日、第41代ジョージHWブッシュ大統領が94歳で亡くなった。8月末にはマケイン上院議員が逝去したが、米メディアは前回以上に、このブッシュ41の功績と人柄を偲ぶ追悼記事や特別番組を「これでもか、これでもか」と報じていた。あたかもトランプ氏の登場で失われた古き良きアメリカ政治を懐かしむかのように。

ちなみに、息子のジョージWブッシュも後に43代大統領となったが、日本ではこの親子を「ブッシュ・シニア、ブッシュ・ジュニア」とか「パパ・ブッシュと息子ブッシュ」などと呼んでいる。だが、米国ではミドルネームが異なる息子をジュニアとは呼ばない。ブッシュ41、ブッシュ43と呼ぶ方が一般的だ。まあ、どうでも良いことなのだが・・・。

ブッシュ41については今週のJapan Timesと産経新聞に追悼のコラムを書いたので乞う一読。筆者が在米日本大使館政治部に赴任したのは1991年10月、時の大統領がブッシュ41だった。当時からホワイトハウス記者会見の雰囲気は厳しかったが、決して敵対的ではなかった。今のような喧嘩腰のやりとりはちょっと記憶にない。

ブッシュ41は真の意味で米国の本質的に善良なエリート層出身のステーツマンシップを体現した最後の大統領だったと思う。その後の大統領は、クリントン(育ちが違う)、ブッシュ43(父親と同じにはなり切れなかった)、オバマ(出身や背景がまるで違う)、トランプ(全てが異様なほど違う)、誰であれブッシュ41には遠く及ばないからだ。

ブッシュ41は湾岸戦争の目的をクウェート解放に限定したが、ブッシュ43は父親が拒否した「バグダッド侵攻とイラクの政権交代」という禁断の提案を易々と受け入れてしまった。イラク戦争の首謀者はチェイニー副大統領とラムスフェルド国防長官だが、前者はブッシュ41政権の国防長官だった。チェイニーは確信犯だったのだ。

なぜブッシュ43はかくも弱かったのか。結局は戦争従軍体験の有無ではなかったかと思う。ブッシュ41は本当の戦争の悲惨さを知っている。彼自身も小笠原諸島で死にかけたし、間近で多くの戦友の死を見てきた。だからこそ、クウェート解放後に準備もなくイラクに侵攻すれば、夥しい数の米兵が死ぬことを恐れていたのではないか。

これに対し、ブッシュ43は「戦争は短期、米軍は解放軍として歓迎される」というラムスフェルドらの説明を信じてしまった。確かに戦争は短期で、米兵は死ななかった。当時筆者はバグダッドにいたが、多くの米兵はイラク戦争ではなく、その後のイラク占領時に武装勢力のテロ攻撃で亡くなっている。やはりブッシュ43は弱かったのだ。

〇東アジア・大洋州
先週末はブエノスアイレスで米中首脳会談が行われた。ホワイトハウスの発表によれば、「額は未定なるも、今後90日間に中国が米国から多額の農産物、エネルギー、工業産品を購入する一方、強制的技術移転、知財窃取、非関税障壁、サイバー攻撃、サービス、農産品につき中国が構造変革を行うことで合意した」そうだ。
米国は予定されていた25%への関税引き上げを凍結するが、上記合意が実行されない場合には引き上げを実施するという。トランプ氏は大はしゃぎだが、内容的には中国が米国の要求を満たすとは到底思えない。この発表文をよく読めば、報じられるような「一時休戦」ですらないことが分かる。米中の確執は今後も長く続くだろう。

〇欧州・ロシア
ブエノスアイレスでのG20 会合では日露首脳会談も行われた。プーチン大統領は日本側と「1956年宣言に戻ることで一致」し、ラブロフ外相に対日協議を監督させ、外務次官を大統領特別代表に任じたという。北方領土を日ソ・日露二国間交渉の観点から論ずるか、米中露間の戦略的覇権争いの視点で論じるのか。この点に関する日本国内の議論はまだ本格化していない。
筆者が個人的に注目するのは12月7日に予定される保守与党キリスト教民主同盟(CDU)党首選でメルケル首相の後任党首に誰が選ばれるかだが、今のところ、同党幹事長が優勢なようだ。メルケル氏は首相続投を表明しているので、当面は二頭立ての馬車ということになるが、これでドイツ内政は安定するのかが気になる。

〇中東・アフリカ
アルゼンチンでのG20会合にサウジの皇太子が何事もなかったかのように参加した。プーチン大統領とはハイタッチ(英語ではhigh fiveという)で挨拶を交わす等ご機嫌だったが、33歳の若い指導者には相当の精神的重圧ではなかったかと勝手に心配している。皇太子の政治家としての力量を占うには情報がまだ足りないが・・・。

〇南北アメリカ
米国ではブッシュ41逝去のニュースばかり。

〇インド亜大陸
特記事項はない。今週はこのくらいにしておこう。

11月20日-12月21日 ラオス第8期第6回国民議会
26-12月9日 米・ロサンゼルス自動車ショー(一般公開は30日から)
27-12月5日 中国・習主席がスペイン、アルゼンチン、パナマ、ポルトガルを訪問
1-7日 セーシェル・メリトン副大統領兼外務大臣が訪日
2-4日 イスラエルエネルギー会議(イスラエル・エイラート)
3日 ユーロ・グループ(ブリュッセル)
3日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
3日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(運輸)(ブリュッセル)
3日 シンガポール・バラクリシュナン外務大臣が訪日
3日 「日ソ地先沖合漁業協定」に基づく日ロ漁業委員会第35回会議が開催
3日 ファルコン9(Spaceflight SSO-A)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
3日 ソユーズFG(国際宇宙ステーション第57次及び第58次長期滞在ミッション用)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
3-5日 国連アフリカ経済委員会、アフリカ経済会議2018(ルワンダ・キガリ)
3-6日 鈴木外務大臣政務官がパラオを訪問
3-6日 薗浦内閣総理大臣補佐官がモルディブ及びパキスタンを訪問
3-6日 国連パレスチナ難民救済事業機関・クレへンビュール事務局長が訪日
3-7日 FAO理事会 第160回会合(ローマ)
3-14日 国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)(ポーランド・カトヴィツェ)
4日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
4日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(通信)(ブリュッセル)
4日 ブラジル10月鉱工業生産指数発表
4日 オーストラリア準備銀行理事会
5日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
5日 ベージュブック発表(FRB)
5日 カナダ中央銀行、政策金利発表
5日 ファルコン9(スペースX社商用補給機ドラゴン16号機)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
5日 アリアン5(Gsat-11・KOMPSAT-2A)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
5-6日 欧州地域委員会(CoR)132回本会議(ブリュッセル)
6日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
6日 ECB一般理事会(フランクフルト)
6日 UNDP/UNFPA/UNOPS 執行理事会(ニューヨーク)
6日 米国10月貿易統計発表
6日 OPEC総会(ウィーン)
6-7日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
6-7日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ブリュッセル)
7日 米国11月雇用統計発表
7日 メキシコ11月CPI発表
7日 ブラジル11月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
7日 EU第3四半期実質GDP成長率発表
7日 ドイツ与党・キリスト教民主同盟(CDU)党首選
8日 中国11月貿易統計発表
8日 長征3B(嫦娥四号)打ち上げ(四川省西昌衛星発射センター)
8-9日 国際フォーラム「Africa 2018」(エジプト・シャルムエルシェイク)
9日 中国11月CPI発表
9日 アルメニア国会議員選挙
9日 ペルー司法改革等を問う国民投票

【来週の予定】
10日 EU外相理事会(ブリュッセル)
10-12日 ブラジル中央銀行、Copom
10-13日 欧州議会本会議(ストラスブール)
11日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
11日 英国労働市場統計(8~10月)発表
12日 メキシコ10月鉱工業生産指数発表
12日 米国11月消費者物価指数(CPI)発表
12日 インド10月鉱工業生産指数発表
12-13日 WTO一般理事会(スイス・ジュネーブ)
13日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)(フランクフルト)
13日 ブラジル10月月間小売り調査発表
13-14日 欧州理事会(ブリュッセル)
14日 中国11月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
14日 米国11月小売売上高統計発表
14日 黒海経済協力機構外相会議(アゼルバイジャン・バクー)
14日 ロシア中央銀行理事会
16日 トーゴ国民投票

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2018年12月 4日(火) | [ ]

カルロス・ゴーン氏が金融商品取引法違反容疑で逮捕されたのは先週月曜日だったが、今週も本邦主要メディアのルノー、日産、三菱、ゴーンに関する報道は止まらない。余波は当分続きそうだが、正直なところ、このフランス国籍を持つレバノン系ブラジル人の経営者の逮捕がこれほど世間の注目を集めるとは思わなかった。

驚きはこれだけではない。一部内外の欧米系識者がゴーン氏逮捕を「日産内の『日本株式会社』的排外主義勢力が今も『外人』を差別している何よりの証拠」だなどと、したり顔で分析しているのにはあきれ果てた。当該識者の名誉のため名は挙げないが、こうした人々の日本に関する記憶は1980年代で止まっているのではないか。

更に最も驚いたのは、多くの日本語報道が今回のスキャンダルを「ルノーとゴーンが悪者で、日産は被害者」という構図で報じていたことだ。それは警察のリークだろう。本件は所詮ビジネス、つまり金儲けと強欲の結果であって、そんな善悪の単純な話ではないことぐらい、ビジネスを知っている人なら当然分かっているはずなのに。

筆者が今週Japan Timesに書いたコラムでは、欧米的でも、日本的でもない、筆者独自の分析を行った。キーワードは「マックス・ウェーバー」だ。ウェーバーと言えば20世紀初頭のドイツの社会学者、「プロテスタントの倫理と資本主義の精神」という著作でキリスト教と近代資本主義の関係を考察した学者だ。若い人は知らないかな。

簡単にいえば、清教徒などキリスト教「プロテスタント」が考える勤勉で禁欲的労働倫理が北部欧州における近代資本主義を発展させる理論的支柱だったということだ。筆者が初めてこの本を読んだのは大学2年生だったが、当時から欧州以外でこうした資本主義の精神を具現できる人々は米国人と日本人ぐらいだろうと思っていた。

勿論、日本にプロテスタントの伝統はない。しかし、不思議なことに江戸時代以降の日本には、このウェーバーが定義するような勤勉さや禁欲性などの労働倫理が育まれてきた。こうした伝統がなければ、日本が明治維新以降ごく短期間で国力を発展させることは難しかったのではないか。不思議な偶然の一致というべきだろう。

こうした労働倫理だからこそ、日本人は組織の経営トップが桁違いに巨額の報酬を得ることを潔しとしてこなかったのだろう。但し、ゴーン氏が日産に来てからは日本の経営も変化しつつある。一部欧米評論家は日本の経営者報酬が低すぎると批判するが、今のゴーン氏への批判は高額報酬よりも、巨額の所得隠しの方なのだから。

ゴーン事件の本質は単なる「外人経営者」に対する差別でも、日仏自動車業界の確執でもない。20年前、日産が苦境にあった時、これを助けたのはルノーだったが、今や日産は業績を回復しルノーに多額の配当を支払っている。ゴーン氏は日仏の狭間で苦しんだに違いないが、最後は彼の「徳のなさ」が命取りになったのではないか。

詳しくはJapan Timesをご一読いただきたい。

〇東アジア・大洋州
今週アジアのハイライトは台湾の民進党が地方選で大敗したことだろう。台湾総統は与党民進党の党首を辞任、2020年の次期総統選での再選はなくなった。彼女の敗北を如何に見るべきか。中国と親和性の高い国民党が躍進したからといって、台湾有権者の対中姿勢が変わったとは思えない。要するに、蔡英文総統が弱い政治家だったということだろう。

〇欧州・ロシア
ロシア海軍が牙を剥いた。クリミアを巡り、ウクライナ海軍と衝突し、発砲する事態に発展したという。場所はケルチ海峡という戦略的要衝、ようやるよ、としか言いようがない。ロシアという国にあまり魅力はないが、ここぞという時に必ず、しかも平然と「武力を行使する」という、あの厚かましさには文字通り脱帽する。
こんな国が北方領土を簡単に返すとは到底思えない。日本には気の早い人が少なくなく、落とし所は2島か、それとも2島+かなどと言い出す輩がいるので要注意だ。日本側が勝手に思っていても、ロシアがこれらを全く返さない選択肢だって十分ある。このことを決して忘れてはならない。

〇中東・アフリカ
ジャーナリスト殺害事件で米国は今もサウジ皇太子に配慮しているようだが、先週はスパイ容疑で終身刑を宣告された英国の若い学者につき、英政府がアラブ首長国連邦に強烈な圧力をかけ、結局その学者は恩赦で釈放されたらしい。英国ですらここまでやるのだから、トランプ政権だってサウジに圧力を掛けても良さそうなのだが。
 パキスタンではバルチスタン独立運動の過激派がカラチの中国総領事館を攻撃したそうだ。これまでも地方では散発的に中国人を狙った攻撃があったが、今回はそれが大都市でも起きたという点が目新しい。中国とパキスタンが同盟国同士にもかかわらず、中国の「一帯一路」政策の弱点が露呈した。この点で大いに注目すべきだ。

〇南北アメリカ
米国とメキシコの国境で例の中南米の難民・亡命希望者キャラバンが遂に米側国境に向け突入し始めた。米側は軍が催涙弾を使ってこれを防いだそうだ。難民たちの気持ちも分からないではない。しかし、こうして騒ぎが大きく、より過激になればなるほど、トランプ氏への支持は高まるだろう。これでは逆効果だと思うのだが・・・。

〇インド亜大陸
特記事項はない。今週はこのくらいにしておこう。

20-28日 対日理解促進交流プログラム・アジア15カ国・地域から高校生らが訪日
21-30日 対日理解促進交流プログラム・北海道の大学生らが韓国を訪問
25-27日 国連開発計画(UNDP)シュタイナー総裁が訪日
25-28日 ヨルダン・アブドッラー2世国王陛下が訪日
25-29日 佐藤外務副大臣がケニアとスイスを訪問
25-12月1日 日中植林植樹国際連帯事業・日中大学生五百人交流団が訪日
26日 EU外相理事会(開発)(ブリュッセル)
26日 メキシコ9月小売・卸売販売指数発表
26日 「中央アジア+日本」対話・第13回高級実務者会合(SOM)開催(東京)
26日 日・フィンランド社会保障協定 第2回政府間交渉開催
26-27日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
26-27日 EU教育・若年・文化・スポーツ相理事会(ブリュッセル)
26-28日 持続可能な海洋経済の世界会合(ケニア・ナイロビ)
26-29日 G20財務相代理会合、財務相ワーキング・ディナー(アルゼンチン・ブエノスアイレス)
26-30日 国連世界食糧計画(WFP)執行理事会 第二回定期会合(ローマ)
26-12月9日 米・ロサンゼルス自動車ショー(一般公開は30日から)
27日 メキシコ10月貿易統計、雇用統計発表
27-12月3日 対日理解促進交流プログラム・インドネシア若手メディア関係者が訪日
27-12月4日 対日理解促進交流プログラム・ブルネイ、インドネシア、マレーシアなどイスラム寄宿塾で学ぶ高校生及び社会人らが訪日
27-12月5日 中国・習主席がスペイン、アルゼンチン、パナマ、ポルトガルを訪問
28日 米国第3四半期GDP(改定値)発表
28日 ジョージア大統領選
28-29日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
28-29日 ロシア・トルコ・イランがシリア情勢めぐり協議(アスタナ)
28-29日 インド・モディ首相がネパールを訪問
29日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
29日 米・10月PCE発表(商務省)
29日 ブラジル10月全国家計サンプル調査発表
29日 ソウル中央地裁が新日鉄住金の元徴用工訴訟で二審判決
29日 韓国最高裁が三菱重工業が元徴用工訴訟で上告審判決
29日 安倍首相がG20に参加するためにアルゼンチンへ出発
29日 PSLV C43(地球観測衛星、超小型衛星30機)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
29-30日 国連訓練調査研究所(UNITAR)理事会(ジュネーブ)
29-30日 EU競争担当相理事会(ブリュッセル)
30日 ブラジル第3四半期GDP発表
30日 インド第2四半期GDP発表
30日 EU10月失業率発表
30日 FOMC議事要旨(FRB)
30日-12月1日 G20首脳会議(アルゼンチン・ブエノスアイレス)
12月1日 黒海経済協力機構外相会議(アゼルバイジャン・バクー)
1日 メキシコ新大統領就任
1日 バーレーン国民議会選(第二回目)
2-14日 国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)が開幕(ポーランド・カトヴィツェ)

【来週の予定】
3日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
3日 ユーログループ(ブリュッセル)
3-14日 国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)(ポーランド・カトヴィツェ)
4日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
4日 ブラジル10月鉱工業生産指数発表
5日 ベージュブック発表(FRB)
5-6日 欧州地域委員会(CoR)132回本会議(ブリュッセル)
6日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
6日 米国10月貿易統計発表
6日か7日 ロシア11月CPI発表
6-7日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
6-7日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会(ブリュッセル)
7日 EU第3四半期実質GDP成長率発表
7日 米国11月雇用統計発表
7日 メキシコ11月CPI発表
7日 ブラジル11月IPCA発表
7日 ドイツ与党・キリスト教民主同盟(CDU)党首選
8日 中国11月貿易統計発表
9日 中国11月CPI発表
9日 ペルー司法改革等を問う国民投票

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2018年11月27日(火) | [ ]

先週末パプアニューギニア(PNG)で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では史上初めて首脳宣言が採択されなかった。その会議に米国を代表し出席したのがペンス副大統領だ。トランプ氏が出ないで良いのかと聞いてきたジャーナリストがいた。トランプは出ない方が良かったと筆者が答えたら、先方は驚いていた。

当然だろう。トランプ氏は元来多国間会議が大嫌いだ。その彼が嫌々出席して、あまりの不愉快さ故に衝動的妄言を繰り返したら、東アジア諸国、特に中国に間違ったメッセージを送ることになる。今回のAPECは米中「貿易戦争勃発」後最初の会合だから極めて重要。ペンス副大統領が出席した方が間違いはないということだ。

その理由は簡単、ペンス氏は事務方の準備したtalking pointsを真面目に繰り返すだろうからだ。今米政府の事務方が積み上げた公式の外交政策を、判り易く、しかも正確に代弁できるのはペンス氏しかいない。トランプ氏が即興で喋り始めたら何を話すか判ったものではない。という訳で、今週はペンス副大統領に焦点を当てたい。

ペンス副大統領は1959年インディアナ州生まれ、アイルランド系カトリック教徒だが、共和党内ではエヴァンジェリカル系の保守派に属する。弁護士で、連邦下院議員を6期、インディアナ州知事を1期務めた。州知事時代は現地日米協会の会合にもよく顔を出す等日系企業の誘致や雇用促進に取り組んでおり、日本とは縁が深い。

個人的な面識はないが、人柄は真面目で安定しているようだ。2016年、トランプ氏が共和党の大統領候補指名を受けた際、イヴァンカ夫妻が副大統領候補として最も強く推したのがペンス氏だったという。トランプ氏のような破天荒な人物には、ペンス氏のような、面白みはないが、確実で信頼度の高い人物が必要だったのだろう。

当時の共和党にとって、数少ないワシントンを代表できるプロの政治家であるペンス氏は、文字通り多くの人にとって安心材料だった。実に運の強い人である。トランプ氏の側近が猫の目のように抜擢・更迭されていく中、ペンス副大統領のスタッフに内紛の噂は聞かれない。筆者は彼のこのような信頼感を強く買っている。

〇東アジア・大洋州
前述の通り、APEC首脳会議の首脳宣言は流れた。報道によれば米中間の貿易をめぐる対立が原因だと言うが、筆者は議長国のパプアニューギニアの力不足も間接的な理由ではないかと思っている。中国側は宣言採択の責任者である同国政府関係者に猛烈な圧力をかけたらしいが、それを無視できなかったPNGは実に哀れだ。
報道によれば、宣言が流れた理由はこうだ。宣言の原案にあった「保護主義と対抗する」といった表現に米国が強く反発。中国はトランプ米政権を念頭に「一国主義と対抗する」との文言を盛るよう求めたのに対し、米国はこの表現の削除を強く要求、更に中国を念頭に不公正貿易慣行撤廃を求める表現を盛り込むよう主張したらしい。
前回も書いたが、上海で開かれた「中国国際輸入博覧会」で習近平国家主席は「中国は多国間貿易体制を支持し自由貿易を推進する」などと演説した。中国が「保護主義に反対」するなんて、殆どブラックジョークだと思ったが、やはりその結果が今回出たということだ。仮に米中が一時的に妥協しても、覇権争いは今後も長く続くだろう。

〇欧州・ロシア
このところ日露首脳会談で北方領土問題について2島返還を軸に交渉が進展する可能性に関する報道が乱れ飛んでいる。だが、筆者は事実関係が明らかでない現時点でコメントをすることは差し控えている。いずれにせよ、問題は4島か2島か、それとも2島+かよりも、日本にとって戦略的に如何なる利益があるかとなるだろう。

〇中東・アフリカ
サウジジャーナリスト殺害事件は米CIAがサウジ皇太子命令説を流し始めた。これに対し同皇太子は勿論、トランプ氏もダンマリを決め込み、具体的なコメントを避けている。典型的なトカゲの尻尾切りで、このまま逃げ切るつもりだろう。今の米国トランプ政権にはサウジ皇太子を「切る」選択肢はあり得ない。これが悲しい現実である。

〇南北アメリカ
中間選挙の翌日、トランプ氏は司法長官を更迭し、新たに指名された長官代行がロシアゲート問題を捜査するモラー特別検察官に対する指揮権を握った。あれから2週間余り、同長官代行は沈黙を守っている。嵐の前の静けさか、大虐殺の前夜なのか。ワシントンは息を飲んで成り行きを見守っている。
トランプ氏としては特別検察官を解任するよりも、捜査を事実上縮小させ、できれば終息させたいのだろうが、そんなにうまく行くだろうか。民主党が過半数を回復した下院は手薬煉引いてトランプ氏の次の一手を待っている。やはり、これから年末にかけてトランプ陣営と民主党の間で命懸けの死闘が続く可能性が最も高いのではないか。

〇インド亜大陸
特記事項はない。今週はこのくらいにしておこう。

13-19日 韓国・文大統領がシンガポールとパプアニューギニアを訪問
14-27日 India International Trade Fair
15-22日 日蘭平和交流事業の開催
18-21日 ネパール・ギャワリ外務大臣が訪日
18-22日 ブルキナファソ・カボレ大統領が訪日
18-27日 対日理解促進交流プログラム・ニュージーランド,キリバス,クック諸島,トンガなどの大学生らが来日
19日 長征3B(航法測位衛星第三世代北斗2機)打ち上げ(四川省西昌衛星発射センター)
19-20日 EU外相理事会・防衛(ブリュッセル)
19-20日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
19-20日 日・クロアチア航空協定第1回政府間交渉の開催
19-21日 日中受刑者移送条約締結交渉 第5回会合の開催
19-22日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
19-23日 国際海事機関(IMO)理事会 第121回会合(ロンドン)
20日 長征2D(SaudiSAT 5A/5B等)打ち上げ(甘粛省酒泉衛星発射センター)
20日 ファルコン9(Spaceflight SSO-A)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
20-21日 アジア物流・海運会議(香港)
20-23日 国連平和維持活動(PKO)・ラクロワ事務次長が訪日
21日 OECD経済見通し発表(フランス・パリ)
22日 米感謝祭(為替、債券、株式、商品市場が休場)
22日か23日 ロシア1-9月貿易統計発表
22-23日 国際原子力機関(IAEA)理事会(ウィーン)
22-23日 スペイン・サンチェス首相がキューバを訪問
23日 メキシコ第3四半期GDP発表
23日 博覧会国際事務局(BIE)総会(最終プレゼンテーションと投票)(パリ)
23日か26日 ロシア10月雇用統計発表
23-24日 アンゴラ・ロウレンソ大統領がポルトガルを訪問
24日 台湾統一地方選
24日 バーレーン国民議会選
25日 スイス国民選挙

【来週の予定】
26日 EU外相理事会(開発)(ブリュッセル)
26日 メキシコ9月小売・卸売販売指数発表
26-27日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
26-27日 EU教育・若年・文化・スポーツ相理事会(ブリュッセル)
26-28日 持続可能な海洋経済の世界会合(ケニア・ナイロビ)
26-29日 G20財務相代理会合、財務相ワーキング・ディナー(アルゼンチン・ブエノスアイレス)
26-30日 国連世界食糧計画(WFP)執行理事会 第二回定期会合(ローマ)
27日 メキシコ10月貿易統計、雇用統計発表
28日 米国第3四半期GDP(改定値)発表
28日 ジョージア大統領選
28-29日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
28-29日 インド・モディ首相がネパールを訪問
29日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
29日 米・10月PCE発表(商務省)
29日 ブラジル10月全国家計サンプル調査発表
29-30日 国連訓練調査研究所(UNITAR)理事会(ジュネーブ)
29-30日 EU競争担当相理事会(ブリュッセル)
30日 ブラジル第3四半期GDP発表
30日 インド第2四半期GDP発表
30日 EU10月失業率発表
30日 FOMC議事要旨(FRB)
30日-12月1日 G20首脳会議(アルゼンチン・ブエノスアイレス)
12月1日 黒海経済協力機構外相会議(アゼルバイジャン・バクー)
1日 メキシコ新大統領就任
1日 バーレーン国民議会選(第二回目)

(宮家邦彦 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

2018年11月20日(火) | [ ]

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